練習場ではなくジムでトレーニングをするゴルファーのイラスト

プロは、すでにやっていた 〜101人の調査でわかった、コースの外の過ごし方〜

前回の記事で、こう書きました。 ゴルフは、歩いて・考えて・人と話す運動。足りていないとすれば、筋肉にしっかり力を出させる場面のほうかもしれない。 前回の記事はこちらです。 👉 数字はよかった。それでも「効いた」とは言えなかった 〜5,074人を4年追った、ゴルフと認知症の研究〜 書き終えてから、ふと思いました。では、本気でゴルフをやっている人たちは、実際どうしているのだろう。 練習場やコースの様子はよく目にしますが、その外で何をしているかは、あまり知られていません。 ちょうど、それを調べた調査がありました。アメリカの Hospital for Special Surgery(スポーツ整形で有名な病院です)のグループが、大学のトップ選手とツアープロ、合わせて101人に「コースの外で何をしているか」を聞いた調査です。2026年5月、リハビリテーション医学の専門誌『PM&R』に載りました。 結論から言うと、特別な裏技は、ひとつも出てきませんでした。 この記事のポイント ✅ 86.1%が、ゴルフのための筋トレをしていました。頻度は週2.9日。「打つ練習」とは別に、体をつくる時間を持っています ✅ スイングコーチ78.2%、トレーナー71.3%、スポーツ心理士が約半数。誰も一人でやっていません ✅ 意外だったのが睡眠。ツアープロのほうが、大学生より「6時間未満」の人が多い。そして、だからこそ睡眠の専門家に相談していました 目次 101人に、コースの外のことを聞いた ほとんどが、筋トレをしていた 誰も、一人でやっていない 3人に2人が、食事を変えている ツアープロほど、眠れていなかった ここは、正直に 私たちが真似できること おわりに 101人に、コースの外のことを聞いた まず、どんな人たちに聞いた調査なのかを押さえておきます。 101人(大学の競技者56人、ツアープロ45人) 平均年齢 25±8歳、男性が55% 競技歴は平均 4.1±3.5年 インターネットでのアンケート調査 平均25歳です。 私たちの多くとは、年齢も体力も違います。そのままそっくり真似できる内容ではありません。それでも読む価値があるのは、出てきた項目が、どれも特別なものではなかったからです。 ほとんどが、筋トレをしていた いちばん知りたかったところから。 101人のうち86.1%が、ゴルフのための筋力トレーニングをしていました。頻度は週2.9±2.0日です。 数字にすると、10人のうち8〜9人。やっていないほうが少数派ということになります。 そして頻度の「週2.9日」も、注目していただきたいところです。毎日ではありません。 週3回前後。これは、私たちがリハビリの現場で高齢の方にお願いする頻度と、ほとんど同じです。 あなた プロだから毎日みっちりやっているのかと思っていました。 Torapon 筋肉は、負荷をかけた後の休みの間に強くなります。だから毎日やればいいというものではないんです。週2〜3回というのは、プロでもアマチュアでも、高齢の方でも変わらない目安です。ここは安心して真似できるところですね。 前回の記事でご紹介した、日本の5,074人の研究で最後まで残ったのが筋力トレーニングでした。飛距離のためにも、体を長持ちさせるためにも、頭のためにも、同じところを指している。 私はここに、いちばん納得しました。 誰も、一人でやっていない 次の数字が、個人的にはいちばん考えさせられました。 誰と組んでいるか 割合 スイングコーチ 78.2% アスレティックトレーナー 71.3% スポーツ心理士 約50% 栄養の専門家 41.1% 睡眠の専門家 23.7% ほぼ全員が、誰かに見てもらっています。 スイングだけではありません。体、心、食事、睡眠。それぞれに専門の人がついているというのが、トップの世界の姿でした。 アマチュアの私たちが、これを全部そろえるのは現実的ではありません。ただ、「自分の目だけでは見えないものがある」という前提は、真似できると思います。 自分のスイングを自分で見ることはできません。自分の体の左右差も、自分では分かりません。一度でいいので、誰かに見てもらう。 それだけで、何年も直らなかったことが5分で分かる、ということが本当にあります。 ...

August 24, 2026 · 1 分
朝のコースでストレッチをする女性ゴルファーのイラスト

「あと10ヤード」をあきらめたら、メジャーに勝った 〜山下美夢有選手に学ぶ(前編・足さない選択)〜

飛ばしたい。 ゴルフをしている人なら、誰でも一度は思うことだと思います。あと10ヤード出れば、あの池を越えられるのに。あと10ヤード出れば、2打目が7番アイアンで届くのに。 その「あと10ヤード」を本気で取りにいって、やめた選手がいます。 身長150センチ。2026年8月、アメリカのツアーで2位に9打差をつけて優勝した山下美夢有選手です。 この記事のポイント ✅ 米ツアーに移った当初、「あと10ヤードほしい」と考えてトレーニングの強度を上げました。けれど、そこから成績は上がりませんでした ✅ 元のやり方に戻したのが、全英女子オープンの約3週間前。その大会でメジャー初優勝を果たします ✅ 朝の準備の順番が見事です。ほぐす → 確かめる → 軽く入れる。この3段階は、そのまま真似できます 「あと10ヤードほしい」と思った 山下選手は日本ツアーで賞金女王になり、2025年からアメリカを主戦場にしました。 そこで感じたのが、飛距離の差だったようです。「10ヤードくらい足したい」。そう考えて、プレースタイルの見直しを検討し、トレーニングの強度も上げました。 体を大きくして、飛距離を足す。理屈としては、まっとうな判断だと思います。 あなた 私も同じことを考えると思います。それで、どうなったんですか? Torapon 本人の言葉が、そのまま答えになっています。「そこから成績が上がることはなかった」。かなり率直な言い方ですよね。 3週間前に、元に戻した 転機は2025年の夏でした。 全英女子オープンの約3週間前、7月のエビアン選手権の前に、山下選手は日本ツアーで結果を出していた元のやり方に戻します。 お父さん(コーチでもあります)の助言は、こうだったと報じられています。打ち方そのものより、スコアとショットづくりを優先しなさい。 そして迎えた2025年8月のAIG全英女子オープンで、メジャー初優勝。 さらに2026年8月には、カナダで開かれたCPKC女子オープンを、初日から一度も首位を譲らずに制しました。4日間で257ストローク。これはツアーの72ホール最少スコア記録に並ぶ数字です。 数字を見ると、戻して正解だったと分かる 2026年シーズンの公式記録です。 項目 順位 平均飛距離(252.34ヤード) 147位 フェアウェイキープ率(79.31%) 3位 平均ストローク(69.91) 3位 ※フェアウェイキープ率は、ティーショットがフェアウェイに止まった割合のことです。 飛距離は147位。ほとんど下のほうです。それで平均ストロークは3位にいます。 あなた 飛距離147位で、スコアは3位……。どういうことですか? Torapon 飛ばすところ以外が、全部ずば抜けているということです。この中身は面白いので、後編でじっくり見ていきます。ここでは「10ヤード足さなくても勝てた」という事実だけ受け取ってください。 理学療法士として、この話にはうなずくところがあります。体を変えるのは、時間もかかるし、うまくいくとはかぎりません。 それより、いま持っている体で何ができるかを詰めたほうが、近道になることがあるのです。 朝のルーティンが、とてもきれいです 9打差で勝ったあの大会で、LPGA公式が山下選手の朝の準備を紹介しました。順番はこうです。 股関節まわりのストレッチ(下半身) 肩まわりのストレッチ(上半身) 上体をひねって、体幹の状態を確認する チューブ・バンドを使う メディシンボールを軽く投げる 肩まわりのマッサージ 私がいちばん見事だと思ったのは、3番目です。 1・2でほぐして、3で「今日の体はどうか」を確かめて、4・5で軽く力を入れていく。ほぐす → 確かめる → 軽く入れる。この順番になっています。 多くのアマチュアの方は、ここが逆になりがちです。いきなり素振りをして、いきなり打ちはじめる。確かめる工程が抜けていることが多いのですね。 あなた 「確かめる」って、何を確かめればいいんですか? Torapon 正直に言いますと、山下選手が何を見ているのかまでは報道されていません。ですので、ここからは私の考えです。 見るのは「いつもどおりに動かせるか」でいいと思います。立って上体を左右にひねり、回りやすいほうと、回りにくいほうがないか。それだけです。左右で違う日は、無理に大きく振らない。それが分かるだけで、ケガの入り口をひとつ減らせます。 私たちが真似できること そのまま真似するのは大変ですが、順番だけなら今日からできます。 ...

August 28, 2026 · 1 分
グリーン上でパットのラインを読む女性ゴルファーのイラスト

飛距離147位の選手が、賞金3位にいる 〜山下美夢有選手に学ぶ(後編・数字と道具)〜

前編で、こう書きました。 「あと10ヤード」を取りにいって、やめた。そして元のやり方に戻したら、メジャーに勝った。 前編はこちらです。 👉 「あと10ヤード」をあきらめたら、メジャーに勝った では、その「元のやり方」の中身は何なのでしょうか。飛距離147位の選手が、なぜ賞金3位にいるのか。 数字がはっきり答えてくれます。 この記事のポイント ✅ 打数をどこで稼いだかを見ると、ドライバーで得た打数は「0.00」。ティーショットでは1打も得していません ✅ そのかわりパットはツアー1位。しかも、その年のツアー最高値そのものです ✅ 道具にも一貫性があります。シャフトは硬さを抑えた設定。強く振るためではなく、同じところに当てるための組み立てに見えます 打数を、どこで稼いだのか ゴルフには「打数をどこで得したか」を場面ごとに分ける指標があります。平均的な選手と比べて、その場面で何打ぶん得をしたかを表す数字です。 2026年シーズンの山下選手は、こうなっています。 場面 得した打数 順位 ティーショット 0.00 92位 アプローチショット 0.10 71位 グリーン周り 0.24 46位 パット 1.47 1位 ティーショットが 0.00。ドライバーでは、1打も得していないということです。 あなた ゼロって、ずいぶんはっきりした数字ですね……。 Torapon そうなんです。そしてパットの1.47は、その年のツアーで誰よりも高い値でした。1位というだけでなく、トップの数字そのものなんですね。ドライバーで得た分がゼロでも、これだけで押し切れてしまう。 さらに、2026年シーズンで1位が4つ並んでいます。 パットで得た打数 1位 スクランブリング(グリーンを外してもパー以上で上がる力)1位 ボギー回避 1位 アンダーパーのラウンド数(39回)1位 大きく叩かない。外してもパーで上がる。 それを積み重ねた結果が、平均ストローク3位です。 道具にも、同じ考え方が通っています ゴルフダイジェスト公式に載っている2026年のセッティングを見ると、面白いことに気づきます。 ドライバー:スリクソン ZXi(9度)/SPEEDER NX GOLD 40g台・SR アイアン:スリクソン ZXi5(6番)+ZXi7(7番〜PW)/ダイナミックゴールド 80g台・R300 ウェッジ:クリーブランド RTZ(48度・52度・58度) パター:テーラーメイド スパイダー ツアーX クランクネック ボール:スリクソン Z-STAR XV 注目したいのはシャフトです。ドライバーはSR、アイアンのダイナミックゴールドもR300。ツアーで戦う選手としては、硬さをかなり抑えた設定です。 あなた プロなのに、やわらかめなんですね。意外です。 Torapon ここからは私の見立てですが、「強く振るための道具」ではなく「毎回同じところに当てるための道具」を選んでいるように見えます。フェアウェイキープ率はツアー3位でしたよね。数字とセッティングが、ぴたりと合っているんです。 ...

August 30, 2026 · 1 分