ゴルフバッグを置いて、ダンベルを手に取るシニアゴルファーのイラスト

数字はよかった。それでも「効いた」とは言えなかった 〜5,074人を4年追った、ゴルフと認知症の研究〜

姉妹サイトの健康ブログで、少し前にこんな記事を書きました。 「ゴルフを続けている人は、認知機能が下がっていた割合が低かった」(4,575人の研究)。 書いた本人としては、うれしい結果でした。ゴルフを続ける理由が、また一つ増えたと思ったからです。 ところがその直後に、日本から別の研究が出ました。5,074人を4年間追いかけた研究です。そこでは、ゴルフをしている人のほうが認知症になりにくい、とは言い切れませんでした。 正直に言うと、最初にこの結果を見たときは困りました。でも中身をよく読んでいくと、困るどころか、いちばん勉強になる論文でした。今日はそれを、数字ごと共有します。 この記事のポイント ✅ 生の数字では、ゴルフをしている人の認知症は2.5%。何もしていない人の10.9%より、はっきり低いところにいました ✅ ところが年齢や学歴などの条件をそろえて計算し直すと 0.48 になりました。これは「何も運動していない人を1.00としたとき、ゴルフをしている人は0.48」という意味です。ただし答えのありうる幅が0.22〜1.04で、上が1.00を超えているため、「変わらない」可能性も消せませんでした ✅ 最後まで残ったのは ゲートボールと筋力トレーニング の2つ。ただし筋トレのほうは、筋トレをしていた193人のうち、認知症になったのが3人だけという、とても少ない人数の上に立った数字です 目次 どんな研究だったのか この記事に出てくる数字の読み方 生の数字を、まず見てください なぜ「効いた」と言えなかったのか 筋トレの数字も、同じ弱さを持っています それでも、持ち帰れること ゴルフに、何を足すか 前回の記事との答え合わせ おわりに どんな研究だったのか 筑波大学などのグループが、2026年8月に『Geriatrics & Gerontology International』という老年医学の専門誌に発表した研究です。 対象は 茨城県笠間市に住む65歳以上の5,074人 平均年齢は 73.0歳、女性が52.3% 2017年に「どんな運動をしていますか」と郵送で調査 そこから 4年間 追いかけて、認知症になったかどうかを調べた 期間中に 430人(8.5%) が認知症になった 聞いた運動は17種類。そのうち 参加者が150人以上いた5種類(体操・ウォーキング・ゲートボール・ゴルフ・筋力トレーニング)を、何も運動していない人たちと比べています。 ここが大事なところで、比較の相手は「運動していない人」 です。「ゴルフとウォーキング、どっちが上か」を比べた研究ではありません。 この記事に出てくる数字の読み方 ここから「0.48」のような数字が出てきます。3つだけ覚えていただければ、あとは全部読めます。 ① 1.00が「何もしていない人と同じ」という意味 何も運動していない人を1.00として、その運動をしている人が認知症になりやすいかどうかを並べた数字です。1.00より小さいほど、なりにくい。0.50なら「なりやすさが半分」、0.25なら「4分の1」ということになります。 ② カッコの中は「答えのありそうな範囲」 たとえば0.48(0.22〜1.04)と書いてあったら、本当のところは0.22から1.04のどこかにありそう、という意味です。ぴったり0.48だと分かったわけではありません。 ③ その範囲が1.00をまたいでいたら「判定できず」 範囲の中に1.00が入っているということは、「何もしていない人と同じかもしれない」という可能性が残っているということです。そのため「効いた」とは言い切れない、という扱いになります。 そして、この範囲の広さを決めているのが 認知症になった人の数 です。その人数が少ないほど範囲は広がり、1.00をまたぎやすくなります。 ここが、今日いちばんの山場です。 生の数字を、まず見てください 統計の話に入る前に、手を加えていない生の数字を見ていただきます。 運動の種類 人数 認知症になった人 割合 何もしていない 1,954人 212人 10.9% 体操 2,357人 177人 7.5% ウォーキング 1,559人 105人 6.7% ゲートボール 385人 29人 7.5% ゴルフ 283人 7人 2.5% 筋力トレーニング 193人 3人 1.6% いかがでしょうか。 ...

August 23, 2026 · 2 分
練習場ではなくジムでトレーニングをするゴルファーのイラスト

プロは、すでにやっていた 〜101人の調査でわかった、コースの外の過ごし方〜

前回の記事で、こう書きました。 ゴルフは、歩いて・考えて・人と話す運動。足りていないとすれば、筋肉にしっかり力を出させる場面のほうかもしれない。 前回の記事はこちらです。 👉 数字はよかった。それでも「効いた」とは言えなかった 〜5,074人を4年追った、ゴルフと認知症の研究〜 書き終えてから、ふと思いました。では、本気でゴルフをやっている人たちは、実際どうしているのだろう。 練習場やコースの様子はよく目にしますが、その外で何をしているかは、あまり知られていません。 ちょうど、それを調べた調査がありました。アメリカの Hospital for Special Surgery(スポーツ整形で有名な病院です)のグループが、大学のトップ選手とツアープロ、合わせて101人に「コースの外で何をしているか」を聞いた調査です。2026年5月、リハビリテーション医学の専門誌『PM&R』に載りました。 結論から言うと、特別な裏技は、ひとつも出てきませんでした。 この記事のポイント ✅ 86.1%が、ゴルフのための筋トレをしていました。頻度は週2.9日。「打つ練習」とは別に、体をつくる時間を持っています ✅ スイングコーチ78.2%、トレーナー71.3%、スポーツ心理士が約半数。誰も一人でやっていません ✅ 意外だったのが睡眠。ツアープロのほうが、大学生より「6時間未満」の人が多い。そして、だからこそ睡眠の専門家に相談していました 目次 101人に、コースの外のことを聞いた ほとんどが、筋トレをしていた 誰も、一人でやっていない 3人に2人が、食事を変えている ツアープロほど、眠れていなかった ここは、正直に 私たちが真似できること おわりに 101人に、コースの外のことを聞いた まず、どんな人たちに聞いた調査なのかを押さえておきます。 101人(大学の競技者56人、ツアープロ45人) 平均年齢 25±8歳、男性が55% 競技歴は平均 4.1±3.5年 インターネットでのアンケート調査 平均25歳です。 私たちの多くとは、年齢も体力も違います。そのままそっくり真似できる内容ではありません。それでも読む価値があるのは、出てきた項目が、どれも特別なものではなかったからです。 ほとんどが、筋トレをしていた いちばん知りたかったところから。 101人のうち86.1%が、ゴルフのための筋力トレーニングをしていました。頻度は週2.9±2.0日です。 数字にすると、10人のうち8〜9人。やっていないほうが少数派ということになります。 そして頻度の「週2.9日」も、注目していただきたいところです。毎日ではありません。 週3回前後。これは、私たちがリハビリの現場で高齢の方にお願いする頻度と、ほとんど同じです。 あなた プロだから毎日みっちりやっているのかと思っていました。 Torapon 筋肉は、負荷をかけた後の休みの間に強くなります。だから毎日やればいいというものではないんです。週2〜3回というのは、プロでもアマチュアでも、高齢の方でも変わらない目安です。ここは安心して真似できるところですね。 前回の記事でご紹介した、日本の5,074人の研究で最後まで残ったのが筋力トレーニングでした。飛距離のためにも、体を長持ちさせるためにも、頭のためにも、同じところを指している。 私はここに、いちばん納得しました。 誰も、一人でやっていない 次の数字が、個人的にはいちばん考えさせられました。 誰と組んでいるか 割合 スイングコーチ 78.2% アスレティックトレーナー 71.3% スポーツ心理士 約50% 栄養の専門家 41.1% 睡眠の専門家 23.7% ほぼ全員が、誰かに見てもらっています。 スイングだけではありません。体、心、食事、睡眠。それぞれに専門の人がついているというのが、トップの世界の姿でした。 アマチュアの私たちが、これを全部そろえるのは現実的ではありません。ただ、「自分の目だけでは見えないものがある」という前提は、真似できると思います。 自分のスイングを自分で見ることはできません。自分の体の左右差も、自分では分かりません。一度でいいので、誰かに見てもらう。 それだけで、何年も直らなかったことが5分で分かる、ということが本当にあります。 ...

August 24, 2026 · 1 分
ラウンド後半、疲れた様子でクラブを構えるゴルファーのイラスト

後半に崩れるのは、気のせいじゃなかった 〜お腹を疲れさせるだけでスイングが変わった、という研究〜

前半は、そこそこ回れた。 なのに14番あたりから、急にダフりはじめる。同じように振っているつもりなのに、球が上がらない。おかしいな、と思いながら18番まで来てしまう。 「集中力が切れたのかな」で片づけていませんか。 私もそう思っていました。ところが2026年、慶應義塾大学のグループが出した研究を読んで、見方が変わりました。技術でも、集中力でもなく、「疲れそのもの」がスイングの形を変えていたのです。 この記事のポイント ✅ お腹まわりの筋肉を疲れさせただけで、スイング中に体を支える力が落ちました。腕も技術も、何も変えていないのにです ✅ しかも疲れは、パターの練習だけでも起きます。「激しく振ったから疲れる」とはかぎりません ✅ だから鍛えたいのは、体幹の「力の強さ」ではなく「持たせる力」です。10秒ずつでいい運動を3つ、最後にご紹介します 体を「動く範囲」から見た話は、こちらの3部作にまとめています。今回は「持久力」の話なので、まったく別の切り口です。 👉 可動域と筋力の3部作(第1回) 目次 お腹を疲れさせてから、7番アイアンを打ってもらった 正直に書いておきたい、この研究の弱いところ パターの練習でも、スイングは変わる やっかいなのは、疲れが自分では分からないこと そして疲れは、腰の痛みの前ぶれかもしれない だから鍛えるのは「強さ」ではなく「持たせる力」 体幹の持久力を育てる3つの運動 ラウンド当日にできること こんなときは専門家に相談を おわりに 参考にした情報 お腹を疲れさせてから、7番アイアンを打ってもらった 研究のやり方は、とてもはっきりしています。 健康なゴルファー11人に、まず7番アイアンで打ってもらい、スイングを細かく計測します。そのあとプランク(うつ伏せで前腕とつま先で体を支える、あの運動です)でお腹まわりの筋肉だけを疲れさせて、もう一度同じように打ってもらう。 腕の筋肉は疲れさせていません。クラブも同じ。技術指導も一切なし。変えたのは「お腹が疲れているかどうか」だけです。 それでスイングは変わるのか。変わりました。 研究チームが測ったのは、スイングのあいだに上半身が前後へ倒れたり起きたりする振れ幅です。同じ人の、疲れる前と疲れたあとを比べています。 上半身が前後に動いた振れ幅 疲れる前 43.4度 疲れたあと 47.9度 約4.5度ぶん、ブレが大きくなりました。 統計的にも、偶然とは考えにくい差でした。 あなた 4.5度と言われても、大きいのか小さいのか分かりません……。 Torapon そうですよね。順番にお話しします。まず、この4.5度というのは「上半身が前後に傾く角度」のことです。疲れる前より、上半身が4.5度ぶん余分に動いてしまった、ということですね。 あなた 上半身が4.5度動くと、どうなるんですか? Torapon 腰を支点にして上半身が4.5度傾くと、いちばん上にある頭は、5〜6センチ動きます(腰から頭までを70センチほどとして計算した、おおよその目安です)。 ゴルフでは、頭の高さが変わると、クラブが地面に当たる場所も変わります。5センチ動けば、ダフリやトップが出てもおかしくありません。「同じように振っているのに当たらない」の正体は、これかもしれないわけですね。 ただし、ここも正直に書いておきます。人による差はかなり大きく(プラスマイナス13度前後)、全員が同じだけブレたわけではありません。 さらに、下半身のかたさにも変化が出ていました。 お腹が疲れると、その分を脚が肩代わりしようとするのだと考えられます。 ここが大事なところです。疲れているのはお腹なのに、変わるのは体全体。 上から下まで、つながっているのですね。 正直に書いておきたい、この研究の弱いところ 先に書いておきます。この研究、参加者は11人だけです。しかも平均20歳の若い方たち。 ですから「ゴルファー全員がこうなる」と言い切れる段階ではありません。「そういう傾向がありそうだ」と分かった段階、というのが正確なところです。 それでも私がこの研究を取り上げたいと思ったのは、やり方がきれいだからです。疲れ以外の条件をすべてそろえたうえで比べているので、「疲れがスイングを変えた」という筋道が、はっきり見えます。 パターの練習でも、スイングは変わる 「じゃあ、後半バテないように体力をつければいいんだな」 そう思われたかもしれません。ただ、話はもう少し込み入っています。 熟練した男性ゴルファーを対象にした別の研究で、こんなことが分かっています。パターの練習をしたあとにフルスイングを計測したところ、 体の各部位が動くスピードのピークが落ちた スイング全体にかかる時間が長くなった ダウンスイングでの骨盤と胸のひねりの量が減った パターです。走ったわけでも、100球打ったわけでもありません。 あなた パターで疲れるんですか? いちばん楽そうなのに……。 Torapon これ、意外ですよね。でも考えてみてください。パターのとき、前かがみの姿勢のまま、じっと止まっているでしょう。動かないぶん、背中とお腹の筋肉はずっと働きっぱなしなんです。疲れとは「激しく動くこと」だけで起きるものではない、ということですね。 ...

August 26, 2026 · 2 分
手術を終えた中高年ゴルファーが、練習グリーンでゆっくりパターを打っているイラスト

肩を手術したら、もうゴルフは無理ですか 〜208人が答えた「戻れた割合」と、戻る順番〜

「先生、私はもうゴルフはできませんか」 肩の手術を前にした方が、いちばん聞きたくて、いちばん聞きづらいのが、この質問ではないでしょうか。痛みは取りたい。でも、ゴルフをあきらめるくらいなら我慢する。そう考えて手術に踏み切れずにいる方は、決して少なくないと思います。 この質問には、実はもう答えが出ています。2026年に、肩の人工関節の手術を受けたゴルファー208人を調べた研究が出ました。 この記事のポイント ✅ 肩の人工関節の手術を受けたゴルファー208人のうち、88.9%がゴルフに戻っていました。そのうち約8割は、手術前と同じかそれ以上のレベルです ✅ 戻る順番には決まった形があります。パター → アプローチ → ドライバー。全部そろうまで、だいたい半年から1年です ✅ ただし、学会が決めた復帰の目安は、まだ世界のどこにもありません。だから最終的な判断は、あなたを手術した先生にしかできません 手術ではなく、いまの肩の痛みをどうするかについては、こちらにまとめています。 👉 ゴルフで肩が痛い方へ 目次 208人のうち、185人が戻っていた 正直に書いておきたい、この数字の限界 戻る順番は、パター → アプローチ → ドライバー 人工関節には2つの種類があります 腱板を縫った場合はどうなるか いちばん戻りにくいのは「背中に手を回す動き」 学会が決めた目安は、まだありません ここからは、私の想像です 戻るときに気をつけたい5つのこと おわりに 参考にした情報 208人のうち、185人が戻っていた アメリカ肩肘外科学会(ASES)の研究グループが、17の施設から集めたデータです。 対象は、肩の人工関節の手術を受けた人のうち、ゴルフをしていると答えた208人。平均年齢は69歳、約8割が男性。手術から平均で2年ほど経った時点で調べています。 結果はこうでした。 人数 割合 ゴルフに戻れた 185人 88.9% そのうち、手術前と同じかそれ以上のレベル 165人 79.3% さらに、いつ戻れたかも分かっています。 3〜6か月で戻った人……46.8% 7〜12か月で戻った人……31.7% つまり、8割近くの人が1年以内に戻っているということです。 あなた 思っていたよりずっと多いです。半分くらいかと思っていました。 Torapon 私も最初にこの数字を見たとき、同じことを思いました。肩の人工関節は「痛みを取る手術」で、動きは戻りきらないものという印象が、医療者のあいだにも根強くあるんです。 ただし、あとで書きますが、この88.9%という数字には読み方のコツがあります。そこも正直にお伝えしますね。 正直に書いておきたい、この数字の限界 先に書いておきます。この88.9%を、そのまま自分に当てはめないでください。 理由は2つあります。 ひとつめ。これはアンケートの研究です。 何人に配って何人が答えたのか、公開されている情報からは分かりません。一般に、こういうアンケートではうまくいった人のほうが答えてくれやすいことが知られています。実際、あとで紹介する腱板の研究では、633人に配って答えたのは197人だけでした。 ですから正確に言えば、「答えてくれた208人のなかでは、88.9%が戻っていた」となります。 ふたつめ。もともとゴルフをしていた人だけの数字です。 肩を手術した人みんなの話ではありません。手術の前からゴルフを続けていて、戻りたいと思っていた人たちが対象です。「戻りたい人が、どのくらい戻れるか」の目安、と考えてください。 それでも私は、この数字には意味があると思っています。「手術したら終わり」ではないことを、17施設・208人という規模ではっきり示したからです。 戻る順番は、パター → アプローチ → ドライバー もうひとつ、実際に役に立つ研究があります。アメリカ・オレゴンの施設で、肩の手術を受けたゴルファー71人を調べたものです。 ...

September 5, 2026 · 2 分
同じティーグラウンドに立つ男性ゴルファーと女性ゴルファーのイラスト

体はやわらかいのに、なぜ飛ばないのか 〜男女29人を測って見えた、本当の差〜

「私、体はやわらかいほうなんです。なのに飛ばないんです」 女性のアマチュアゴルファーから、こんな相談を受けたことがあります。 たしかに、一般に女性のほうが体はやわらかい。前屈もできる。開脚もできる。それなのに、同じくらいの腕前の男性より飛ばない。 やわらかさが足りないのではなく、やわらかさの向きが違った。2026年に出た研究を読んで、私はそう考えるようになりました。 この記事のポイント ✅ 同じ腕前の男女29人を細かく測ったところ、女性が柔らかかったのは13の検査のうち3つだけ。しかもゴルフにいちばん効く「ねじる方向」は、男女で差がありませんでした ✅ 差がついていたのは、地面を「素早く」押す力と、ダウンスイングで骨盤と体を加速させる力でした ✅ プロの世界では、女子のコースは男子の約90%の長さ。でも女子の飛距離は男子の約86%。つまり女性のほうが、相対的に長いコースを戦っています 「回す」ための体づくりについては、3部作にまとめています。今回はその続きにあたる話です。 👉 回すのは腰ではなかった(可動域と筋力・第1回) 目次 同じハンデの男女29人を、まるごと測った 女性が柔らかかったのは、13のうち3つだけ そして「効く方向」の柔らかさは、同じだった 差がついたのは「速さ」だった 正直に書いておきたい、この研究の弱いところ プロの世界では、コースのほうに問題があった 現場で見てきたこと では、何をすればいいのか おわりに 参考にした情報 同じハンデの男女29人を、まるごと測った ニューヨークのスポーツ医学研究所(NISMAT)が行った研究です。 集めたのは、腕前の高い男性13人と女性16人。ここが大事なところで、両者のハンディキャップに差はありませんでした。年齢にも差はありません。 つまり「同じくらい上手な男女」を比べています。 そのうえで、次のものを全部測りました。 柔軟性……13種類の検査(前後の方向4つ、横の方向4つ、ねじる方向5つ) 筋力……肩6項目、股関節5項目 スイングの動き……骨盤と体の角度・速さ・加速 足が地面を押す力……床に埋めた測定板で、左右別々に 結果……レーダー式の計測器で、ヘッドスピード・ボール初速・飛距離 結果、ヘッドスピードもボール初速も飛距離も、男性が上でした。 ハンディキャップは同じなのに、です。 あなた 同じ腕前なのに、飛距離だけ違うんですか? Torapon そこがこの研究の面白いところなんです。飛ばないぶんを、別のところで取り返して同じスコアになっているわけですね。 あとで出てきますが、女性は方向性でお返ししています。プロの数字を見ると、それがはっきり出ています。 女性が柔らかかったのは、13のうち3つだけ さて、柔軟性です。 「女性のほうが柔らかい」。これは半分あたっていて、半分は違いました。 柔軟性の検査 どんな動きか 結果 前後の方向(4種類) 前屈や後屈のように、体を前後に曲げ伸ばしする動き 1つだけ女性が柔らかい 横の方向(4種類) 開脚や体を横に倒すように、左右に広げる動き 2つ女性が柔らかい ねじる方向(5種類) 股関節や肩、体を軸まわりにひねる動き すべて男女差なし ※どの検査をどう行ったかまでは、論文が有料のため確認できませんでした。ここでは「どの方向の動きか」だけをご紹介しています。 13の検査のうち、女性が上回ったのは3つだけでした。 そして、いちばん大事なところ。ねじる方向は、5つすべてで差がありませんでした。 そして「効く方向」の柔らかさは、同じだった なぜ、ねじる方向が大事なのか。 同じ研究グループが、2022年にこんな結果を出しています。 ゴルフの上手さと関係していたのは、ねじる方向の柔らかさだけでした。前後の柔らかさも、横の柔らかさも、上手さとは関係がありませんでした。 さらに、股関節のねじる方向の柔らかさだけで、ボール初速のばらつきの48%、飛距離のばらつきの45%を説明できたと報告しています。 ここを、今回の結果と重ねてみてください。 女性が余分に持っていた柔らかさ=前後と横=ゴルフの上手さとは関係が薄い方向 ゴルフに効く柔らかさ=ねじる方向=男女で差がなかった あなた じゃあ、開脚が得意でも意味がないということですか……。 Torapon ゴルフの飛距離という一点では、そうかもしれません。 ただ、開脚や前屈が無駄という話ではないんです。腰やひざを守るうえでは、どちらも大切です。 ...

September 7, 2026 · 2 分
練習場で、アイアンのシャフトを目の前にかざし、じっと見つめる男性のイラスト

シャフトが変えていたのは、飛距離ではなかった 〜シャフト選びの科学(第2回・体編)〜

前回のおさらい 第1回では、シャフトの「しなり戻り」の話を実測データで見ていきました。 結論はこうでした。シャフトの硬さを変えても、ヘッドスピードはほとんど変わりませんでした。 そして「しなりが戻る勢いでボールを弾き飛ばす」という説明にも、測定の裏づけは見つかりませんでした。シャフトはたしかにしなりますが、そのしなりが飛距離を生んでいる、という筋道は確かめられなかったのです。 👉 第1回・飛距離編はこちら そうなると、当然の疑問が残ります。 では、シャフトはいったい何を変えているのでしょうか。 今回はそこを、見つかった研究だけを使って正直に見ていきます。先に結論を書いておきます。シャフトが変えていたのは「飛距離」ではなく、「当たり方(フェースの向き)」と「体への負担」でした。 この記事のポイント ✅ シャフトのねじれやすさを変えると、インパクトでフェースの向きが変わり、ボールの落ちる場所が右にずれました(40名の研究) ✅ 72グラムのカーボン と 101グラムのスチール を比べると、前腕の筋肉の働き方が違いました。ただし飛距離は同じでした ✅ 打ち手は無意識に力の入れ方を変えて、体のほうがシャフトに合わせていました。合わせる手がかりは、関節や筋肉から届く感覚です 先に、統計の言葉をひとつだけ この記事には「有意(ゆうい)」という言葉と、p=0.028 のような数字が出てきます。ここで一度だけ説明しておきます。 「有意」とは、「たまたまでは説明しにくい、はっきりした違いがあった」という意味です。 p のうしろの数字が小さいほど、偶然では説明しにくくなります。0.05より小さければ「有意」とみなす のが慣習です。 ただし、これは「違いが大きい」という意味ではありません。「違いが偶然ではなさそうだ」というだけ です。ここを混同すると、研究の読み方をまちがえます。 ① ねじれやすさは「方向」に効いていた まず取り上げたいのは、シャフトのトルク(=シャフトのねじれやすさのこと。ねじれやすいほど数字が大きくなります)の研究です。 40名のゴルファーを対象にした研究(MacKenzie ら、2018年)で、ねじれやすいシャフト と ねじれにくいシャフト を打ち比べてもらいました。すると、ねじれやすいシャフトのほうで、次の3つが起きていました。 インパクトでのロフト(フェースの上向き加減)が増えた(p=0.028) インパクトでフェースがはっきり開いた(p<0.001) ボールの落下地点が、有意に右にずれた(p=0.002) ここで大事なのは、この3つはどれも飛距離の話ではない ということです。変わったのは「どこへ飛ぶか」でした。 さらに、この研究では40名のうち25名は、一人ひとりで見ても、シャフトのねじれやしなりによるフェースの開きが、ねじれやすいシャフトのほうで有意に大きくなっていました。平均だけでなく、一人ひとりでも違いが確認できたということです。 なお、シャフトがどれだけねじれたかは直接測っておらず、ほかの測定値から「ねじれによるものだろう」と研究チームが推定しています。 あなた 右に出るのはスイングのせいだと思って、ずっと直そうとしていました。 Torapon そこはご自身を責めなくていいと思います。この研究が言っているのは、シャフトのねじれやすさが変わるだけで、フェースの向きは変わりうる ということです。もちろんスイングの影響もありますが、道具の側にも理由がありうる 。まずはその可能性を知っておいてください。 ただし正直に書いておくと、これは1本の研究です。 他の研究で同じ結果が繰り返し出ているところまでは確認できませんでした。「そういう報告がある」という受け止め方が、いまのところ正確です。 ② シャフトを替えると、前腕の筋肉の働きが変わった ここからが、私がいちばん書きたかったところです。 2026年に発表された研究(Grieß D ら、BMC Musculoskeletal Disorders)を見ていきます。参加したのは40名、平均51歳、平均ハンディキャップ16 のゴルファーです。 比べたのは、この2本でした。 重さ ねじれやすさ(トルク) カーボンシャフト 72グラム 2.1 スチールシャフト 101グラム 1.8 そして測ったのが筋電図(きんでんず=筋肉が働くときに出るごく弱い電気を、皮膚の上から拾って「どれくらい働いたか」を見る方法のこと)です。 ...

September 19, 2026 · 3 分
秋のフェアウェイを、キャディバッグを担いだキャディと並んで歩くゴルファーのイラスト

歩いて回ると、飛ばなくなるのか 〜カートと歩きを同じ人で比べた研究〜

「歩いて回ると、後半ヘトヘトになって飛ばなくなるから」 私も、なんとなくそう思っていました。 では、実際はどうなのでしょうか。2025年12月、イギリスとポルトガルの研究チームが、同じゴルファーに「歩いて1ラウンド」「カートで1ラウンド」の両方を回ってもらい、体とスイングを細かく比べた研究を発表しました。 この記事のポイント ✅ 歩いた日は、カートの日より 約1万700歩多く歩き、動いた分のカロリーは 約420kcal多く使っていました ✅ それでも、ヘッドスピードとボールの初速は変わりませんでした。落ちていたのは、スイングではなく脚のバネ(ジャンプ力)でした ✅ ただし参加者は 21歳の上級者です。同じ18ホールでも、年齢を重ねるほど「しっかりした運動」になります。そこも合わせてお話しします 疲れとスイングの関係は、前回こちらでも取り上げました。今回は「歩くこと」の疲れの話です。 👉 後半に崩れるのは、気のせいじゃなかった 目次 同じ人が、歩きとカートで1回ずつ回った 身体の数字は、はっきり違った それでも、ヘッドスピードは落ちなかった 落ちていたのは「脚のバネ」だった 正直に書いておきたい、この研究の条件 年齢を重ねると、同じ18ホールがもっと「運動」になる カートの日でも、歩数は稼げる こんなときは無理をしないで おわりに 参考にした情報 同じ人が、歩きとカートで1回ずつ回った 研究をしたのは、イギリスのリバプール・ジョン・ムーア大学などのグループです。『European Journal of Sport Science』というスポーツ科学の専門誌に載りました。 参加したのは、ポルトガルのゴルフ専門の学校に通う(または通っていた)男性16人。平均21歳、ハンディキャップは平均2.3という、かなりの上級者です。 この16人に、2日続けて、同じコース(18ホール・約6,600メートル)を回ってもらいました。 ある日は 歩いて回る(バッグはキャディが担ぐので、本人は手ぶら) もう1日は カートに乗って回る(キャディが運転。フェアウェイにも乗り入れでき、グリーンの近くまで行ける) どちらを先にするかは、くじ引きで決めています。同じ人どうしで比べるので、体力や腕前の差が結果に混ざりにくいやり方です。 測ったものは、歩数、動いた分のカロリー、心拍数、そしてのみこむタイプの小さな体温計で測った体の内側の温度。さらに1・6・12・18番のティーで、ヘッドスピード、ボールの初速、キャリー、ジャンプの高さを測りました。 身体の数字は、はっきり違った まず、身体のほうの結果です。 歩き カート 歩数 17,007歩 6,274歩 動いた分のカロリー 880kcal 456kcal 平均の心拍数 109拍/分 94拍/分 飲んだ水の量 1.6リットル 1.2リットル ラウンド後の「きつさ」(0〜100) 41 25 ラウンドにかかった時間 5時間6分 5時間5分 歩いた日は、約1万700歩多く歩き、約420kcal多く使っていました。体の内側の温度も、6番・12番・18番の時点で、歩いた日のほうが0.3℃ほど高くなっていました。 研究チームは、歩いた日は「ほどほどの強さの運動」、カートの日は「軽い運動」 にあたると書いています。 あなた 880kcalって、ご飯何杯分ですか? Torapon そう聞きたくなりますよね。ただ、人は寝ているだけでも、息をしたり体温を保ったりするためにカロリーを使っています。この880kcalは、その分を除いて、歩いたりクラブを振ったりして「余分に」使った分だけの数字です。しかも、バッグはキャディが担いでいます。その日1日に使ったカロリーの合計は、これよりずっと多くなるので、食べる量とそのまま比べるのはやめておきましょう。 ...

September 26, 2026 · 2 分
体の横のドアに固定したチューブを胸の前でまっすぐ押し出し、体がひねられないよう耐えている中年ゴルファー

ひねらない筋トレで、胸が速く回るようになった 〜「止める力」とスイングの研究〜

飛ばしたいなら、体をひねる練習をする。 これは、ゴルフをしている人なら誰でも考えることだと思います。ひねり素振り、回旋のストレッチ、腹筋をねじる運動。私もずいぶん勧めてきました。 ところが2026年、中国の研究チームから、少し意外な報告が出ました。体を「ひねらずに耐える」筋トレをしたグループだけ、スイング中に胸が回るスピードが上がった、というのです。 この記事のポイント ✅ ふつうの体幹トレーニングでも、「ひねらずに耐える」トレーニングでも、ヘッドスピードは上がりました ✅ ただ、胸が回る速さと、切り返しで上半身と下半身のねじれが戻っていく速さが上がったのは、「ひねらずに耐える」ほうだけでした ✅ カギは「ねじる力」の強さではなく、トップまではわき腹の筋肉に力を入れて体を支え、切り返したらその力をさっと抜く、この切り替えでした。自宅でできる、同じ考え方の運動を3つご紹介します 体幹の「持久力」の話は、こちらで取り上げました。今回は「切り替えの速さ」の話です。 👉 後半に崩れるのは、気のせいじゃなかった 目次 「ひねらずに耐える」筋トレとは 3つのグループに分けて、8週間 ヘッドスピードは、どちらでも上がった 胸の回る速さが変わったのは、片方だけ わき腹の筋肉が「力を入れて、抜く」ようになっていた 正直に書いておきたい、この研究の弱いところ 60代でも、筋トレでヘッドスピードは上がる 自宅でできる「ひねらずに耐える」運動3つ こんなときは専門家に相談を おわりに 参考にした情報 「ひねらずに耐える」筋トレとは まず言葉の説明からします。 ふつうの腹筋運動は、体を動かして鍛えます。起き上がる、ねじる、横に曲げる。 これに対して、外から「ひねられそうになる力」がかかったときに、ひねらずに耐えるのが、今回のトレーニングです。英語では「アンチムーブメント(動きに逆らう)」とか「アンチローテーション(回されることに逆らう)」と呼ばれます。 代表的なのが、パロフプレスという運動です。柱に結んだチューブを、体の横から引っぱられた状態で、胸の前にまっすぐ押し出す。チューブは体を横へ回そうとしますが、回されないように耐える。見た目はとても地味な運動です。 あなた スイングは体を回す動きなのに、回さない練習で意味があるんですか? Torapon そう思いますよね。私も最初はそうでした。ただ、車にたとえると分かりやすいです。ブレーキがしっかり効く車だと、安心してアクセルを踏めますよね。体も同じで、「止める力」があるからこそ、思い切って速く回せる、という考え方なんです。 3つのグループに分けて、8週間 研究をしたのは、北京の首都体育学院などのグループです。2026年8月、『Sports Biomechanics』というスポーツの動きの専門誌に発表されました。 アマチュアゴルファーを、くじ引きで3つのグループに分けています。 グループ 内容 A ひねらずに耐える体幹トレーニング B ふつうの体幹トレーニング C トレーニングなし(比べるためのグループ) AとBは、週3回、8週間、指導者のもとでトレーニングをしました。その前後で、スイング中のお腹の横の筋肉(外腹斜筋=がいふくしゃきん。わき腹の表面にある筋肉です)の働きと、体の動きを3Dで細かく測っています。 ヘッドスピードは、どちらでも上がった まず、ヘッドスピードです。 AのグループもBのグループも、ヘッドスピードが上がりました。 ここは大事なところなので、はっきり書いておきます。「ひねらない筋トレのほうが、ヘッドスピードが上がった」わけではありません。ふつうの体幹トレーニングでも、ちゃんと上がっています。 体幹を鍛えるとヘッドスピードが上がることは、以前から知られていました。たとえばイギリスの研究では、体幹だけの8週間のトレーニングで、ヘッドスピードが約3.6%上がっています(2013年・クラブレベルのゴルファー36人)。 では、AとBで何が違ったのでしょうか。 胸の回る速さが変わったのは、片方だけ 違いが出たのは、スイングの中身でした。 ひねらずに耐えるトレーニングをしたAのグループだけ、次の2つが上がっていました。 胸が回る速さ 切り返しで、上半身と下半身のねじれが戻っていく速さ どちらも、スイングの中でいちばん速くなった瞬間の速さを比べています。 いっぽう、骨盤が回る速さは変わっていませんでした。 2つ目は少しむずかしいので、説明します。 スイングを真上から見ると、肩のラインと骨盤のラインが、ずれて交差します。この「ずれ」=上半身と下半身のねじれの差を、ゴルフの研究では「Xファクター」と呼びます。2本の線がXの字に見えるからです。 今回上がったのは、このねじれの「大きさ」ではなく、ねじれが変わっていく「速さ」 のほうです。 順番に見てみましょう。 トップ … 肩は大きく回り、骨盤はあまり回っていません。この差が「ねじれ」です 切り返し … まず骨盤が戻りはじめ、肩(胸)があとから追いかけるように一気に回ります インパクトに向けて … 肩が骨盤に追いつき、ためていたねじれが戻っていきます この「ためたねじれが戻っていくスピード」が、ひねらずに耐えるトレーニングをしたグループだけ速くなっていた、ということです。 ...

September 30, 2026 · 2 分
グリーン上でパターを構え、ボールの後ろの一点を静かに見つめるゴルファーのイラスト

パットは、腕より先に「目」で決まっていた 〜打つ前の2〜3秒「クワイエット・アイ」の研究〜

1メートルのパットを外した日の帰り道。 「ストロークがぶれたのかな」「手首を使いすぎたかな」と、腕や手の動きばかり振り返っていませんか。 私もそうでした。ところが、パットの研究をさかのぼってみると、上手な人とそうでない人の違いは、腕より先に「目の使い方」に出ていたのです。 今回は、打つ前のわずか2〜3秒の話です。道具もお金もいりません。 この記事のポイント ✅ 上手な人は、打つ前にボールの後ろの一点を2〜3秒、静かに見つめ、打ったあとも一瞬そこを見続けています。これを「クワイエット・アイ」(静かな目)と呼びます ✅ この目の使い方を1回教わっただけで、上級者は試合でのパット数が1ラウンドあたり約1.9打減りました ✅ ただし、研究はどれも若い人・約3メートルのパットです。「長く見れば必ず入る」わけではないことも、正直にお話しします パットのときの体の使い方は、こちらで取り上げました。今回は「目と脳」の話です。 👉 飛距離は20位。それでもメジャーで勝てた(桑木志帆選手・後編) 目次 上手な人は、どこを見ているのか 1回教わっただけで、試合のパット数が減った 緊張する場面で、差がついた 初心者でも、1週間後まで続いた 正直に書いておきたい、研究の限界 装置で脳を整える訓練は、どうなのか 研究で使われた手順を、家で試す 老眼や遠近両用メガネは関係あるの? おわりに 参考にした情報 上手な人は、どこを見ているのか 始まりは、1992年の研究です。 研究者のジョアン・ヴィッカーズ先生は、ゴルファーに視線を記録するメガネをかけてもらい、3メートルのパットのあいだ、目がどこを見ているかを調べました。 すると、上手な人とそうでない人で、はっきり違いが出ました。 上手な人 … ボールとカップを見る時間が長く、クラブや地面をきょろきょろ見る回数が少ない そうでない人 … あちこちを、同じくらいの短い時間ずつ見ている のちにこの研究は、「上手な人は、打つ前にボールの後ろを約2秒見つめ、打ったあともしばらく同じ場所を見続けていた」と紹介されるようになります。 この「動き出す直前に、ひとつの場所を静かに見つめる時間」を、ヴィッカーズ先生は「クワイエット・アイ」(静かな目)と名づけました。 あなた 見る場所なんて、ボールに決まっているんじゃないですか? Torapon そう思いますよね。でも、実際に視線を記録すると、カップ、ライン、ヘッド、足もと……と、目はけっこう落ち着きなく動いているんです。上手な人は、最後に見る場所がひとつに決まっていて、そこで目が止まっている。「どこを見るか」より「最後に目が止まっているか」が大事なんですね。 1回教わっただけで、試合のパット数が減った この「目の使い方」は、教えて身につくのでしょうか。 イギリスの研究グループが、それを確かめました(2011年)。対象は、ハンディキャップ平均2.7の男性の上級者22人です。 くじ引きで2つのグループに分け、 クワイエット・アイを教わるグループ(12人)… 自分の視線の映像と上級者の視線の映像を見て、「ボールの後ろを2〜3秒見つめる」などの手順を教わる 比べるグループ(10人)… 自分の視線の映像は見るが、目の使い方の指導は受けない 教えたのは1回だけです。その前後の実際の試合10ラウンドずつで、パットの記録をつけてもらいました。 結果、クワイエット・アイを教わったグループは、1ラウンドあたりのパット数が約1.9打減りました。比べるグループは、変わりませんでした。 あなた 1回教わっただけで、2打も減るんですか? Torapon 数字だけ見ると驚きますよね。ただ、ここは少し割り引いて読んでください。パット数は本人がつけた記録で、寄せが上手くいった日はパット数も減ります。研究チーム自身も「パットだけの力とは言い切れない」と書いています。それでも、練習場ではなく本番の試合で差が出たのは、大きな意味があると思います。 緊張する場面で、差がついた この研究には、もうひとつ大事な結果があります。 研究室に戻ってもらい、「成績を発表する」「賞金を出す」などのプレッシャーをかけた状態で、約3メートルのパットを打ってもらいました。 クワイエット・アイを教わったグループ … 見つめる時間は約2.8秒のまま保たれ、約60% が入った 比べるグループ … 緊張で見つめる時間が約1.4秒に縮み、入ったのは約36% 緊張すると、目が落ち着かなくなる。目が落ち着かないと、入らなくなる。 研究チームは、見つめる時間の長さで、パットの成績のばらつきの43%を説明できた、と書いています。 「大事な場面になると入らない」 その原因のひとつは、腕ではなく、目が先に落ち着きを失っていることなのかもしれません。 ...

October 2, 2026 · 2 分
霜のおりた早朝のゴルフ場で、上着を着てスタートを待つゴルファーのイラスト

寒い朝のゴルフ、体は目覚めている? 〜筋肉の温度と「素早く力を出す」力〜

「寒い朝の1番ホールは、体が重くて振れない」 そんな経験はありませんか。気のせいではなく、体の中でも変化が起きていそうです。 この記事のポイント ✅ 筋肉の温度が上がると、素早く力を出す力(パワー)は高まりました。一方、最大の筋力は変わりませんでした(33の研究・921人のまとめ) ✅ 待ち時間で体が冷えると動きが落ちるため、保温したら15m走が速くなったという研究があります(サッカー選手14人) ✅ ただし、寒さとゴルフを直接調べた研究は、私が探した範囲では見つかりませんでした。他の競技の研究から考えた話です 目次 冷えると落ちるのは「素早さ」 ラウンド中の待ち時間でも冷える 寒い日の段取り おわりに 参考にした情報 冷えると落ちるのは「素早さ」 筋肉の温度と、力の出し方を調べた33の研究をまとめた分析(921人)があります。 筋肉の温度が上がると、素早く力を出す力(力の立ち上がりの速さ、パワー)が高まりました。1℃あたり、平均で約3〜4%ほどです 一方、最大の筋力は、温度が変わってもほとんど変わりませんでした つまり、冷えた体は「力が出ない」のではなく、「素早く力を出す準備が、まだできていない」状態に近いようです。ゴルフのスイングは、まさに素早さの勝負です。 あなた じゃあ、動いて温めるのと、カイロなどで外から温めるのは、どちらがいいんですか? Torapon この分析では、動いて温めても、外から温めても、はっきりした差は見つかりませんでした。ただ、データが少なく、「同じ」と言い切れる段階ではありません。大事なのは、どちらの方法でも温度を上げることのようです。 ラウンド中の待ち時間でも冷える 冷えるのは、朝イチだけではありません。ゴルフは、スタート前の待ち時間や、前の組を待つ時間がよくあります。 サッカーの控え選手を想定した実験があります。男性選手14人が、ウォームアップのあと45分休み、もう一度ウォームアップして15分休みました。この間、加温パンツか、ふつうのトレーニングパンツをはいて、そのあと走りやジャンプを測っています。 結果は、ふつうのパンツの日にくらべて、加温パンツの日は15m走が2℃の環境で約2.8%、18℃の環境で約2.6%よくなりました。ジャンプや繰り返しのダッシュでも改善がありました。 ただし、これは加温パンツの研究で、カイロの研究ではありません。人数も少なく、競技もサッカーです。「待ち時間に冷えると動きが落ちうる」ことを示す一例として、読んでください。 寒い日の段取り ゴルフ選手24人に、動くウォームアップ(腕や体幹の運動と、素振り30秒)をしてもらった研究もあります。ウォームアップのあとは、動きのテスト(15種類)の合計点が上がりました。ただし、比べる群はなく、飛距離は測っていません。 寒さの直接の研究がないので、ここからは研究から考えた段取りです。 クラブハウスや車の中で温まってから、外に出る スタート前に、肩・胸・股関節をよく動かす(肩回しや、軽いスクワットなど)。素振りは小さい振りから 待ち時間は、上着とカイロで冷やさない。 打つ直前に上着を脱ぐ PR 使い捨てカイロ(貼らないタイプ) スタート前や待ち時間に、ポケットや腰まわりに入れておくと、体を冷やしにくくなります。肌に直接当てず、衣類の上から使うと低温やけどの心配が減ります。 Amazonで見る 楽天で見る PR 保温インナー(ゴルフ向け・秋冬用) 薄手で伸びのあるタイプなら、スイングの邪魔になりにくいです。上着は、打つ直前に脱ぎ着しやすいものを重ねると、冷えと動きやすさの両立がしやすくなります。 Amazonで見る 楽天で見る PR ネックウォーマー(ゴルフ向け・薄手) 首元を覆うだけで、体の冷えた感じがやわらぎます。薄手で伸びるタイプなら、スイングの邪魔になりにくく、打つ直前にさっと外せます。 Amazonで見る 楽天で見る ※ カイロは、肌に直接当てず、使用上の注意を守ってお使いください。 ウォームアップの道具は、こちらでも紹介しています。 👉 女子プロが試合前に必ずやる「準備」 おわりに 寒い朝は、体が「まだ起きていない」だけかもしれません。1番ティーの前に、少し温めて、動かしておく。待ち時間に冷やさない。それだけで、動きやすくなる可能性があります。 ゴルフでの確かめはこれからですが、寒い日の準備として、試してみる価値はありそうです。 参考にした情報 Wilson CJ ほか「The effect of muscle warm-up on voluntary and evoked force-time parameters: A systematic review and meta-analysis with meta-regression」Journal of Sport and Health Science 2025年;14:101024 Cowper G ほか「Passive heat intervention in cold and thermoneutral environments on simulated soccer performance in substitutes」Physiological Reports 2025年;13(4):e70189 Skibski A ほか「Effects of a dynamic warm-up on Titleist Performance Institute screen scores in adult golfers」Journal of Sport Rehabilitation 2025年;34(4):449-455 ※この記事は、公表されている研究をもとに、ゴルファー向けにやさしく言い換えたものです。持病のある方や、寒さで体調が不安な方は、無理をせず、かかりつけ医にご相談ください。

October 6, 2026 · 1 分