前半は、そこそこ回れた。
なのに14番あたりから、急にダフりはじめる。同じように振っているつもりなのに、球が上がらない。おかしいな、と思いながら18番まで来てしまう。
「集中力が切れたのかな」で片づけていませんか。
私もそう思っていました。ところが2026年、慶應義塾大学のグループが出した研究を読んで、見方が変わりました。技術でも、集中力でもなく、「疲れそのもの」がスイングの形を変えていたのです。
この記事のポイント
✅ お腹まわりの筋肉を疲れさせただけで、スイング中に体を支える力が落ちました。腕も技術も、何も変えていないのにです
✅ しかも疲れは、パターの練習だけでも起きます。「激しく振ったから疲れる」とはかぎりません
✅ だから鍛えたいのは、体幹の「力の強さ」ではなく「持たせる力」です。10秒ずつでいい運動を3つ、最後にご紹介します
体を「動く範囲」から見た話は、こちらの3部作にまとめています。今回は「持久力」の話なので、まったく別の切り口です。 👉 可動域と筋力の3部作(第1回)
目次
- お腹を疲れさせてから、7番アイアンを打ってもらった
- 正直に書いておきたい、この研究の弱いところ
- パターの練習でも、スイングは変わる
- やっかいなのは、疲れが自分では分からないこと
- そして疲れは、腰の痛みの前ぶれかもしれない
- だから鍛えるのは「強さ」ではなく「持たせる力」
- 体幹の持久力を育てる3つの運動
- ラウンド当日にできること
- こんなときは専門家に相談を
- おわりに
- 参考にした情報
お腹を疲れさせてから、7番アイアンを打ってもらった
研究のやり方は、とてもはっきりしています。
健康なゴルファー11人に、まず7番アイアンで打ってもらい、スイングを細かく計測します。そのあとプランク(うつ伏せで前腕とつま先で体を支える、あの運動です)でお腹まわりの筋肉だけを疲れさせて、もう一度同じように打ってもらう。
腕の筋肉は疲れさせていません。クラブも同じ。技術指導も一切なし。変えたのは「お腹が疲れているかどうか」だけです。
それでスイングは変わるのか。変わりました。
研究チームが測ったのは、スイングのあいだに上半身が前後へ倒れたり起きたりする振れ幅です。同じ人の、疲れる前と疲れたあとを比べています。
| 上半身が前後に動いた振れ幅 | |
|---|---|
| 疲れる前 | 43.4度 |
| 疲れたあと | 47.9度 |
約4.5度ぶん、ブレが大きくなりました。 統計的にも、偶然とは考えにくい差でした。
4.5度と言われても、大きいのか小さいのか分かりません……。
そうですよね。順番にお話しします。まず、この4.5度というのは「上半身が前後に傾く角度」のことです。疲れる前より、上半身が4.5度ぶん余分に動いてしまった、ということですね。
上半身が4.5度動くと、どうなるんですか?
腰を支点にして上半身が4.5度傾くと、いちばん上にある頭は、5〜6センチ動きます(腰から頭までを70センチほどとして計算した、おおよその目安です)。
ゴルフでは、頭の高さが変わると、クラブが地面に当たる場所も変わります。5センチ動けば、ダフリやトップが出てもおかしくありません。「同じように振っているのに当たらない」の正体は、これかもしれないわけですね。
ただし、ここも正直に書いておきます。人による差はかなり大きく(プラスマイナス13度前後)、全員が同じだけブレたわけではありません。
さらに、下半身のかたさにも変化が出ていました。 お腹が疲れると、その分を脚が肩代わりしようとするのだと考えられます。
ここが大事なところです。疲れているのはお腹なのに、変わるのは体全体。 上から下まで、つながっているのですね。
正直に書いておきたい、この研究の弱いところ
先に書いておきます。この研究、参加者は11人だけです。しかも平均20歳の若い方たち。
ですから「ゴルファー全員がこうなる」と言い切れる段階ではありません。「そういう傾向がありそうだ」と分かった段階、というのが正確なところです。
それでも私がこの研究を取り上げたいと思ったのは、やり方がきれいだからです。疲れ以外の条件をすべてそろえたうえで比べているので、「疲れがスイングを変えた」という筋道が、はっきり見えます。
パターの練習でも、スイングは変わる
「じゃあ、後半バテないように体力をつければいいんだな」
そう思われたかもしれません。ただ、話はもう少し込み入っています。
熟練した男性ゴルファーを対象にした別の研究で、こんなことが分かっています。パターの練習をしたあとにフルスイングを計測したところ、
- 体の各部位が動くスピードのピークが落ちた
- スイング全体にかかる時間が長くなった
- ダウンスイングでの骨盤と胸のひねりの量が減った
パターです。走ったわけでも、100球打ったわけでもありません。
パターで疲れるんですか? いちばん楽そうなのに……。
これ、意外ですよね。でも考えてみてください。パターのとき、前かがみの姿勢のまま、じっと止まっているでしょう。動かないぶん、背中とお腹の筋肉はずっと働きっぱなしなんです。疲れとは「激しく動くこと」だけで起きるものではない、ということですね。
ラウンドの時間を思い返してみてください。グリーン上で構えている時間、アドレスで止まっている時間、傾斜地で踏ん張っている時間。動いていない時間にも、体幹はずっと仕事をしています。
やっかいなのは、疲れが自分では分からないこと
もうひとつ、気になる報告があります。
男性ゴルファー14人に練習セッションをしてもらい、その前後で背中の筋肉(背骨に沿って走る筋肉です)の使い方を比べた研究です。結果は、スイング中の筋肉の使い方に、はっきりした差は出ませんでした。
一見すると「じゃあ大丈夫じゃないか」と読めます。でも私は、逆に受け取りました。
体は疲れているのに、表向きの動きにはすぐ出てこない。 つまり、自分では気づけないということです。
「まだいける」と思っているときには、すでに支える力が落ちはじめている可能性がある。ミスが出て初めて気づく。だから「集中力が切れた」と感じるのだと思います。
そして疲れは、腰の痛みの前ぶれかもしれない
ここからは、理学療法士としていちばんお伝えしたいところです。
若い一流ゴルファー33人を、6か月にわたって追いかけた調査があります。全員、最初は腰に問題のない人たちでした。
結果、17人が腰痛を起こしました。半分以上です。
そして、あとから振り返ると、腰痛になった人たちには最初から特徴がありました。 スイング中に、利き側のお腹の表面の筋肉や、背中の大きな筋肉をより強く使っていたのです。
これは私の見立てですが、深いところで支える力が足りないぶんを、表面の大きな筋肉でごまかしていたのだと思います。力任せに固めて振る。そのやり方は、しばらくは通用します。でも、体の負担は静かに積み重なっていきます。
疲れてくると、誰でもこの「ごまかす振り方」に寄っていきます。後半のスイングの崩れと、腰の痛みは、地続きの話なのです。
最近、ラウンドの翌日に腰が張るんですが、これも関係ありますか?
可能性はあります。ただ、痛みの原因はひとつではありませんので、続くようなら自己判断せず整形外科で診てもらってください。そのうえで、後半の崩れと腰の張りが両方ある方は、体幹の持久力を見直す価値が大きいとは言えます。
だから鍛えるのは「強さ」ではなく「持たせる力」
ここまでの話をつなげると、必要なものが見えてきます。
重いものを持ち上げる力ではありません。 4時間、同じ姿勢を保ち続ける力。それが体幹の持久力です。
腰の研究の世界では、背中の筋肉の持久力が低い人ほど、その後に初めての腰痛を起こしやすかったという古典的な報告があります(1984年・デンマーク)。40年以上前の研究で、その後「そこまで単純ではない」という指摘も出ていますが、持久力に目を向けさせたという点で、いまも語り継がれている報告です。
ですから、これからご紹介する運動は、きつくありません。 10秒ずつです。息が上がるようなことは一つもしません。
そのかわり、毎日やることをおすすめします。
体幹の持久力を育てる3つの運動
背骨の研究で知られるスチュアート・マッギル博士(カナダ)が提唱した3つの運動を、ゴルファー向けに整理しました。腰にやさしく、深いところの筋肉(腹横筋・多裂筋といいます)を働かせるのが特徴です。
やり方は3つとも共通です。
共通のルール
・1回のキープは10秒。長くしないでください ・呼吸は止めない。10秒のあいだ、浅く吸って吐いてを続けます ・回数は5回 → 3回 → 1回と減らしていきます(これで1セット) ・痛みが出たらすぐ中止。「効いている感じ」と「痛み」は別物です
① カールアップ(腰を反らせない腹筋)
- あおむけになり、片ひざだけを立てます。もう片方の脚はまっすぐ伸ばしたまま
- 両手を腰の下に差し込みます(手のひらを下にして、腰のすき間を埋めるように)
- 頭と肩をほんの少しだけ床から浮かせます。あごを引かず、目線は天井のまま
- その高さで10秒キープ。呼吸は続けます
- 5回 → 3回 → 1回。立てるひざを左右入れかえて、反対もやります

ふつうの腹筋運動とは別物です。 起き上がりません。浮かせるのは指2本分ほどで十分です。腰の下に手を入れるのは、腰を反らせないための工夫です。
② サイドブリッジ(横向きで支える)
- 横向きに寝て、下側のひじを肩の真下につきます
- ひざを曲げたまま、ひざから頭までを一直線にして腰を持ち上げます
- 10秒キープ。体が前や後ろに倒れないように
- 5回 → 3回 → 1回。反対側も同じように

この運動が、いちばんゴルフに近いと私は思っています。スイング中、体は横方向のブレとも戦っているからです。慣れてきたら、ひざを伸ばしてつま先で支える形に進めます。
③ バードドッグ(四つんばいで対角に伸ばす)
- 四つんばいになります。手は肩の真下、ひざは股関節の真下
- 片方の手と、その反対側の脚を、床と平行になるところまでゆっくり伸ばします
- お腹に軽く力を入れ、腰を反らせないまま10秒キープ
- 5回 → 3回 → 1回。反対の組み合わせも同じように

背骨のすぐそばにある多裂筋という、いちばん深い筋肉に働いてもらう運動です。腰が反ったり、お尻が横に流れたりしないことが何より大切です。うまくできているか分からないときは、腰に本を1冊のせて、落ちないようにやってみてください。
🧘 床が痛いと、続きません
3つとも床で行う運動です。フローリングに直接寝ると、背中やひじが当たって痛くなります。 「効かないからやめた」のではなく「痛いからやめた」になってしまうのは、もったいない話です。
厚みのあるマットが1枚あるだけで、続けやすさがずいぶん変わります。
GronG(グロング) ヨガマット 厚さ10mm
厚さ10mm、180cm×60cm。寝転んでも体がはみ出さない大きさです。背中やひじが当たっても痛くならないので、10秒キープに集中できます。使わないときは丸めて収納袋へ。部屋の隅に立てておけるので、場所もとりません。
3つで何分くらいかかりますか?
5分もかかりません。 朝、顔を洗う前でも大丈夫です。むしろ朝のうちにやっておくと、その日一日、体を支えるスイッチが入った状態で過ごせます。長くやるより、短く毎日。これがいちばん効きます。
※腰や首に持病のある方、痛みのある方は、始める前に必ず主治医にご相談ください。
ラウンド当日にできること
トレーニングとは別に、当日の工夫でも差が出ます。
- 後半に入る前に、一度リセットする……昼食後に立ち上がったら、その場で背伸びを一つ。座りっぱなしのあとは、支える筋肉がいちばんサボっています
- アドレスで固まりすぎない……構えて長く止まるほど、体幹は消耗します。迷ったらいったん立ち上がって、構え直したほうが結果的に楽です
- カートでも、たまに歩く……ずっと座っていると、後半に立ち上がったときの支えが効きにくくなります
- 後半にミスが出たら「疲れのサイン」と考える……そこでスイングをいじると、たいてい深みにはまります。振り方ではなく、リズムをゆっくりにするほうが立て直しやすいです
ラウンド翌日のケアについては、こちらにまとめています。 👉 ラウンド翌日の疲れをやわらげるクールダウン
こんなときは専門家に相談を
次のような場合は、トレーニングより先に受診をおすすめします。
- 腰やお尻の痛みが2週間以上続いている
- 脚にしびれや力の入りにくさがある
- 夜、痛みで目が覚める
- 運動をすると、そのたびに痛みが強くなる
ゴルフを長く続けるために、痛みを我慢しないことがいちばんの近道です。
おわりに
「後半に崩れるのは、集中力がないからだ」
長いあいだ、そう言われてきました。でも今回の研究が示したのは、もっと素朴なことです。お腹が疲れると、体は支えきれなくなる。 それだけです。
11人の小さな研究ですから、これで結論が出たわけではありません。ただ、思い当たるふしのある方は、多いのではないでしょうか。
うれしいのは、打ち込む練習をしなくても手が打てるということです。10秒を、5回・3回・1回。朝の5分で、後半の3ホールが変わるかもしれません。
まずは1週間、続けてみてください。
参考にした情報
- Hakukawa S, Harato K ほか(慶應義塾大学)「Trunk Muscle Fatigue Alters Swing Kinematics and Lower Limb Stiffness in Golfers」Applied Bionics and Biomechanics 2026年(DOI: 10.1155/abb/6082201)
- 「Swing kinematics in skilled male golfers following putting practice」Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy 2008年
- 「Comparison of Thoracic and Lumbar Erector Spinae Muscle Activation Before and After a Golf Practice Session」Journal of Applied Biomechanics 2017年;33(4)
- 「Increased trunk muscle recruitment during the golf swing is linked to developing lower back pain: A prospective longitudinal cohort study」Journal of Electromyography and Kinesiology 2022年
- Biering-Sørensen F.「Physical measurements as risk indicators for low-back trouble over a one-year period」Spine 1984年
- 運動の組み立ては、Stuart McGill 博士(ウォータールー大学名誉教授)が提唱した3種目(カールアップ/サイドブリッジ/バードドッグ)にもとづいています
※この記事は、公表されている研究をもとに、ゴルファー向けにやさしく言い換えたものです。痛みや不調があるときは、自己判断せず医療機関にご相談ください。