スイング練習器具とパター練習器具のイラスト

手打ちが直らない人へ、プロ愛用の練習器具 〜女子プロの秘密道具(第2回・スイング&パター編)〜

「手打ちを直しましょう」——レッスンでも雑誌でも、耳にタコができるほど聞く言葉。でも、どう直せばいいのかは、誰も教えてくれない。 そんなもどかしさを、女子プロたちは「道具」で解決しています。ツアーの練習場をのぞくと、腕に挟む三角形の器具、手首に着ける籠手のような器具、レーザーが出るパター……。今回は、そんなスイング&パターの練習器具を、体の仕組みの面から見ていきます。 この記事のポイント ✅ 「手打ち」の正体は、体の回転と腕の振りがバラバラになり、小さな筋肉に頼ってしまう動きです ✅ プロの練習器具は、正しい動きを「言葉」ではなく 「感覚」で教えてくれる先生 ✅ 器具がなくても、タオル1本で似た感覚を体験できます そもそも「手打ち」って、体の中で何が起きているの? あなた 「手打ちですね」ってよく言われるんですが、正直、何がどう悪いのかピンと来ていません……。 Torapon 体の仕組みで言うと、体幹(胴体)の回転と、腕の振りが別々に動いている状態なんです。本来は胴体という大きなエンジンで腕とクラブを運ぶところを、腕と手首だけで振ってしまっている、ということですね。 胴体を回す筋肉は、お腹や背中の大きくて力持ちな筋肉。一方、腕や手首を動かすのは、前腕などの小さくて器用な筋肉です。手打ちとは、大きなエンジンを使わずに、小さなモーターだけでクラブを振っている状態。パワーが出ないだけでなく、毎回の動きがそろいにくく、ミスの幅も大きくなります。 では、女子プロたちはどんな道具で「体で振る感覚」を身につけているのでしょうか。 三角先生:腕と体の「一体感」を教える器具 まずはスイングの土台から。「三角先生」というユニークな名前の器具は、その名の通り三角形をしていて、両腕の間にセットして使います。 アドレスで構えたとき、両肩と両手を結ぶと三角形ができますよね。この器具は、スイング中もその三角形が崩れないように意識させてくれるもの。三角形が保たれている間は、腕・体・クラブがひとかたまりで動いている、つまり胴体のエンジンで振れている証拠です。逆に腕だけで上げたり、手首をこねたりすると、すぐに三角形が崩れて教えてくれます。 PR Tabata(タバタ)三角先生 Fit(スイング練習器具) 両腕の間にセットして、腕と体の三角形をキープしたまま振る練習器具。腕・体・クラブの一体感を「感覚」で覚えられるので、手打ちのクセに悩む方の定番アイテムです。 Amazonで見る 楽天で見る PRO SENDR:手首の「形」を教える籠手 次は、女子プロの練習風景でよく見かける「PRO SENDR(プロセンダー)」。右手首に装着する、籠手(こて)のような器具です。 バックスイングからダウンスイングにかけて、右手の甲が器具に触れた状態を保つように振ると、理想的な手首の形が自然にキープされる仕組み。クラブが早くほどける「アーリーリリース」を抑えて、手元が先行する「ハンドファースト」の形を意識できます。クラブがボールに入る角度(入射角)が安定し、ボールが捕まりやすくなるのが狙いです。 あなた そのアーリーリリース、私も指摘されます。直そうと思っているのに、どうして勝手にほどけちゃうんでしょう? Torapon 実は力みが犯人であることが多いんです。手首には、甲側に反らす「背屈」と、手のひら側に曲げる「掌屈」という動きがあります。グリップを強く握りしめると、前腕の筋肉がこわばって、ダウンスイングの途中で手首の角度を保てなくなる——つまり、直したい気持ちが強いほど、握る力で自分をほどいてしまうんですね。 だからこそ、「ほどくな!」と言葉で自分に命令するより、正しい形を器具に預けて、力まなくても保てる感覚を体に覚えさせる方が近道、というわけです。 PR PRO SENDR(プロセンダー)手首矯正トレーニング器具 右手首に装着して、理想的な手首の形をキープしたまま振れる練習器具。アーリーリリースを抑えてハンドファーストの感覚を養える、ツアープロにも愛用者の多い一品です。本格派向けの高価格帯なので、まずはタオルドリルで感覚を試してからでも遅くありません。 Amazonで見る 楽天で見る パター編:手首を「使わない」ための道具 スイングでは手首の「形」が大事でしたが、パターでは一歩進んで、手首をなるべく使わないことがテーマになります。 あなた えっ、パターこそ手先の繊細なタッチが命じゃないんですか? Torapon 逆なんです。体には「大きな関節ほど、同じ動きを繰り返しやすい」という性質があります。肩のような大きな関節の振り子は毎回そろいやすい。一方、手首のような小さくて器用な関節は、微妙な力加減が毎回変わりやすい。距離感が日によってバラバラという方は、手首のタッチに頼りすぎているのかもしれません。 そこで女子プロが使うのが、レーザー器具です。パターのシャフトに装着して、レーザーの光のラインで狙った方向に正しく構えられているか(エイミング)をチェックするもの。実は「構えた時点でフェースがズレていて、それを手先で無意識に補正している」ことが手首を使う一因になるので、入口の「構え」を正すことも、手首封じの立派な一手なんです。 器具がなくてもできる、代用ドリル2つ あなた どれも気になりますが、まずはお金をかけずに試せる方法はありませんか? Torapon あります。タオル1本で大丈夫。「腕と体の一体感」も「手首を使わないパッティング」も、かなり近い感覚を体験できますよ。 ドリル1:タオル挟み素振り(三角先生の代用) フェイスタオルを両脇に軽く挟んで、落とさないようにハーフスイングで素振りします。腕だけで振るとタオルがポトリと落ちる——つまり、落ちない範囲で振れている間は、腕と体が一緒に動けている証拠です。10回×2セットが目安。 ドリル2:タオル挟みパッティング(手首封じの練習) 同じくタオルを両脇に挟んだまま、パターマットでストロークします。脇が締まると手首の出番が自然に減り、肩の振り子で転がす感覚がつかめます。距離感の練習は、この形に慣れてからで十分です。 道具は「魔法の杖」ではなく「先生」です 最後に、いちばん大切なことを。 これらの器具は、着けた瞬間にうまくなる魔法の杖ではありません。正しい動きを**言葉ではなく感覚で教えてくれる、いわば「先生」**です。だからゴールは、器具を着けたまま打ち続けることではなく、器具を外しても同じ感覚で振れるようになること。器具あり→なしを交互に繰り返して、感覚を自分のものにしていきましょう。 そして、練習器具の効果を受け止めるのは、あなた自身の体です。手首や肘に痛みがあるまま矯正器具を使うのはおすすめできません。気になる方は、先にこちらでセルフケアを。 👉 ゴルフで手首が痛い人へ(手首のセルフケア) 👉 ゴルフで肘が痛い人へ(ゴルフ肘のセルフケア) おわりに 手打ちもアーリーリリースも、根っこにあるのは「体の大きな筋肉を使えず、小さな筋肉に頼ってしまう」こと。女子プロたちの道具は、それを直すために正しい感覚を先に体験させてくれる、よくできた先生たちでした。まずはタオル1本のドリルから、「体で振る」感覚を味わってみてください。 次回はシリーズ最終回、第3回・夏のコンディショニング編。猛暑のラウンドを乗り切るための、プロたちの暑さ対策道具とセルフケアをお話しします。 第1回 = ウォーミングアップ編:試合前の準備に使う道具たち 第2回(今回) = スイング&パター編:手打ちに効く練習器具の仕組み 第3回 = 夏のコンディショニング編:猛暑のゴルフを乗り切る秘密道具 ※この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。トレーニングの効果には個人差があります。持病のある方や、痛み・不調が続く場合は、自己判断せず医師・専門家にご相談ください。

July 16, 2026 · 1 分
グリーン上でパッティングのラインを読む女子ゴルファーのイラスト

飛距離は20位。それでもメジャーで勝てた 〜桑木志帆選手の体づくり(後編・数字とパット)〜

前編では、桑木志帆選手が 1年で15キロやせた こと、その狙いが飛距離ではなく 膝と腰を守ること だったことをご紹介しました。 👉 前編をまだの方はこちらから 15キロやせて、メジャーで勝った 今回は後編です。彼女の 2025年シーズンの成績表 を、そのまま見てみましょう。 ひとつだけ、先に言わせてください。この表を見たとき、私は思わず声が出ました。メジャーチャンピオンの飛距離が、20位だったから です。 この記事のポイント ✅ ドライビングディスタンスは 20位。でもパーオン率は 4位 でした ✅ 飛ばす人が勝つのではなく、狙った場所に運べる人 が勝っていました ✅ パットの練習は、道具がなくてもできます。左手だけの片手打ち、3メートル から 目次 2025年シーズンの成績表 飛距離20位が意味すること いちばん凄いのはパーオン率4位 パットは「左手」で決まる フェースの向きを、目で見る 頭が動いていないか、確かめる 私たちが真似できること おわりに 2025年シーズンの成績表 まずは数字を並べます。日本女子ツアーでの、2025年シーズンの成績です。 項目 数値 順位 パーオン率 73.4% 4位 平均バーディ数 3.71 5位 パーブレーク率 20.7% 5位 平均ストローク 70.7 6位 パーセーブ率 87.4% 8位 平均パット数 1.79 11位 リカバリー率 65.5% 11位 フェアウェイキープ率 72.9% 14位 ドライビングディスタンス 246ヤード 20位 サンドセーブ率 40.6% 54位 賞金ランキング10位、メルセデスランキング9位、トップ10入り15回。 ...

August 19, 2026 · 2 分
ゴルフバッグに並んだクラブと、そばに置かれたルールブックのイラスト

その古いウェッジ、まだ使えます 〜道具のルール、いつの話で止まっていますか〜

コンペの朝、スタート前にバッグを開けたら、クラブが15本入っていました。 さて、何打の罰でしょうか。 ……この質問、ゴルフ仲間に聞くと答えがきれいに割れます。「1本オーバーだから2打」「いや4打」「そもそも失格じゃないの?」。正解は「違反したホールごとに2打、ただし1ラウンドで最大4打まで」 です。18ホールずっと15本のままでも、4打で止まります。 道具のルールというのは、こういう「知っているつもり」がとても多い分野です。しかも厄介なことに、ルールそのものが変わっているのに、頭の中の情報だけが古いままということが起きます。 今回、R&A(世界のゴルフ規則を決めている団体)とUSGA(全米ゴルフ協会)の公式文書を読み直してみたところ、世間に広く出回っている情報のうち2つが、すでに事実と違っていました。 この記事のポイント ✅ 「2024年からアマチュアも古いウェッジは使えない」は誤りです。2024年1月25日にR&A自身が否定しています。 あなたの古いウェッジは、今も普通に使えます ✅ 「2028年からボールが飛ばなくなる」も、もう古い情報です。2026年6月に撤回され、2030年1月まで何も変わらないことが決まりました ✅ 長尺パターは禁止されていません。 禁止されたのはクラブではなく、打ち方のほうです あなた えっ、古いウェッジが使えなくなるって聞いていたんですが……。 Torapon 私もそう思っていました。ところが調べてみたら、R&Aが公式に「そうしない」と結論を出していたんです。しかも2年以上前に。 こういうことが起きるので、道具のルールは出どころを確かめる価値がある分野なんですね。この記事では、規則の番号と決定された日付を添えて書いていきます。 クラブは14本まで。でも罰の数え方を間違えている人が多い まず、いちばん基本のところから。 クラブは14本まで(規則4.1b)。数えるのは自分が運んでいる分だけではなく、キャディさんが持っている分も含めてです。14本より少なくスタートするのは自由で、ラウンド中に14本まで足すこともできます。 問題は罰のほうです。 罰は「余分な1本につき」ではなく「違反が起きた各ホールにつき」。 ストロークプレーなら1ホールにつき2打、最大4打まで(最初の2ホールで2打ずつ)。 つまり15本でも16本でも、3番ホールで気づいても、上限は4打です。「1本につき2打だから、3本オーバーで6打」ではありません。 スタート前に気づけば、罰なしで済みます コンペでいちばんありがちな事故が、素振り用に1本余計に入れたまま抜き忘れるというものです。 これ、実は救いがあります。スタート前に気づいた場合は、罰なしで処理できます(規則4.1c(2))。同伴者かマーカーに「この1本は使いません」と宣言して、バッグの中でそのクラブを逆さまに差しておく。これで14本の制限には数えられません。 ラウンドが始まってから気づいた場合も、次の1打を打つ前に同じように除外を宣言します。ここで宣言せずにそのまま回ると、罰が増え続けてしまいます。なお、除外したクラブでうっかり打ってしまうと失格です。 「壊れた」と「なくした」で、扱いがまったく違います ここも間違えている人が多いところです。表にします。 状況 どうなるか ラウンド中に壊れた(規則4.1a(2)) ⭕️ 修理しても、別のクラブに取り替えてもよい ラウンド中になくした(規則4.1b(3)) ❌ 取り替えられない 他の人からクラブを借りる(規則4.1b(4)) ❌ 借りられない 他の人からボールをもらう(規則4.2a(1)) ⭕️ もらってよい 「壊れたら、そのラウンドはもう使えない」と覚えている方が多いのですが、今は取り替えてよいことになっています。ただし乱暴に扱って壊した場合は別です。ミスに腹を立てて地面に叩きつけた、というのは対象外になります。 クラブは借りられないのに、ボールはもらってよい。 この対比は、覚えておくと得をします。ボールを切らしたときは、遠慮なく同伴者に声をかけてください。 ドライバーの「上限」には、実は許容差があります ドライバーのヘッドは460ccまで。これはご存じの方も多いと思います。 ただ、規則をよく読むと続きがあります。 ヘッド体積は460ccを超えてはならない。プラス10ccの許容差(用具規則2.4b) 測定にはどうしてもばらつきが出るので、実測470ccまでは不適合とされません。 フェースの反発の強さにも上限があります。こちらは「反発係数」という言葉で語られることが多いのですが、現在の公式なものさしは「CT値」で、上限は239マイクロ秒(プラス18マイクロ秒の許容差) です。よく見かける「0.830」という数字は、現行の公式文書の中には見当たりませんでした。 この反発の上限があるおかげで、道具でボールスピードを上げられる範囲には天井があります。この話は別の記事で詳しく書いています。 👉 「速く振る」より先にやること(ミート率を上げる科学・第1回) 高反発ドライバーは「持つ」と「打つ」で分かれます いわゆる高反発ドライバー、いわゆる「ルール不適合」のクラブについて、規則は3段構えになっています。 バッグに入れているだけなら、罰はありません ただし、14本の中には数えられます そのクラブで1打でも打つと失格です(規則4.1a) さらに知られていないのが、ハンディキャップへの影響です。不適合クラブで打ったラウンドのスコアは、ハンディキャップの計算に使えません(ハンディキャップ規則2.1b)。「競技に出ないから関係ない」とも言い切れないわけです。 あなたの古いウェッジは、今も使えます ここからが、今回いちばんお伝えしたい話です。 2010年に、溝(グルーヴ)のルールが厳しくなりました。溝の容積を減らし、溝の角の丸みを増やす。ラフからスピンが効きにくくなるようにする、という趣旨の変更です。 このとき「一般アマチュアには猶予期間があり、2024年1月から全員に適用される」と説明されました。ネット上には今もこの説明がたくさん残っています。 ...

September 9, 2026 · 1 分