第1回・第2回で、日米のトップ女子プロ10人の子ども時代を見てきました。始めた年齢は3歳から13歳まで。思っていたより、ずっとばらばらでした。

では、研究ではどうなのでしょうか。最終回は、「早く始めて1つに絞る」のと「いろいろなスポーツをしてから絞る」の、どちらが大人になって伸びるのか。そして、子どもの練習はどのくらいまでなら大丈夫かを見ていきます。

この記事のポイント

✅ 大人になって世界のトップに立った選手ほど、子どものころにいろいろなスポーツをしていて、本命の競技を始めたのは遅めでした

✅ ジュニアのころの成績から、大人になってからの成績はほとんど予想できません

✅ 練習量は「1週間のスポーツの時間は、年齢の数まで」が目安


10人に共通していたこと

まず、10人をふり返ります。

選手 始めた年齢 ほかのスポーツ
古江彩佳 3歳 資料なし
レクシー・トンプソン 4〜5歳ごろ 資料なし
竹田麗央 6歳 資料なし
ネリー・コルダ 6歳 スキー・フィギュアスケート・体操
リリア・ヴー 7歳 資料なし
笹生優花 8歳 資料なし
渋野日向子 8歳(本格的には中学2年) ソフトボール・野球
ローズ・チャン 9歳 水泳・テニス
畑岡奈紗 小学5年 野球・陸上
ダニエル・カン 12〜13歳 テコンドー

※「資料なし」は、していなかったという意味ではなく、報道で確認できなかったという意味です。

共通していたのは、この3つです。

  • 始めた年齢は、そろっていない
  • 入口は、ほとんど家族(親についていく、兄や姉のまね)
  • 最初の先生も、家族が多い

そして10人のうち半分は、ほかのスポーツもしてからゴルフに絞っていました。


研究①:大人のトップほど「いろいろやっていた」

ドイツなどの研究チームが2022年に発表した研究です。これまでに出ている51本の研究をまとめ直し、選手6,096人(そのうち世界のトップ級772人)を分析しました。

わかったのは、こういうことです。

  • 大人になって世界のトップに立った選手は、国内レベルの選手とくらべて、子どものころにほかのスポーツをたくさんしていた。本命の競技を始めたのは遅めで、最初の伸びもゆっくりだった
  • 反対に、ジュニアのころに強かった選手は、本命の競技を早く始めて、そればかり練習していた。最初の伸びも速かった

つまり、「子どものうちに勝つ育ち方」と「大人になって勝つ育ち方」は、ちがっていたのです。

あなた あなた

早く始めて1つに絞ると、子どものうちは強いけれど……ということですか?

Torapon Torapon

そういう傾向が見られた、ということです。ただ、この研究は「そういう選手が多かった」と言っているだけで、「ほかのスポーツをしたから強くなった」とまでは言っていません。それと、ゴルフが含まれているかどうかは、要旨からはわかりませんでした。


研究②:ジュニアの成績は、大人の成績をほとんど予想できない

同じチームが2024年に発表した研究です。オリンピック競技の選手13,392人について、ジュニアのころの成績と、大人になってからの成績を見くらべました。

結果は、大人の成績のちがいのうち、ジュニアの成績で説明できたのは、わずか2.2%。年齢が低いジュニアほど、さらに予想できませんでした。この結果は、競技の種類や男女を問わず同じだったそうです。

同じチームは2025年に、スポーツだけでなく科学者や音楽家、チェスの世界トップの育ち方もまとめています。結論は、「若いうちに突出した人」と「大人になって世界のトップに立った人」は、かなりの部分が別の人たちだったというものでした。

「小学生の大会で勝てないから、才能がない」とは、まったく言えないということですね。


ゴルフの研究:イギリスの若手トップアマ8人

ゴルフだけを調べた研究もあります。2011年にイギリスで、ハンディキャップが0よりも上手な、10代のトップアマチュア男子8人に、どう育ってきたかを聞き取りました。

8人とも、小さいころからゴルフだけに絞ってはいませんでした。いろいろなスポーツを楽しくやっていて、ゴルフに本腰を入れたのは、10代後半に代表チームに選ばれてからでした。

ただし、8人だけ、しかも男子のアマチュアの話です。女子プロゴルファーを直接調べた研究は、今回見つかりませんでした。


子どもの練習は、どのくらいまでなら大丈夫?

ここからは、理学療法士として、いちばんお伝えしたいところです。

アメリカで、7〜18歳の子ども1,190人を調べた研究があります(2015年)。ケガで病院に来た子と、健康診断に来たケガのない子をくらべました。

  • 1つの競技だけを集中して練習していた子は、そうでない子より、ケガをしている割合が約1.3倍、使いすぎによる重いケガは約1.4倍
  • 1週間のスポーツの時間が、自分の年齢の数より多い子(たとえば10歳で、週10時間を超える)は、使いすぎによる重いケガが約2倍
  • コーチがつく練習の時間が、自由に遊ぶ時間の2倍より多い子も、使いすぎによる重いケガが約1.9倍

この研究にゴルフの子がどれくらい含まれているかは、要旨からはわかりません。それでも、「1週間のスポーツの時間は、年齢の数まで」という目安は、どの競技でも覚えやすいと思います。

あなた あなた

ゴルフは走ったりぶつかったりしないから、たくさんやっても大丈夫なんじゃないですか?

Torapon Torapon

そう思われがちなんです。でも、オーストラリアで10代のトップジュニア56人を調べた研究(2026年)では、1年間で約3割の子がケガをしていました。いちばん多かったのは背中の真ん中あたりで、足首や腰がそれに続きます。

同じ方向にひねる動きを何百回もくり返すのがゴルフです。子どもの骨には、まだ伸びている途中のやわらかい部分があります。ゴルフだから安心、とは言えません。

ちなみにこの研究では、練習時間とケガの関係ははっきりしませんでした。ただ、研究した人たち自身が「人数が少なかったせいかもしれない」と書いています。10代のゴルファーのケガを調べた研究は、まだとても少ないのが現状です。

第1回で紹介した笹生選手の練習(重りをつけて毎朝走る・1日12時間)を「まねしないでください」と書いたのは、こうした理由からです。


お子さん・お孫さんにゴルフをさせたい方へ

研究と10人の話から、私が大事だと思うことは3つです。

  1. 早く始めなくても、あせらなくていい。小学5年や12歳で始めて、世界で勝った選手がいます
  2. ほかのスポーツも、やめさせなくていい。野球、水泳、体操。いろいろな体の動かし方は、むだになりません
  3. 練習は「1週間で年齢の数の時間」まで。痛みを口にしたら、まず休ませてください

そして何より、10人に共通していたのは、家族と一緒に、楽しく始めていたことでした。週1回の練習場、空き地の手作りマット、兄や姉のまね。始まりは、どれもささやかなものです。

道具は、子どもの体に合った長さと重さのクラブを選んであげてください。重すぎるクラブは、振るだけで体に負担がかかります。

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ジュニア用ゴルフクラブセット

身長や年齢に合わせて長さと重さを選べる、子ども用のクラブです。最初は数本入りのセットで十分です。体に合った軽いクラブなら、無理な力を入れずに振れます。


おわりに

「早く始めれば勝てるのか?」

10人の話と研究を見るかぎり、答えは「そうとは言えない」でした。大人になって世界のトップに立った選手ほど、むしろいろいろなスポーツをしていて、本命を始めたのは遅めだったのです。

もちろん、研究も10人の話も「そういう人が多かった」というだけで、「こうすれば必ず強くなる」という話ではありません。

それでも、楽しく始めて、体を壊さずに続けること。それが、子どもにとっても大人にとっても、いちばんの近道なのだと思います。


参考にした情報

  • Güllich A, et al. What Makes a Champion? Early Multidisciplinary Practice, Not Early Specialization, Predicts World-Class Performance. Perspectives on Psychological Science. 2022;17(1):6-29.
  • Barth M, et al. Quantifying the Extent to Which Junior Performance Predicts Senior Performance in Olympic Sports. Sports Medicine. 2024;54(1):95-104.
  • Güllich A, et al. Recent discoveries on the acquisition of the highest levels of human performance. Science. 2025;390(6779):eadt7790.
  • Hayman R, et al. The development of elite adolescent golfers. Talent Development & Excellence. 2011;3(2):249-261.
  • Jayanthi NA, et al. Sports-specialized intensive training and the risk of injury in young athletes. American Journal of Sports Medicine. 2015;43(4):794-801.
  • Lee S, et al. Golf-Related Injuries in Young Elite Golfers: A Cross-Sectional Survey Study. Health Science Reports. 2026;9(4):e72333.
  • 選手の情報は、第1回・第2回の「参考にした情報」をご覧ください。

※この記事は公表されている研究の要旨と報道をもとに書いています。お子さんが痛みを訴えるときや、体の成長について心配があるときは、自己判断せず医療機関にご相談ください。