「芯に当てよう」と念じながら振っても、打点はなかなか変わりません。
理由はシンプルで、自分がどこに当てているのかを知らないまま 直そうとしているからです。
前回の第1回・理論編 では、ミート率(当たりの効率)が飛距離を左右すること、そして 根元当たりは平均18ヤードも損 をしていることをお話ししました。今回は 実践編。まず 自分の打点を“見える化” して、それから直す——その順番でご紹介します。
この記事のポイント
✅ 打点は 家にあるベビーパウダー で、今日から見える化できます(お金はかかりません)
✅ ドリルは3つだけ。クラブ1本と、小さな目印がひとつ。合計15分ほどです(ティーが刺せない練習場向けの代わりの方法もご紹介します)
✅ 「芯に当てよう」と念じるより、外れる方向を1つ減らす ほうが早く変わります
始める前に:3つの約束
打点の練習なら、思いっきり振っても大丈夫そうですね?
それが逆なんです。練習中は、ゆっくり振るほど打点がそろいます。全力で振ると打点はばらけて、何を直したのか分からなくなってしまいます。今回は 力みを取るのが正解 ですよ。ただし「大きくゆるめる」とは別ものなので、そこはドリル3でくわしくお話ししますね。
- 必ずウォームアップをしてから 行う(軽い素振り・肩と股関節を回すなど、5分でOK)
- 痛みが出たら、その場で中止 する(我慢して続けない)
- 1回の練習で直すのは「1つだけ」(あれもこれもと欲張ると、どれも身につきません)
体の回りにくさや腰に不安がある方は、先にこちらで準備を。 👉 回旋可動域チェックと改善ストレッチ 👉 ゴルフで腰が痛くなる人へ(股関節ストレッチ)
まず「自分の打点」を見える化する
直す前に、測る。これが今回いちばん大事な工程です。方法は2つあります。
① ベビーパウダー(いちばん手軽・無料)
フェースに薄くはたいて打つと、当たった場所のパウダーだけが落ちて、打点がくっきり残ります。家にあるもので今日からできる、いちばんお手軽な方法です。粉が飛ぶので、屋外か、練習場のマットの上でどうぞ。
② 打点確認用のシール(いちばんきれい)
フェースに貼って打つと、当たった場所に跡が残る専用のシールです。跡がはっきり出て写真に残しやすい のが利点。1枚で十数球ぶんは使えます。
1球ごとに確認したほうがいいですか?
いえ、まとめて傾向を見る のがコツです。5〜10球ぶんの跡を スマホで撮っておいて、あとで見返す。1球単位だと運の要素が混ざりますが、5球も見れば偏りは見えてきます。10球あれば十分です。
見るポイントは、たった2つです。
- 左右:先っぽ(トゥ)寄りか、根元(ヒール)寄りか
- 上下:フェースの上のほうか、下のほうか
前回お話ししたとおり、損が大きいのは「根元」と「下」。もし跡がその2つに寄っていたら、あなたには大きな伸びしろがある ということです。喜んでいい発見だと思ってください。
跡と「数字」の両方が見られると、なお良い
パウダーやシールで分かるのは「どこに当たったか」まで。そこに「それがどれだけ損だったか」という数字が加わると、練習の手応えが一気にはっきりします。
打席の後ろに置くだけで、ヘッドスピード・ボール初速・推定飛距離、そして ミート率 を表示してくれる家庭用の計測器があります。跡を見て「根元に寄っているな」と気づいたその場で、ミート率が 1.40なのか1.46なのか まで分かるわけです。
ユピテル ゴルフスイングトレーナー GST-8 BLE
打席の後ろに置くだけで、ミート率とボール初速がその場で分かる日本製の計測器。この記事のドリル3「打ち比べ」では飛距離の差を目で判断しますが、数字があれば迷いません。スマホアプリでクラブ別の記録も残せます。
もちろん、なくてもこの記事のドリルはすべてできます。パウダーの跡だけでも十分に上達しますので、そこはご安心ください。
ドリル1:ティー2本の「門」ドリル(左右のズレを直す)

左右のズレを直す、いちばん分かりやすいドリルです。使うのは ティー2本 だけ。
- ボールを置き、その 手前(自分から見て先っぽ側)と奥(根元側)にティーを1本ずつ 刺します
- 2本の間隔は、クラブヘッドの幅+指2本ぶん くらいから。これが「門」です
- まずは 素振り で、ヘッドが門の中を通る感覚を確かめます
- 次に ハーフスイング で実際に打ちます。ティーに当たったら、そこがあなたのズレている方向です
- 慣れてきたら、門の幅を 指1本ぶんまで 狭めていきます
うちの練習場、マットにティーを刺せないんです……。
ティーが刺せない打席のほうが、じつは多いですよね。刺さなくてもできる代わりの方法 がありますので、ご安心ください。
ティーが刺せないときの代わりの方法
マットに刺せない打席では、こちらでどうぞ。どれも「ヘッドの通り道に目印を置く」という同じ狙いです。
- 置くだけの目印にする……ティーを刺さずに、ボールの手前と奥に 横に寝かせて置く だけでも門になります。当たっても転がるだけなので安全です
- ヘッドカバーを1つ置く……先っぽ側に外しやすい方は、ボールの 先っぽ側から少し離してヘッドカバーを1つ 置きます。当てたくないので自然と根元寄りを通るようになります(根元に外しやすい方は、置く場所を逆にします)
- マットの線を使う……多くの練習場のマットには、もともと 細い線や継ぎ目 が入っています。その線に対して「ヘッドのどこが乗っているか」を目印にするだけでも、十分ドリルになります
いずれの場合も、まず素振りから。目印に当たらずに振れるようになってから、ボールを打ちます。
なお、打席のマットやフェンスに 物を置いてよいかは練習場によって決まりが違います。周りの方の迷惑にならないか、不安なときはお店の方に一声かけてから行ってください。
ズレの方向に合わせた調整のコツ
- 根元(ヒール)に当たりやすい方 → ボールを 少しだけ先っぽ側 に置いて構え、門の根元側のティーを気持ち近づける
- 先っぽ(トゥ)に当たりやすい方 → ボールを 少しだけ根元側 に。手元が体から離れすぎていないかも確認
回数の目安:素振り5回 → ハーフスイング10球(ティーに当たっても、飛ぶだけで危険はありません。安心して続けてください)
ドリル2:頭を止める素振り(上下のズレを直す)
上下のズレは、多くの場合 体が上下に動いている ことが原因です。ここは私の本業の話に近いところで、頭の位置が変わると、クラブが最も低くなる場所(最下点)も一緒にずれてしまう ためです。
まずは クラブを持たずに、壁を使って確かめます。
- 壁に向かって立ち、アドレスと同じ前傾姿勢 をとります
- そのまま おでこ(前頭部)を壁に軽く触れさせます。押しつけず、触れているのが分かる程度で
- 腕を胸の前で組み、おでこを壁から離さないまま、体だけをバックスイングの向きへ回します
- そのまま、フォローの向きへも回します
- おでこが壁から離れたり、逆に強く押しつけてしまうところがあれば、そこがあなたの 上下の動きが出る場所 です
やってみたら、バックスイングでおでこが壁から離れてしまいました……。
とても多いパターンです。体を回そうとして、上に伸び上がってしまっている んですね。「回す」ではなく 「おでこを置いたまま、胸だけ向きを変える」 とイメージすると、変わってくる方が多いですよ。
壁で感覚がつかめたら、次はクラブを持って 広い場所で 素振りをします。このとき スマホで正面から動画を撮っておく と効果的です。動画を止めて、アドレスのときの頭の位置と、インパクト直前の頭の位置を見比べてみてください。
回数の目安:壁で10回 → クラブを持ってゆっくり素振り10回
なお、頭を固めようとして 首に力を入れるのは逆効果 です。首や肩を痛めるもとになりますし、体も回りにくくなります。「固定する」ではなく「置いておく」——それくらいの力加減でどうぞ。首や腰に不安のある方は、前傾を浅めにして行ってください。
ドリル3:力みを取って、打ち比べる
最後は、その場で効果を実感しやすいドリルです。ただし、ここは よくある誤解 があるので、先にお伝えしておきます。
「8割の力で振れ」ってよく聞きますよね。それをやればいいんですか?
それが、落としすぎ なんです。ゴルフの体づくりの専門機関(TPI)は「8割で振れ」をはっきり否定しています。250ヤード飛ぶ人が本当に8割で振ったら、200ヤードになってしまう から。狙いたいのは「ゆるめる」ではなく「力みを取る」ほうです。
この指摘は、けっこう大事です。「力を抜けば当たるようになる」と思って大きくゆるめてしまうと、ミート率で取り戻せる以上に、速さを失ってしまう。
同じ専門機関はこうも指摘しています——多くの人は「思いっきり振れ」と言われても、いつもより5mph(約2m/s)ほどしか速くなっていない。つまり私たちは、自分で思っているより すでにほぼ全力で振っている のです。だから減らす余地は、そもそもそんなに大きくありません。
ですので、目指すのは「ほんの少しだけ力みを取る」。振る速さを落とすのではなく、肩や腕のこわばりを抜く イメージです。
じゃあ「何割」という数字は、決めなくていいんですか?
そこが正直なところで、「何割がベスト」という決まった答えはありません。人によって違います。だから 自分で打ち比べて見つける のがいちばん確かです。やり方はかんたんですよ。
打ち比べのやり方
- いつもどおり に5球打つ → 打点と、飛んだ距離をおぼえておく
- 肩と腕の力みだけ抜いて 5球打つ(振る速さは落とそうとしない)
- 2つの 打点の跡 を見比べる。そして 平均の飛距離 を比べる
見るのは「いちばん飛んだ1球」ではなく 平均 です。会心の1発だけを比べると、判断を間違えます。
多くの方は、②のほうが 打点がまとまり、平均飛距離は変わらないか少し伸びる という結果になります。もしそうなったら、それがあなたの適正な力加減です。逆に②で明らかに飛ばなくなったなら、抜きすぎ のサイン。もっと力みを取る量を減らしてください。
回数の目安:いつもどおり5球 → 力みを取って5球(比べるところまでが1セット)
この打ち比べのとき、足の裏の圧 を感じるようにすると、さらに打点がそろいます。この「足の裏を感じる」感覚は、地面反力・第2回 でも登場しましたが、狙いが少し違います。あちらは「押すタイミング」、こちらは「毎回同じように振る」ため。同じ感覚を、別の目的に使うイメージです。
1回のメニューにまとめると
3つ全部やると、どのくらいかかりますか?
ウォームアップ込みで 15分ほど、球数は40球くらいです。週2〜3回で十分。打点の写真だけは毎回残しておく と、1か月後に自分の変化がはっきり見えて楽しいですよ。
- ウォームアップ(5分)
- 打点の見える化(ベビーパウダーやシールを準備)
- ドリル1:ティー2本の門 → 素振り5回+ハーフスイング10球
- ドリル2:頭を止める素振り → 壁10回+素振り10回
- ドリル3:打ち比べ(いつもどおり5球 → 力みを取って5球)
- 最後に、打点の跡をスマホで撮って記録
そして冒頭の約束どおり、1回の練習で直すのは1つだけ。「今日は根元を減らす日」と決めて、それだけを見る。地味ですが、これがいちばん早く変わる進め方です。
打点は「見てもらう」のがいちばん早い
打点の跡は自分でも見られますが、「なぜそこに当たるのか」の原因 までは、自分ではなかなか分かりません。ドリルと並行して一度プロに見てもらうと、遠回りをせずに済みます。
ライザップゴルフ|無料体験レッスン
弾道計測器で打点・ボール初速・ミート率を測り、専属トレーナーがマンツーマンで「なぜそこに当たるのか」を分析。体の動きとスイングの両面から見てくれます。まずは無料体験から。
おわりに
打点の練習は、派手さがありません。ベビーパウダーをはたいて、ティーを2本刺して、ゆっくり振る——それだけです。
でも 自分の当たりを「知っている」人と「知らない」人の差 は、練習を重ねるほど開いていきます。知っている人は、毎回の練習に狙いがあるからです。
次回はシリーズ最終回、第3回・体づくり編。ここで理学療法士の本領を発揮させてください。毎回同じ場所に当てる「再現性」は、筋力ではなく“バランスを支える3つの感覚”で決まる ——そんなお話をします。どうぞお楽しみに。
- 第1回 = 理論編:なぜ「速さ」より先に「当たり」なのか
- 第2回(今回) = 実践編:自分の“芯”を知る3つの方法
- 第3回 = 体づくり編:毎回同じ場所で当てるための「ブレない体」
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。トレーニングの効果には個人差があります。持病のある方や、痛み・不調が続く場合は、自己判断せず医師・専門家にご相談ください。