ラウンドの後半、左の脚の付け根が、ずきっとする。
「年だから股関節が傷んできたかな」と思う方もいれば、「いや、これは腰から来ているはず」と思う方もいるでしょう。
じつは、股関節の痛みは、いつも股関節のあたりに出るとは限りません。膝や腰が痛いと思っていたら、原因は股関節だった、ということもあります。逆に、股関節のあたりが痛くても、原因は別の場所かもしれません。
今回は、痛む場所から、原因の「当たり」をつける方法をお話しします。
この記事のポイント
✅ 股関節が原因の痛みは、脚の付け根に出ることが多い一方で、膝(約3割)や腰(約2割)に出ていた人もいました(日本の研究)
✅ 太ももの付け根の外側の出っ張った骨のあたりが痛む場合は、関節の中ではなく、お尻の筋肉の腱(すじ)が傷んでいることがあります。片脚で30秒立って、そこが痛むかが、見分ける手がかりになります
✅ ただし、どのチェックも「当たりをつける」までです。自分でやった場合の正確さは、研究されていません
股関節の「やわらかさ」のチェックとストレッチは、こちらで取り上げました。今回は「痛み」の話です。 👉 股関節は、もう限界まで使われている
目次
- 左の股関節には、歩くとき以上の負担がかかる
- 股関節の痛みは、膝や腰に「化ける」ことがある
- 痛む場所で、3つに分けて考える
- 自分でできる3つのチェック
- すぐに病院へ行ってほしいとき
- ゴルフを続けるために
- おわりに
- 参考にした情報
左の股関節には、歩くとき以上の負担がかかる
2023年に、アメリカの研究チームが、年配の健康な男性ゴルファー22人のスイングを調べました(学術誌『Journal of Sports Science and Medicine』)。
比べたのは、ゴルフのスイングと、歩くこと・椅子からの立ち座りのあいだで、膝と股関節にかかる負担です。
- 目標側(右打ちなら左)の股関節には、歩くときや立ち座りより大きな負担がかかっていました
- しかもその負担は、ヘッドスピードが速い人ほど大きい傾向でした
ふだんは平気なのに、ゴルフのときだけ股関節のあたりが痛むのは、そのせいですか?
その可能性はあります。ふだんの生活では使わない大きさの負担が、スイングのたびに左の股関節にかかっているわけです。だからこそ、痛みが最初に顔を出すのがゴルフ場、ということも考えられます(これは私の考えで、この研究が確かめたことではありません)。
股関節の痛みは、膝や腰に「化ける」ことがある
千葉大学の研究チームが、股関節の変形(変形性股関節症)が進んで、人工関節の手術を受けた方を調べました(学術誌『Modern Rheumatology』2013年)。369人、443の股関節です。
調べ方は、とてもシンプルです。
- 手術の前に、体のどこが痛かったかを見る
- 手術から3か月たって、その痛みが消えたかを見る
股関節を新しくしたら消えた痛みなら、その痛みは股関節から来ていたと考えられます。こうして、「股関節の痛みが、体のどこに出ていたか」を確かめたわけです。
股関節が原因の痛みが出ていた場所は、次のとおりでした。
| 痛みが出ていた場所 | 割合 |
|---|---|
| 脚の付け根 | 89% |
| お尻 | 38% |
| 太ももの前 | 33% |
| 膝 | 29% |
| 太ももの付け根の外側(出っ張った骨のあたり) | 27% |
| 腰 | 17% |
| すね | 8% |
※ 1人で何か所も痛む方がいるので、合計は100%になりません。
膝が痛いと思っていたのに、原因は股関節だった、ということもあるんですね。
そうなんです。研究者たちも、「膝の痛みや腰の痛みのふりをした股関節の病気」に注意するようにと書いています。ただ、この研究の対象は、生まれつき股関節の受け皿が浅い(臼蓋形成不全)ことから変形が進んだ方で、日本人、とくに女性に多いタイプです。すべての股関節の痛みに当てはまるとは限りません。
一方で、デンマークで変形性股関節症の方108人を調べた研究(学術誌『Family Practice』2016年)では、膝やすねだけが痛い人は、1人もいませんでした。
つまり、股関節が原因なら、膝やすね「だけ」が痛むことは少なく、たいてい股関節のまわりのどこかにも痛みがある、と考えられます。膝や腰が痛むときも、脚の付け根やお尻に痛みがないか、一度たしかめてみてください。
痛む場所で、3つに分けて考える
ここからは、研究と、一般的な診察の考え方をもとにした、目安です。

① 前:脚の付け根の奥が痛む 股関節の関節の中(軟骨や、関節のふちのクッション)が関わっていることが多い場所です。手で押さえようとすると、親指と人さし指で「C」の字を作るように、脚の付け根を横からつかむしぐさになる方もいます。
② 横:太ももの付け根の外側、出っ張った骨のあたりが痛む 関節の中ではなく、お尻の横の筋肉が骨につく腱(すじ)や、そのまわりが傷んでいることがあります。痛い側を下にして横向きに寝るとつらい、という方が多いのが特徴です。
③ 後ろ:お尻から脚の後ろ、膝より下まで響く 腰の神経から来ていることがある場所です。しびれをともなったり、腰を反らす・前かがみになると脚に響いたりする場合は、股関節より腰を疑います。
私は、前も後ろも痛いような気がします……。
じつは、それもよくあることなんです。年齢とともに、股関節と腰の両方が傷んでいる方は多く、医療の世界では「ヒップ・スパイン・シンドローム(股関節と腰の症候群)」という呼び名まであります。どちらが主な原因かを分けるのは、専門家でも難しいことがあります。だからこそ、自分で決めつけずに、相談してほしいのです。
自分でできる3つのチェック
⚠️ はじめに
- どのチェックも、強い痛みが出たら、すぐにやめてください
- 研究では、医療者がおこなったテストで正確さが調べられています。自分でやった場合の正確さは、わかっていません。あくまで「当たりをつける」ためのものです
- 手術を受けた股関節では、やらないでください
チェック① 脚の付け根テスト(前の痛み)
- あおむけに寝て、痛い側の膝を両手で抱え、胸のほうへゆっくり近づけます
- そのまま、膝を反対側の肩のほうへ、軽く倒します
- 脚の付け根の奥に、いつもの痛みが出るかどうかを見ます
これは、診察で使われるテスト(股関節を曲げて、内側に寄せて、内側にひねるテスト)を、自分向けにやさしくしたものです。「内側にひねる」動きは、ひとりでは難しいので省いています。
2015年に、このテストの正確さを調べた研究をまとめた分析が出ています(学術誌『British Journal of Sports Medicine』)。結果は、次のとおりでした。
- 関節の中に問題がある人のほとんどで、このテストは痛みが出ていた
- ただし研究者たちは、このテストには「ふるい分け」の精度しかないとまとめています。このテストだけで「関節の中が悪い」と決めることはできない、ということです
つまり、
痛まなければ、関節の中の問題の可能性は下がります。痛んでも、それだけでは決まりません。
という読み方になります。なお、まとめられた研究のうち、質が高いと判断されたのは1本だけでした。
チェック② 出っ張った骨を押す(横の痛み)
- 立ったまま、太ももの付け根の外側を手でさわります。ズボンの横ポケットの少し下あたりに、ぐりっとした骨の出っ張りがあります
- そこを、指で押してみます。左右で比べてください
チェック③ 片脚で30秒立つ(横の痛み)
- 壁のそばに立ち、ふらついたらすぐ手をつけるようにしておきます
- 痛い側の脚1本で立ち、30秒数えます
- 30秒以内に、太ももの付け根の外側が痛むかどうかを見ます
2017年に、オーストラリアの研究チームが、股関節の横が痛む65人を調べました(学術誌『British Journal of Sports Medicine』)。MRIで、お尻の横の腱が傷んでいるかどうかを確かめ、診察のテストと照らし合わせています。
- 片脚立ちで30秒以内に横が痛んだ人は、腱が傷んでいる可能性が高い
- 出っ張った骨を押しても痛くない人は、腱が傷んでいる可能性は低い
押しても痛くて、片脚立ちでも痛かったら、腱の問題ということですか?
その可能性が高い、というところまでです。2024年に、こうしたテストをまとめた分析でも、「押して痛い」と「横に脚を開こうとして痛い」の両方がそろうと、可能性がぐっと上がるとされています。ただ、2017年の研究は人数が少ないと研究者自身が書いていて、2024年の分析も、根拠の確かさは「非常に低い〜中くらい」とされています。決めるのは、やはり専門家の診察です。
すぐに病院へ行ってほしいとき
次のような場合は、セルフチェックをせずに、早めに整形外科を受診してください。
- 転んだあとから、脚の付け根が痛くて、体重をかけられない(骨折のことがあります)
- 熱がある、股関節のまわりが赤く腫れて熱をもっている
- じっとしていても、夜も痛む
- 脚のしびれや力の入りにくさが強くなってきた、尿や便が出にくい
- 痛みがどんどん強くなっている、数週間たっても良くならない
ゴルフを続けるために
痛みの原因がわかるまでは、ラウンドの数や練習量を、いったん減らすのが無難です。
振り方を変えることで、左の股関節の負担を減らせるかを調べた研究もあります。2021年に発表された、15人のゴルファーでコンパクトな振り方と、いつもの振り方を比べた研究では(学術誌『Sports Biomechanics』)、左の股関節をひねる負担が4割ほど減りました。
ただし、ヘッドスピードは落ちていました。また、人数が少なく、痛みが減るかどうかまでは調べていません。振り方を変えるなら、レッスンプロと相談しながらがおすすめです。
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ストレッチをしたら、良くなりますか?
原因によって、合う運動は変わります。たとえば、お尻の横の腱が傷んでいる方は、脚を組む・脚を反対側へ大きく倒すといった、腱を骨に押しつける姿勢やストレッチで、かえって痛みが増すことがあると考えられています。だからこそ、先に原因の当たりをつけて、専門家に見てもらってから運動を選んでほしいのです。
チェック①は、あおむけでおこないます。床が硬いと、腰や背中が痛くなりやすいので、厚めのマットがあると楽です。
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厚さ10mm、180cm×60cm。あおむけになっても体がはみ出さない大きさです。床の硬さが気にならないので、チェックやストレッチに集中できます。使わないときは丸めて収納袋へ。
おわりに
股関節のまわりが痛むと、「股関節が悪いんだ」と思いがちです。でも、痛む場所によって、関節の中なのか、腱なのか、腰なのか、考えられる原因は変わります。そして、膝や腰の痛みの裏に、股関節が隠れていることもあります。
今回のチェックは、病院で「どこが、どんなときに痛むか」を伝えるための準備として使ってください。「脚の付け根の奥」「出っ張った骨のあたり」「片脚で立つと痛い」。そう伝えられるだけで、診察はぐっと進みやすくなります。
もし手術をすすめられたら、手術のあとのゴルフについては、こちらで取り上げました。 👉 股関節や膝の手術のあと、ゴルフはどうなる?
参考にした情報
- Lynn SK ほか「Lower Body Joint Moments during the Golf Swing in Older Adults: Comparison to Other Activities of Daily Living」Journal of Sports Science and Medicine 2023年;22(3):382-388
- Nakamura J ほか「Distribution of hip pain in osteoarthritis patients secondary to developmental dysplasia of the hip」Modern Rheumatology 2013年;23(1):119-124
- Poulsen E ほか「Pain distribution in primary care patients with hip osteoarthritis」Family Practice 2016年;33(6):601-606
- Reiman MP ほか「Diagnostic accuracy of clinical tests for the diagnosis of hip femoroacetabular impingement/labral tear: a systematic review with meta-analysis」British Journal of Sports Medicine 2015年;49(12):811
- Grimaldi A ほか「Utility of clinical tests to diagnose MRI-confirmed gluteal tendinopathy in patients presenting with lateral hip pain」British Journal of Sports Medicine 2017年;51(6):519-524
- Kinsella R ほか「Diagnostic Accuracy of Clinical Tests for Assessing Greater Trochanteric Pain Syndrome: A Systematic Review With Meta-analysis」Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy 2024年;54(1):26-49
- Kanwar KD ほか「Injury risk-factor differences between two golf swing styles: a biomechanical analysis of the lumbar spine, hip and knee」Sports Biomechanics 2024年;23(10):1504-1525
※ 本記事は、上記の論文をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。紹介したセルフチェックは診断の代わりにはなりません。痛みが続く方、持病のある方は、整形外科などの専門家にご相談ください。