前回(第1回・日本編) は、日本のトップ女子プロ5人の子ども時代を見ました。始めた年齢は3歳から小学5年生までばらばらでした。
今回はアメリカです。結論から言うと、アメリカの5人も4〜5歳から12〜13歳まで、やっぱりばらばらでした。
この記事のポイント
✅ いちばん遅いダニエル・カン選手は12〜13歳で始めて、メジャーを勝っています
✅ ネリー・コルダ選手は、テニス一家に生まれたのにスキー・フィギュアスケート・体操をしていました
✅ 5人のうち2人は、お父さんがコーチでした
5人の始め方を一覧にすると
| 選手 | 始めた年齢 | 教わった人 |
|---|---|---|
| レクシー・トンプソン | 4〜5歳ごろ | 父 |
| ネリー・コルダ | 6歳 | 専門のコーチ |
| リリア・ヴー | 7歳 | 父 |
| ローズ・チャン | 9歳 | 専門のコーチ |
| ダニエル・カン | 12〜13歳 | 専門のコーチ |
※公表されている報道・公式プロフィールをもとにまとめました。カン選手の年齢は、資料によって12歳と13歳に分かれています。
レクシー・トンプソン選手:兄2人を追いかけて
トンプソン選手は3人きょうだいの末っ子です。いちばん上のお兄さんは、弟と妹が4〜5歳のころにはもうコースにいたと振り返っています。
きょうだいは、ゴルフの時間をつくるためにオンラインで自宅学習をしていました。家のまわりの5ホールを「裏庭の5ホール」と呼んで、兄妹で回っていたそうです。
コーチはお父さん。本人は「パパはずっと私のコーチ」と話しています。12歳で全米女子オープンに出場し、のちにメジャーも勝ちました。
ネリー・コルダ選手:テニスではなく、スキーと体操
コルダ選手のお父さんは、テニスの全豪オープンを制した元プロ選手です。弟さんも、いまはテニス選手。
それなら本人も子どものころテニスを……と思いますよね。ところが2024年の会見で、本人はこう話しています。
テニスをやれと押しつけられたことはない。冬はスキー、ほかにフィギュアスケートと体操。いろいろなことを少しずつやった。
横にいたお父さんは「テニスラケットは隠しておいたよ」と冗談を言っていました。
ゴルフは、お父さんがテニスを引退してから始めたもので、家族みんなで一緒にできるものでした。5歳上のお姉さん(ジェシカ・コルダ選手)にあこがれて、「姉がやることは何でもやりたかった」そうです。6歳ごろから本格的に、週3〜4回レッスンを受けていたと紹介されています。
のちに世界ランキング1位になり、東京五輪で金メダルをとりました。
テニスの名選手の娘さんが、テニスをしていなかったなんて意外です。
私も驚きました。ご両親は「本当に好きなものを見つけてほしかった」そうです。スキーや体操でいろいろな体の動かし方を覚えたことが、どう関係するのか。その話は次回の研究で出てきます。
リリア・ヴー選手:兄のまねから、毎日「明かりが消えるまで」
ヴー選手は7歳で始めました。すでにゴルフをしていたお兄さんのまねを、ふざけてしたのが最初だそうです。
通っていた地元のコースには、月いくら払えば打ち放題という仕組みがありました。本人いわく、お兄さんと「明かりが消えるまで、ほぼ毎日」練習していたそうです。
お父さんがコーチで、のちにそのコースで教える人になりました。ヴー選手は2023年にメジャーを2つ勝ち、世界1位になっています。
ローズ・チャン選手:9歳、空き地の手作り練習場
チャン選手が始めたのは9歳。裏庭で、お父さんが7番アイアンでペットボトルのキャップを打つのを見て「私にもできる」と思ったのがきっかけです。
その前には、水泳とテニスも試していました。
練習場所は、家の近くの空き地に家族で作った手作りの打ちっぱなし。四角いマットから打っては、走って球を拾いに行く。週末はそこで何時間も打っていたそうです。
まもなく地元のクラブで専門のコーチについて、ジュニアの大会で勝ち続けます。始めて2年ほどで、お父さんは仕事を辞めて娘のゴルフを支える道を選びました。プロになって最初の試合で優勝しています。
空き地にマットを置いて、自分で球を拾いに行く……。なんだか楽しそうですね。
そこが大事だと思います。もっと打ちたくなって本物の練習場に通いはじめたころ、「本当に好きになった」と本人は話しています。楽しいから、もっとやりたくなった。その順番なんですね。
ダニエル・カン選手:12〜13歳、テコンドーの黒帯から
10人のなかで、いちばん遅いのがカン選手です。12〜13歳のとき、お兄さんのゴルフレッスンについて行ったのが始まりでした。
それまではテコンドー。なんと7歳で黒帯の2段です。子どものころの夢は、テコンドーでオリンピックに出ることでした。
それでも、2017年に全米女子プロゴルフ選手権でメジャー初優勝。2018年からは、タイガー・ウッズ選手の元コーチとして知られるブッチ・ハーモンさんに教わっています。
5人を並べて見えること
- 始めた年齢は4〜5歳から12〜13歳まで。日本の5人と同じく、ばらばらです
- 入口はやはり家族。兄や姉のまね、父のスイング、兄のレッスン
- お父さんがコーチだったのは、トンプソン選手とヴー選手。チャン選手も、お父さんが仕事を辞めて支えました
- コルダ選手(スキー・フィギュア・体操)、チャン選手(水泳・テニス)、カン選手(テコンドー)は、ほかのスポーツをしてからゴルフに来ています
ただし今回も、勝った5人だけの話です。ここから「ほかのスポーツをすれば強くなる」とまでは言えません。
大人の私たちが取り入れられること
アメリカの5人からも、大人のゴルファーに使えそうなことが2つあります。
1つめは、専門の先生に見てもらうこと。 コルダ選手とチャン選手は、子どものころから専門のコーチについていました。カン選手は、プロになってからも名コーチに習っています。トップ選手でも、自分のスイングを人に見てもらい続けているのです。
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専属トレーナーがマンツーマンでスイングを見てくれます。弾道計測器で数字を見ながら教わるので、自分のくせを知るきっかけになります。まずは無料体験から。
2つめは、身近な場所で楽しく打つこと。 チャン選手の始まりは、空き地に置いた1枚のマットでした。家の中でボールを転がすだけでも、ゴルフに触れる時間は作れます。
室内用のパターマット
リビングに敷いて、親子や祖父母と孫でパットを転がせます。勝ち負けをつけて遊ぶだけでも、ボールを打つ感覚に慣れていけます。丸めて片づけられるタイプが扱いやすいです。
おわりに
日米の10人を並べると、始めた年齢は3歳から13歳まで。思っていたより、ずっと幅がありました。
では、研究ではどうなのでしょうか。早く始めて1つに絞った人と、いろいろなスポーツをしてから絞った人。大人になって世界のトップに立ったのはどちらが多いのか。
次回(最終回)は、6,000人以上の選手を調べた研究と、子どもの練習量の目安を、理学療法士の立場からお話しします。
参考にした情報
- ESPN「Brothers made Lexi Thompson more determined」(2014年4月17日)
- GOLF.com レクシー・トンプソン選手の記事(2019年1月17日)
- PGA TOUR PNCチャンピオンシップ 会見記録(2024年12月20日)
- Golf Monthly ネリー・コルダ選手の紹介記事
- AP通信 ネリー・コルダ選手の新コーチの記事(2021年11月16日)
- SCGA FORE Magazine リリア・ヴー選手の記事(2024年10月14日)
- ESPN ローズ・チャン選手の記事(2024年8月6日)
- Team USA 公式プロフィール(ダニエル・カン選手)
- USA Golf「Road to Tokyo - Danielle Kang」(2021年7月30日)
- Golf Digest ダニエル・カン選手とブッチ・ハーモン氏の記事(2021年)
※この記事は公表されている報道と公式プロフィールをもとに書いています。選手ご本人・関係者への取材にもとづくものではありません。お子さんの練習で痛みや不調があるときは、自己判断せず医療機関にご相談ください。