トッププロは、みんな物心つく前からクラブを握っていた。
そんなイメージはありませんか。私もなんとなく、そう思っていました。
ところが調べてみると、日本のトップ女子プロ5人の始めた年齢は、3歳から小学5年生までばらばらでした。今回から3回に分けて、日本とアメリカのトップ選手の子ども時代を見ていきます。
この記事のポイント
✅ 始めた年齢は 3歳〜小学5年生。いちばん遅い畑岡奈紗選手は、野球と陸上もしていました
✅ 最初の先生は、ほとんどが家族。ゴルフ経験のない父親が教えた例もあります
✅ 練習量が多い時期は全員にあります。ただし、まねしないでほしい練習もあります
5人の始め方を一覧にすると
| 選手 | 始めた年齢 | 教わった人 |
|---|---|---|
| 古江彩佳 | 3歳 | 父(ゴルフ未経験) |
| 竹田麗央 | 6歳 | プロゴルファーの母 |
| 笹生優花 | 8歳 | 父 |
| 渋野日向子 | 8歳(本格的には中2) | 青木翔コーチ |
| 畑岡奈紗 | 小5 | 独学 → 中嶋常幸さんのアカデミー |
※公表されている報道・公式プロフィールをもとにまとめました。
古江彩佳選手:3歳、先生はゴルフをしない父
いちばん早いのは古江選手です。3歳のとき、会社のコンペに出るお母さんの練習について行ったのがきっかけでした。
面白いのは、教えたのがゴルフ経験のないお父さんだったことです。本人いわく「クラブの握り方も知らなかった」。お父さんは雑誌やテレビで研究して、自己流で教えました。
小さいころの練習は、週1回、金曜の夜に親子で練習場へ。費用をおさえるため、打ち放題500円の練習場に通ったそうです。
小学校低学年のころ、両親があるシニアプロにコーチを頼んだことがあります。そのとき言われたのが、「この子はこのまま伸び伸びやらせた方がいい」。トッププロになった今も、コーチはお父さんのままです。
3歳から始めて、しかも毎日みっちり……ではなかったんですね。
そうなんです。早く始めた古江選手でも、最初は週1回。「早く始める」と「たくさんやらせる」は、別のことなんですね。
竹田麗央選手:6歳、先生はプロの母
竹田選手は6歳(小学1年)で始めました。お母さんの哲子さんはツアーにも出ていたプロゴルファーで、ゴルフはお母さんから教わっています。叔母は元賞金女王の平瀬真由美さんです。
小学1年のとき、試合会場で同じ熊本出身の古閑美保さんからレッスンを受けたこともありました。
家族は野球一家です。竹田選手も小さいころから、お兄さんや弟さんの打撃練習を手伝ってきました。
笹生優花選手:8歳、毎日がトレーニング
笹生選手はフィリピン生まれで、2021年に日本国籍を取ったことを公表しています(パリ五輪は日本代表)。8歳のとき「本格的にゴルフをやりたい」とお父さんに泣いて頼んだのが始まりです。
コーチはお父さんの正和さん。報道によると、練習はとても激しいものでした。
- 両足に250グラムずつの重りをつけて、毎朝5時からランニング
- 自転車をこいで下半身を鍛える
- 18ホール回ったあと、鏡の前で素振りを何時間も
- 高校のころには、重りが片足2.5キロに
- 1日12時間の練習量
すごい……。うちの孫にもやらせたら、プロになれますか?
これはまねしないでください。 子どもの骨には、まだ伸びている途中のやわらかい部分があります。重りをつけて毎日走ったり、長時間同じ動きをくり返したりすると、使いすぎのケガにつながりやすいのです。どのくらいまでなら大丈夫か、という目安は第3回でお話しします。
渋野日向子選手:8歳、でも本気になったのは中学2年
渋野選手のゴルフ歴は8歳から。ただ、本格的に始めたのは中学2年と紹介されています。
それまではソフトボールと野球もしていました。小学生のころはソフトボールのピッチャーです。
2017年からは青木翔コーチに師事し、地元の岡山から兵庫まで週3日ほど通ってボールを打ち続けました。2019年の全英女子オープン優勝は、それから2年後のことです。
畑岡奈紗選手:小学5年、野球と陸上をしながら
5人のなかでいちばん遅いのが畑岡選手です。小学5年のとき、お母さんが練習場に連れて行ったのがきっかけでした。
その前は少年野球でセカンドを守っていました。ゴルフに絞ると決めたとき、チームの仲間の前でそれを伝えたそうです。中学では陸上部にも入り、200メートルで県大会7位になっています。
練習は平日2時間ほど、休日は5〜6時間。陸上部の練習が終わった夜にも、2時間ゴルフをしていました。
最初は誰にも教わらず独学で、1年後にはスコア70台。中学3年から、中嶋常幸さんのアカデミーで指導を受けるようになりました。
ちなみに、今のコーチ・高田洋平さんは、アメリカの大学で理学療法の博士課程の招待教授も務めている方です。私と同じ理学療法の世界の人がトッププロを支えていると知って、少しうれしくなりました。
小5から始めて、世界で戦えるようになるんですね。
そうなんです。しかも野球と陸上もやっていた。いろいろなスポーツをしてきたことが、どう関係するのか。それは第3回の研究の話につながります。
5人を並べて見えること
- 始めた年齢はばらばらです。3歳の古江選手も、小学5年の畑岡選手も、どちらも世界で勝っています
- 入口はほとんど家族です。母について行く、父に頼む、母に連れて行かれる
- 最初の先生も家族が多い。しかも古江選手のお父さんは、ゴルフ経験がありませんでした
- 渋野選手と畑岡選手は、ほかのスポーツもしてからゴルフに絞っています
ただ、たった5人の話です。しかも、ここにいるのは勝った人だけ。同じように育ってプロになれなかった子もいるはずなので、「こうすれば強くなる」とまでは言えません。
大人の私たちが取り入れられること
5人の話から、大人のゴルファーにも使えそうなことが2つあります。
1つめは、一度はプロに見てもらうこと。 畑岡選手は独学でスコア70台まで来ましたが、中学3年からは専門の先生に習っています。自己流で伸びた人でも、どこかで人の目を入れていました。
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2つめは、短い時間でも家族と一緒に続けること。 古江選手の始まりは、お父さんと週1回の練習場でした。お子さんやお孫さんと、家でボールを転がすところからでも十分です。
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リビングに敷いて、親子や祖父母と孫でパットを転がせます。勝ち負けをつけて遊ぶだけでも、ボールを打つ感覚に慣れていけます。丸めて片づけられるタイプが扱いやすいです。
おわりに
「もっと小さいころから始めていれば」と思ったことのある方も、いるかもしれません。
けれど日本のトップ選手を見るかぎり、始めた年齢はそれほどそろっていません。週1回から始めた人もいれば、野球や陸上と掛け持ちしていた人もいます。
次回は、アメリカのトップ選手5人です。テニス一家に生まれたのにテニスをしなかった選手や、12〜13歳で始めてメジャーを勝った選手が出てきます。
参考にした情報
- 神戸新聞NEXT「女子ゴルフプロ初優勝の古江 経験皆無の父と二人三脚」(2020年9月)
- Number Web 古江彩佳選手の記事(2024年7月)
- デイリースポーツ 竹田麗央選手の記事(2024年4月15日)
- みんなのゴルフダイジェスト 竹田麗央選手の記事(2024年11月12日)
- 現代ビジネス 笹生優花選手の記事(2021年6月)
- KPMGジャパン プレスリリース(2022年3月)
- 資生堂 渋野日向子選手の紹介ページ
- 株式会社キャンディル プレスリリース(2020年12月23日)
- みんなのゴルフダイジェスト 渋野日向子選手と青木翔コーチの記事(2023年4月7日)
- 現代ビジネス 畑岡奈紗選手の記事
- みんなのゴルフダイジェスト 畑岡奈紗選手の記事(2025年5月9日)
※この記事は公表されている報道と公式プロフィールをもとに書いています。選手ご本人・関係者への取材にもとづくものではありません。お子さんの練習で痛みや不調があるときは、自己判断せず医療機関にご相談ください。