ティーショットが右の林に消えて、白杭の向こうへ。同伴者が言います。
「じゃあ前進4打で」
私たちはこれを、当たり前の顔で受け入れています。では、この「前進4打」は、ゴルフ規則の何条に書かれているのでしょうか。
前回は道具のルールを扱いました。そのとき、世間で言われていることが2つとも古くなっていたので、今回も同じやり方で確かめてみました。
日本ゴルフ協会が公開している規則書と解説書を実際にダウンロードして、全文を検索したのです。
結果は、思っていた以上にはっきりしていました。
この記事のポイント
✅ 「前進4打」という言葉は、規則書にもローカルルールのひな型にも、1回も出てきません。規則書290ページ、解説書610ページを全文検索してゼロでした
✅ 似た制度としてE-5という正式なローカルルールはあります。ただし打数が同じになるだけで、打つ場所がまったく違います
✅ 「ハンディキャップの記入漏れが失格でなくなったのは2019年から」も誤りです。正しくは2023年から。しかも今でも失格になる場合があります
えっ、前進4打って正式なルールじゃないんですか?
正式な規則ではありません。 ただ、だから悪いという話ではないんです。ここは誤解のないように書きますね。
前進4打は、プレーが遅れないようにゴルフ場が決めた取り決めです。とても合理的だと思います。でも規則ではないので、コースが変われば中身も変わりますし、公式の競技では使えません。そこを知っているかどうかで、コンペでの落ち着きがまるで違ってきます。
まず基本から。OBは「1罰打」です
意外なほど間違って覚えられているのが、ここです。
紛失球やOBの球は、1罰打を加えて、直前に打った場所から打ち直す(規則18.2b)
2罰打ではなく、1罰打です。ティーショットがOBなら、1打目+1罰打で、次は3打目になります。
「OBは2打罰」と覚えている方が多いのですが、これは打ち直しに戻る手間を罰と一緒に数えているか、後で出てくる前進のルールと混ざっているのだと思います。

白杭ぎりぎりのとき、どこが境目なのか
ここは私も書き方が雑になりかけたので、条文どおりに整理します。
まず、境目の線は、杭のどこに引かれるのか。
境界縁は杭のコース側を地表レベルで結んだ線によって定められる。そしてその杭はアウトオブバウンズとなる(規則18.2a(2)の図)
つまり、杭の中心を結んだ線ではありません。杭のコース側の面を、地面の高さで結んだ線です。杭そのものはコースの外という扱いになります。ですから、線は思っているより少しだけコース側にあります。
そのうえで、球がセーフになる条件はこうです。
止まっている球の全体が境界縁の外にある場合にのみ、その球はアウトオブバウンズとなる。次の場合、球はインバウンズとなる: ・球の一部が境界縁の内側の地面やその他の物の上にあるか触れている ・球の一部が境界縁やコースの他の部分の上方にある場合
2つ目が見落とされがちです。球が線の真上にせり出しているだけでもセーフになります。境目の線は地面だけでなく、上にも下にも伸びているからです(定義「コース」)。
ですから、実際に見るのは「球が線に触れているか」ではなく、球の一部でも線の内側に残っているか(真上にかかっていてもよい)。ここまで分かっていれば、白杭ぎりぎりで揉めることはなくなります。
「前進4打」は、公式の文書に1回も出てきません
ここが今回の中心です。
日本ゴルフ協会が公開している文書を実際にダウンロードして、全文を検索しました。結果はこうです。
| 調べた文書 | ページ数 | 「前進」 | 「特設」 |
|---|---|---|---|
| ゴルフ規則(2023年1月施行) | 290 | 0件 | 0件 |
| オフィシャルガイド(詳説・委員会の措置・ローカルルールのひな型まで全部入り) | 610 | 0件 | 0件 |
| 2019年ゴルフ規則 | 179 | 0件 | 0件 |
| マナーブック | — | 0件 | — |
検索の空振りではないことも確かめてあります。同じ文書の中で「前」は606か所、「特」は321か所ひっかかっているので、文字が読み取れなかったせいでゼロになったのではありません。
つまり——
「前進4打」も「特設ティー」も、ゴルフ規則にも、R&Aとアメリカゴルフ協会が用意しているローカルルールのひな型にも、存在しません。
各ゴルフ場が独自に定めている、そのコースだけの取り決めです。
では「E-5」とは何なのか
「前進4打の正式名称はE-5だ」という説明を、私も見かけました。調べてみると、これは正確ではありませんでした。
E-5は、2019年に新しくできた正式なローカルルールのひな型です。名前は「紛失球やアウトオブバウンズの球についてストロークと距離に代わる選択肢」。狙いは、打ち直しに戻らずに前へ進めるようにして、プレーの流れを止めないことです。
前進4打とよく似ています。でも中身を並べると、別物でした。
| E-5 | 前進4打 | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 公認のひな型 | 公認文書になし |
| 罰打 | 2罰打と明記 | 結果が4打目 |
| 打つ場所 | 球を失ったあたり | 特設ティー |
| 暫定球を打った後 | 使えない | コース次第 |
| プロの競技 | 妥当でないと明記 | — |
打数が同じになるカラクリ
まず、なぜ「同じもの」に見えるのかを整理します。
ティーショットがOBになった場面で考えます。
- E-5を使う場合 … 1打目(OBになったショット)+ 2罰打 = ここまでで3打を消化。だから次に打つのは4打目
- 前進4打の場合 … 特設ティーから4打目として打つ
数字はぴったり同じです。 だから同じルールだと思われてしまうのですが、ここから先がまったく違います。
違うのは「どこまで進めるか」
いちばん大きな違いは、打つ場所です。
前進4打は、たいていコースがあらかじめ作った特設ティーから打ちます。多くの場合、ずいぶん前にあります。グリーンの近くまで進めるコースもあります。
E-5はそうではありません。 進めるのは、球がなくなったあたりまでです。
言葉だけだと分かりにくいので、右の林にOBを打った場面で順番に見てみます。
- まず、球がOBになったあたりを推定します(境界を最後に横切ったと思われる地点)。ここが1つ目の目印です
- 次に、そこから一番近いフェアウェイの場所を探します。ただしそこより先(ホール寄り)には行けません。これが2つ目の目印です
- この2つの目印の間が、球を落としてよい範囲になります。おおまかに言うと、林からフェアウェイまで真横に出てくるイメージです
つまりE-5は、前に進むルールではなく、横に出るルールなのです。
- ❌ 好きなだけ前に進める → できません
- ❌ フェアウェイの好きな場所に置ける → できません(決められた帯の中だけ)
- ⭕️ 林やラフから、フェアウェイまで横に出てこられる
打ち直しに戻らなくて済むぶん、時間は大きく節約できます。でも「距離」は稼げません。 そこが、コースの特設ティーから打つ前進4打との、いちばんの違いです。
じゃあ、うちのコースの前進4打はダメなんですか?
ダメではありません。 仲間内のラウンドや月例で、みんなが納得して使っているぶんには、何の問題もないんです。
大事なのは、これは規則ではなく、このコースの決めごとだと分かっていること。分かっていれば、よそのコースで「うちは前進なしです」と言われても慌てませんし、公式競技に出たときに「え、無いの?」とならずに済みます。
そして、E-5にはもうひとつ大事な条件があります。
暫定球を打っていたら、E-5は使えません(条文に明記)
「暫定球を打ったけれど、探しに行くのが面倒だから前に進む」——これは規則の上ではできません。
暫定球は「暫定」と口に出さないと成立しません
その暫定球にも、知られていない落とし穴があります。
打つ前に、「暫定球」という言葉か、暫定的に打つことを別の方法ではっきり示さなければならない(規則18.3b)
条文はさらに、こう続きます。
「別の球をプレーする」「打ち直す」と単に言うだけでは十分ではない
つまり、「もう1球打っときます」では足りないということです。宣言せずに打ってしまうと、その球がそのままインプレーの球になります。元の球が見つかっても、もう打てません。
ひとつだけ、やさしい例外があります。近くに聞く人が誰もいなければ、打ったあとで、告げられるようになったときに告げればよいことになっています(規則18.3b)。
もうひとつ、覚えておくと得をするのがいつまで暫定球のままかです。
- 元の球がありそうな場所より手前から打っている限り、何回打っても暫定球のまま
- 元の球の推定地点よりホールに近いところから打った瞬間、暫定球がインプレーになる(=そこで元の球は終わり)
「元の球より前から打ったら、そこで終わり」と覚えておくとよいと思います。
捜す時間は3分。しかも、戻っている間も減り続けます
2019年に、球を捜す時間が5分から3分に短くなりました(規則18.2a(1))。ここはご存じの方も多いはずです。
知られていないのは、その数え方のほうです。
3分の起算点は「捜し始めたとき」。打った瞬間でも、球のあたりに着いた瞬間でもありません。カートで近づいている間は、まだ始まっていません。
そして、こういう条文があります。
プレーヤーが捜し始めてから暫定球を打つために直前の場所へ戻っていった場合、誰かが捜し続けているかどうかにかかわらず、3分の捜索時間は続く(詳説「紛失/1」)
戻っている間も、3分は減り続けます。 これを知っていると、「戻るくらいなら、最初から暫定球を打っておこう」という判断に自然になります。
それから、こんな条文もあります。
球は、プレーヤーが紛失であると宣言することでは紛失とはならない
「もうロストでいいです」と言っても、規則の上では紛失になりません。3分たっていなければ、まだ捜せます。
2019年に変わったこと、おさらい
大改訂からもう時間が経ちましたが、まだ古い扱いのままの方をときどきお見かけします。中級者に関わるところを並べておきます。すべて規則本体なので、コースや競技に関係なく全員に適用されます。
⛳️ ドロップは「膝の高さ」から(規則14.3b) 以前は肩の高さでした。ここでいう膝の高さとはまっすぐ立ったときの膝の高さのことで、しゃがんでドロップしてもかまいません。姿勢の話ではなく、基準の話です。
⛳️ 旗竿は立てたままパットしてよい(規則13.2a) 当たっても罰はありません。グリーンの上に限った話でもなく、外からでも同じです。
⛳️ 二度打ちは罰なし(規則10.1a) 以前は1罰打でした。今は1打として数えるだけです。ラフからのアプローチで「今シャラっと2回当たった気がする」と自己申告して1打足している方——足さなくて大丈夫です。
⛳️ グリーン上のスパイクの跡を直してよい(規則13.1c)
⛳️ グリーン上や捜索中に、うっかり球を動かしても罰なし(規則13.1d、7.4)

旗竿については、知られていない注意点がふたつあります。
ひとつは、傾いた旗竿を直さずに、そのまま利益を得ようとするのはダメだということ。故意にホールの中心以外へ動かして、当てて止めようとすれば2罰打です。
もうひとつは、同伴者が親切心で抜いてくれて事故になった場合、罰を受けるのは抜いた側だということ(規則13.2a(4))。自分が「立てたままで」と決めているのに、別の人が球の行方に影響を与えようとして動かしたら、その人が罰を受けます。知っておくと、無用な気まずさを避けられます。
ドロップの高さを間違えて打っても、2罰打とは限りません
ここは中級者がまるごと知らないところだと思います。

その前に、言葉を2つだけ
この先で「救済エリア」と「プレース」という言葉が出てくるので、先に説明しておきます。
■ 救済エリア=球を落としてよい範囲のこと
救済を受けるとき、「どこにでも置いていい」わけではありません。規則が範囲を決めています。その範囲が救済エリアで、3つで決まります。
- 基点 … 測り始める1点(たとえば、球があった場所のすぐ横など。規則ごとに決まっています)
- 広さ … 基点から1クラブレングスか2クラブレングス(規則ごとに違います)
- 決まりごと … 基点よりホールに近づいてはいけない、など
ここで出てくるクラブレングスとは、その日持っている中でいちばん長いクラブ(パターを除く)1本ぶんの長さです。ふつうはドライバーになります。自分のクラブで測ってよいわけです。
■ プレース=手で置くこと
ドロップが「膝の高さから落とす」のに対して、プレースは「手で、そっと置く」ことです。規則は場面ごとに、どちらをするか決めています。落とすべき場面で置いてしまうと違反になります。
では本題です。
まず、打つ前に気づいたなら、無罰で何度でもやり直せます(規則14.3b(4))。回数の制限はありません。間違ったドロップは、そもそも回数に数えません。「もうドロップしちゃったから」と諦める必要はないのです。
問題は、そのまま打ってしまった場合です。ここで罰が2段階に分かれます。
| 打った場所 | 罰 |
|---|---|
| 救済エリアの中から打った | 1罰打 |
| 救済エリアの外から打った | 2罰打 |
| ドロップすべきところをプレースして打った | 2罰打 |
「間違えたら全部2打罰」ではありません。 場所さえ合っていれば1罰打で済みます。
ついでに、ドロップし直しの手順も整理しておきます。
- 正しく落としたのに救済エリアの外に出た → もう一度ドロップ
- 2回目も外に出た → 2回目に地面に最初に触れた場所にプレース
- 置いても止まらない → 同じ場所にもう一度プレース
3回目のドロップはしません。 ここで迷う方が多いところです。
ゴルフ規則(ルールブック)
この記事で引いた条文は、日本ゴルフ協会が規則書とオフィシャルガイドをPDFで無料公開しているので、そちらでも読めます(jga.or.jp)。持ち歩ける冊子が手元にあると、コースで揉めたときにその場で確かめられます。R&Aの公式アプリも無料です。
ハンディキャップの記入漏れ。無罰になったのは2023年からです
最後に、私自身が思い違いをしていたところをひとつ。
「スコアカードにハンディキャップを書き忘れても、2019年から失格ではなくなった」——そう思っていました。これは誤りでした。
2019年当時の条文には、はっきりこう書かれています。
プレーヤーは自分のハンディキャップがスコアカードに示されていることを確認する責任がある。 ハンディキャップが示されていない場合、これが得るストローク数に影響するなら、そのハンディキャップ競技の失格となる(2019年規則3.3b(4))
無罰になったのは2023年1月からです。
スコアカードにハンディキャップを示すこと、スコアを加算することはプレーヤーの責任ではない。間違えて提出しても罰はない(現行の規則3.3b(4))
しかも、話はここで終わりません。
委員会は、ローカルルールのひな型L-2を採用することで、これを元に戻せます。 その場合、記入漏れは今でも失格になりえます。
委員会がハンディキャップを計算する仕組みを持っていない小さなコンペほど、L-2を採用している可能性があります。
これは、この2記事を通していちばん言いたいことの、いい実例だと思います。規則本体とローカルルールは、別物です。 規則本体をいくら覚えても、その日の紙に何が書いてあるかは、読まないと分かりません。
なお、スコアの書き間違いについては昔から変わっていません。実際より少なく書いたら失格、多く書いたらそのまま有効(規則3.3b(3))。サバを読んで多く書いても、損をするだけです。
スコアカウンター(打数カウンター)
打数を数え間違えるのが怖い方に。グリップやベルトに付けて、1打ごとに押していくだけの道具です。罰打も忘れずに足しておくと、あとで数え直さずに済みます。少なく書くと失格になる一方、多く書くとそのまま有効になってしまうので、その場で正確に数えておくのが結局いちばん安全です。
おわりに
前回の道具編と今回とで、同じことが2度起きました。みんなが知っていることと、規則に書いてあることが、ずれていたのです。
道具編では、古いウェッジとボール規制。今回は、前進4打とハンディキャップの記入。どれも悪気があって広まったものではなく、一度覚えた情報がそのまま残っただけです。
そして今回はっきりしたのは、ずれが生まれる場所がだいたい決まっているということでした。
「規則本体」なのか、「その競技の委員会が決めたこと」なのか。
前進4打も、E-5も、ハンディキャップのL-2も、距離計の可否も、全部この境目の話です。規則本体はどこへ行っても同じ。委員会が決めることは、行った先で変わります。
ですから、いちばん実用的な結論はこうなります。
コンペに出る前に、その日の紙を読む。 前進はあるのか、暫定球は必要か、距離計は使えるのか。当日ではなく、事前に。それだけで、この2記事の中身の半分は自動的に片づきます。
次回は3回目、体を守るためのルールです。木の根元、急な斜面、バンカーの目玉。無理な体勢で打ってケガをするくらいなら、罰打を払って救済を受けたほうがいい——理学療法士として、いちばん書きたかった回になります。
この記事は、日本ゴルフ協会が公開しているゴルフ規則とオフィシャルガイド、およびR&Aの規則本文をもとに書いています。規則の解釈で迷ったときは、参加する競技の委員会にご確認ください。コンペごとのローカルルールは要項に記載されていますので、当日ではなく事前に目を通しておくことをおすすめします。