後半になると、パットが入らない。それはなぜ?
前半は気持ちよく入っていたのに、後半になると、1メートルのパットが急に遠く感じる。 「集中力が切れたかな」「疲れたな」と、ため息まじりに片づけていませんか。 じつは、「後半にパットが入りにくくなる」ことに、精神的な疲れが関わっているのではないか、という研究が少しずつ出てきています。そして、疲れた状態でも、打つ前の「言葉」を決めておいた人は、成績が上がったという実験もあります。 今回は、わかっていることと、まだわからないことを分けてお話しします。 この記事のポイント ✅ ラウンドが進むと精神的な疲れがたまり、特にパットに影響するかもしれないと整理した研究があります。ただし、コースで調べた研究では、「頭の疲れ」と「歩き疲れなど体の疲れ」を、区別して調べられていません ✅ 頭を消耗させる作業をしたあと、打つ前の「自分への言葉」の使い方を教わった学生は、パットの成績が上がりました。教わらなかった学生は、変わりませんでした(ゴルフ初心者の実験です) ✅ パットの前の素振りは、本番のストロークの速さに影響します。素振りと本番で、狙う距離をそろえたときが、いちばん正確でした 打つ前の「目」の使い方は、こちらで取り上げました。今回は「言葉」と「手順」の話です。 👉 パットは、腕より先に「目」で決まっていた 目次 「脳疲労」とは、なんのこと? 本当に、後半はパットが入りにくくなるの? 疲れていても、打つ前の「言葉」で変わった 「言葉」は、誰にでも効くの? ルーティンの中身は、「素振り」だった 次のラウンドで試せる、3つの手順(私の提案です) おわりに 参考にした情報 「脳疲労」とは、なんのこと? あなた 「脳が疲れてパットが入らなくなる」って、聞いたことがあります。でも、脳が疲れるって、本当なんですか? Torapon 「脳疲労」は、医学の用語としては、あまりはっきりしていない言葉なんです。研究では、「精神的な疲れ」や、「自制心を使い果たした状態」と呼ばれて、調べられています。 研究で言う「精神的な疲れ」は、頭を使う作業を長く続けたあとの、だるさ・集中のしにくさのことです。ゴルフは、クラブの選び方、風や傾斜の読み方、次の一打の組み立てなど、1ラウンドのあいだ、ずっと頭を使います。 「自制心を使い果たした状態」とは、がまんする・気持ちをおさえる・集中し続ける、といった作業をしばらく続けたあとに、次のことで踏ん張りがきかなくなる状態のことです。たとえば、気をつかう仕事を一日がんばった夜に、ふだんなら我慢できるお菓子へ、つい手が伸びてしまう。そんなイメージです(これは私が付けた例えで、研究の内容ではありません)。実験では、こうした状態をわざと作る課題を使います。 ここで大事なのは、「脳が疲れた」と感じることと、「それが原因でパットが入らなくなった」ことは、別の話だという点です。次の章で、そこを見ていきます。 本当に、後半はパットが入りにくくなるの? 2025年に、ゴルフと精神的な疲れの研究を10本まとめたレビュー(過去の研究を集めて整理する論文)が出ました。 ここでわかったことは、次のとおりです。 プレーの時間が長く、歩く距離が長いほど、精神的な疲れが出やすい 疲れは、1ラウンドのスコアや、アイアンの正確さ、ドライバーの飛距離、そして特にパットに影響する、と整理されている なお、36ホールの競技を調べた小さな研究では、ホールが進むにつれて疲れを感じる度合いが上がり、スコアが悪くなっていました(レビューによる紹介です)。 ただし、このレビューを書いた研究者たち自身が、はっきりした限界を書いています。 10本のうち7本は、パットだけを調べています。ドライバーやアイアンは、ほとんど調べられていません コースで調べた研究では、頭の疲れなのか、歩き疲れなど体の疲れなのかを、区別して調べることができません。たとえば、後半にスコアが悪くなっても、その原因が頭の疲れなのか、足の疲れなのか、暑さなのかは、分けて確かめられないのです。「頭の疲れが原因」とは言い切れません 参加者に、ゴルフ未経験の初心者が多く、上級者に当てはまるかは、まだわかりません しかも、中には控えめな結果もあります。ゴルフ未経験の女子大学生51人を調べた2019年の研究では、自制心を使う課題のあとのパットの成績が下がったのは、「初めのほう」だけで、あとのほうには影響が出ませんでした。 あなた じゃあ、「後半に入らなくなるのは、頭の疲れのせい」とは、言えないんですね。 Torapon そうなんです。「頭の疲れが、後半にパットが入りにくくなる理由の一つとして、考えられている」。ここまでが、いまの研究で言えることだと思います。 後半に崩れる原因として、お腹まわりの疲れでスイングが変わる研究も、以前ご紹介しました。体の疲れも、頭の疲れも、どちらも関わっていそうです。 👉 後半に崩れるのは、気のせいじゃなかった 疲れていても、打つ前の「言葉」で変わった ここからが、今回の中心です。 2022年に、ギリシャの研究チームが、次のような実験をしました(学術誌『Sustainability』)。 対象:スポーツ科学を学ぶ大学生で、ゴルフ初心者 実験1は62人(31人ずつ2つの群)、実験2は54人(27人ずつ2つの群) 流れ まず、パットを10本×2セット打って、開始時の成績を記録 練習(5本×6セット)。このとき、片方の群だけに、打つ前の「自分への言葉」の使い方を教える 自制心を使い果たさせる課題をやる(頭を消耗させる作業です。課題の中身は、論文の要旨からは確認できていません) もう一度、パットを10本×2セット打って、最後の成績を記録 あなた 言葉の使い方を教わった、というのは、どんなふうに教わったんですか? Torapon ここは、論文の要旨からは、はっきり分かりません。要旨には、「戦略的セルフトーク(目的を決めた自分への声かけ)の使い方を紹介した」としか書かれていないのです。同じ研究チームが2026年に出した初心者の実験では、自分用のセルフトークの計画をつくってもらう形でした。ただ、2022年の実験も同じだったかは、私は確認できていません。 結果は、2つの実験とも同じ向きでした。 言葉の使い方を教わった群は、開始時より最後の成績が上がりました。教わらなかった群は、ほとんど変わりませんでした。 研究者たちは、自制心を使い果たした状態の悪い影響を、言葉の力がやわらげたのではないか、と考えています。理由として考えられているのは、注意の働きが保たれることです(これは仮説の段階です)。 あなた たった1回の実験で、そこまで変わるんですか? Torapon ここは、慎重に読んでください。参加者は、ゴルフを始めたばかりの大学生で、実験は約60分の1回きりです。本物のコースで、何ラウンドも続けた場合のことは、まだわかっていません。 「言葉」は、誰にでも効くの? セルフトーク(自分への声かけ)の研究は、ゴルフ以外でも、たくさんあります。 ...