「歩いて回ると、後半ヘトヘトになって飛ばなくなるから」

私も、なんとなくそう思っていました。

では、実際はどうなのでしょうか。2025年12月、イギリスとポルトガルの研究チームが、同じゴルファーに「歩いて1ラウンド」「カートで1ラウンド」の両方を回ってもらい、体とスイングを細かく比べた研究を発表しました。

この記事のポイント

✅ 歩いた日は、カートの日より 約1万700歩多く歩き、動いた分のカロリーは 約420kcal多く使っていました

✅ それでも、ヘッドスピードとボールの初速は変わりませんでした。落ちていたのは、スイングではなく脚のバネ(ジャンプ力)でした

✅ ただし参加者は 21歳の上級者です。同じ18ホールでも、年齢を重ねるほど「しっかりした運動」になります。そこも合わせてお話しします

疲れとスイングの関係は、前回こちらでも取り上げました。今回は「歩くこと」の疲れの話です。 👉 後半に崩れるのは、気のせいじゃなかった


目次

  1. 同じ人が、歩きとカートで1回ずつ回った
  2. 身体の数字は、はっきり違った
  3. それでも、ヘッドスピードは落ちなかった
  4. 落ちていたのは「脚のバネ」だった
  5. 正直に書いておきたい、この研究の条件
  6. 年齢を重ねると、同じ18ホールがもっと「運動」になる
  7. カートの日でも、歩数は稼げる
  8. こんなときは無理をしないで
  9. おわりに
  10. 参考にした情報

同じ人が、歩きとカートで1回ずつ回った

研究をしたのは、イギリスのリバプール・ジョン・ムーア大学などのグループです。『European Journal of Sport Science』というスポーツ科学の専門誌に載りました。

参加したのは、ポルトガルのゴルフ専門の学校に通う(または通っていた)男性16人。平均21歳、ハンディキャップは平均2.3という、かなりの上級者です。

この16人に、2日続けて、同じコース(18ホール・約6,600メートル)を回ってもらいました。

  • ある日は 歩いて回る(バッグはキャディが担ぐので、本人は手ぶら)
  • もう1日は カートに乗って回る(キャディが運転。フェアウェイにも乗り入れでき、グリーンの近くまで行ける)

どちらを先にするかは、くじ引きで決めています。同じ人どうしで比べるので、体力や腕前の差が結果に混ざりにくいやり方です。

左は歩いてキャディと並ぶゴルファー、右はキャディの運転するカートに乗るゴルファー。同じコースで比べた研究のイメージ

測ったものは、歩数、動いた分のカロリー、心拍数、そしてのみこむタイプの小さな体温計で測った体の内側の温度。さらに1・6・12・18番のティーで、ヘッドスピード、ボールの初速、キャリー、ジャンプの高さを測りました。


身体の数字は、はっきり違った

まず、身体のほうの結果です。

歩き カート
歩数 17,007歩 6,274歩
動いた分のカロリー 880kcal 456kcal
平均の心拍数 109拍/分 94拍/分
飲んだ水の量 1.6リットル 1.2リットル
ラウンド後の「きつさ」(0〜100) 41 25
ラウンドにかかった時間 5時間6分 5時間5分

歩いた日は、約1万700歩多く歩き、約420kcal多く使っていました。体の内側の温度も、6番・12番・18番の時点で、歩いた日のほうが0.3℃ほど高くなっていました。

研究チームは、歩いた日は「ほどほどの強さの運動」、カートの日は「軽い運動」 にあたると書いています。

あなた あなた

880kcalって、ご飯何杯分ですか?

Torapon Torapon

そう聞きたくなりますよね。ただ、人は寝ているだけでも、息をしたり体温を保ったりするためにカロリーを使っています。この880kcalは、その分を除いて、歩いたりクラブを振ったりして「余分に」使った分だけの数字です。しかも、バッグはキャディが担いでいます。その日1日に使ったカロリーの合計は、これよりずっと多くなるので、食べる量とそのまま比べるのはやめておきましょう。


それでも、ヘッドスピードは落ちなかった

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

これだけ体の負担が違うのに、ヘッドスピードは、歩いた日もカートの日も変わりませんでした。ボールの初速も同じです。

ティー 歩き カート
1番 47.0 47.2
6番 48.3 48.0
12番 47.9 48.1
18番 47.6 47.6

(ヘッドスピード、単位はメートル/秒。論文の時速マイルの値を換算しました)

むしろどちらの日も、中盤のほうが速くなっています。体が温まったからだと考えられます。

夕方の高台のティーで、ドライバーを力強く振り切るゴルファー

あなた あなた

じゃあ、歩いても飛距離は落ちないんですね!

Torapon Torapon

ヘッドスピードとボールの速さは落ちなかった、というのが正確なところです。

じつは1か所だけ例外があります。上り坂を歩いた直後の12番ティーでは、歩いた日のキャリーが約11ヤード短かったんです。ヘッドスピードは落ちていないので、研究チームは「芯を外したのかもしれない」と書いています。坂を上ってすぐのショットは、ひと呼吸おいてから。これは覚えておいて損はありません。

ちなみに、スコア(打数)はこの研究では測っていません。「歩いてもスコアは変わらない」とまでは言えませんので、そこはご注意ください。


落ちていたのは「脚のバネ」だった

では、歩いた日の疲れは、どこに出ていたのでしょうか。

研究では、各ティーでその場でのジャンプの高さも測っていました。スタートからラウンド後までの変化はこうです。

スタート時 ラウンド後 下がった分
歩き 33.4cm 31.7cm 1.7cm
カート 34.3cm 33.8cm 0.5cm

歩いた日は、ジャンプの高さが1.7cm下がっていました(カートの日は0.5cm)。脚のバネは、たしかに疲れていたのです。

それなのに、スイングの速さは落ちていない。研究チームはこう考えています。

ゴルフのスイングは、一瞬で力を出す動作です。少し疲れたくらいでは保たれる。 ただ、ジャンプのように脚をくり返し使う力には、疲れが出る。つまり、疲れはどこにでも同じように出るわけではない、ということです。

前回ご紹介した体幹の疲れの研究 では、お腹の筋肉を狙って疲れさせると、スイング中に上半身が前後に揺れる幅が約4.5度大きくなりました(頭の位置にすると5〜6センチ動く計算です)。今回は、歩いただけの軽い疲れでは、スイングの速さは変わりませんでした。どちらの研究も「どこが、どれくらい疲れたか」で結果が変わるという点では、同じ話なのだと私は受け取っています。


正直に書いておきたい、この研究の条件

よい研究ですが、そのまま自分に当てはめる前に、条件を確認しておきましょう。

  • 参加者は21歳の男性16人。女性も、中高年の方も入っていません。研究チーム自身も、女性や高齢のゴルファーが含まれていないことを、この研究の弱いところとして挙げています
  • 気温は17℃前後の涼しい日でした。30℃を超える真夏にも同じ結果になるかは、分かっていません
  • 1ラウンドだけの比較です。何日も続けて回ったときの疲れの積み重ねは、見ていません
  • 歩いた日も、バッグはキャディが担いでいました。自分で担いだり手押しカートを押したりすれば、負担はもっと大きくなるはずです
  • 研究のカートはフェアウェイに乗り入れができました。日本に多い「カート道だけを走るカート」とは条件が違います
  • 人数が16人と少ないので、「差がなかった」は「差がまったくないと証明された」という意味ではありません

ちなみにこの研究は、もともと「試合でカートを使うと有利になるのか」を確かめるためのものです。お金を出したのは、ヨーロッパの男子ツアーなどのゴルフ団体です。


年齢を重ねると、同じ18ホールがもっと「運動」になる

ここからは、中高年のゴルファーに向けた話です。

スウェーデンで、27歳・50歳・75歳の男性に、歩いて18ホール回ってもらった研究があります(2004年)。心拍数から「きつめの運動になっていた時間」を調べると、

  • 27歳 … ラウンドの 6%
  • 50歳 … ラウンドの 30%
  • 75歳 … ラウンドの 70%

同じ18ホールでも、75歳の方にとってはラウンドの大半が「きつめの運動」だったのです。しかも、本人が感じたきつさの度合いは、どの年代もあまり変わりませんでした。

歩いて18ホールを回ったとき、きつめの運動になっていた時間の割合。27歳6%、50歳30%、75歳70%

あなた あなた

きついのに、本人は気づいていないってことですか?

Torapon Torapon

そういうことです。これはよい知らせでもあり、注意でもあります。よい知らせは、歩いて回るだけで、中高年にとってはしっかりした運動になるということ。注意は、「平気だと思っていても、心臓はちゃんと働いている」 ということです。夏場や体調のすぐれない日は、無理に歩かないでくださいね。

フィンランドでは、運動不足だった48〜64歳の男性が、20週間、歩いてゴルフを続けた研究もあります(2000年)。ゴルフをしなかった人たちと比べると、体重が1.4kg、おなか回りが2.2cm減り、善玉コレステロールが増えていました(くじ引きで分けた研究ではないので、その点は割り引いて読んでください)。


カートの日でも、歩数は稼げる

厚生労働省が勧める1日の歩数の目安は、20〜64歳で約8,000歩、65歳以上で約6,000歩です。

今回の研究では、

  • 歩いた日 … 約1万7,000歩=8,000歩の2日分以上
  • カートの日 … 約6,300歩

でした。カートの日でも、65歳以上の目安にはほぼ届いています。

ただ、この研究のカートはグリーンの近くまで乗り入れていました。日本のコースではカート道から球まで歩くことが多いので、カートの日でも、もう少し歩数が増えるかもしれません。

歩数を増やしたい日のコツは、むずかしくありません。

  • 2打目地点まで、カートに乗らずに歩く(特に下り坂のホール)
  • グリーン周りでは、クラブを2〜3本持ってカートを降りる
  • グリーンから次のティーグラウンドまでは、カートに乗らずに歩く

ひとつだけ注意があります。坂や階段を上った直後は、ひと呼吸おいてから打ちましょう。研究でも、上り坂を歩いた直後の12番ティーだけ、キャリーが短くなっていました。

自分がふだん何歩ぐらい歩いているかは、一度測ってみると驚くと思います。カートにたくさん乗る日、たくさん歩く日を意識してラウンドし、歩数を測ってみるのもおもしろいですよ。

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歩数計

ポケットやベルトに付けるだけで、1ラウンドの歩数が分かります。「カートの日は何歩だったか」「歩いた日は何歩だったか」を一度比べてみると、自分の体にかかっている負担が数字で見えてきます。画面の数字が大きいものを選ぶと、ラウンド中でも見やすいです。

1万7,000歩を歩く日は、足もとの準備も大切です。滑りにくく、足に合ったシューズは、脚の疲れを減らすだけでなく、坂道での踏ん張りも助けてくれます。

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ゴルフシューズ(スパイクタイプ)

歩いて回る日は、足もとがいちばんの道具です。上り坂や傾斜で足が滑らないことが、脚の余計な疲れを減らしてくれます。お店で試すときは、夕方の少しむくんだ時間に、ラウンド用の靴下を履いて合わせるのがおすすめです。

歩いて回った日の夜、ふくらはぎや太ももが張るときは、軽くほぐしておくと翌日が楽になります。

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uFit RELEASER Mini(コンパクトなマッサージガン)

運動後の筋肉に細かい振動を与えて、張りやこわばりをやさしくほぐすアイテムです。歩いて回った日のふくらはぎや太ももに。骨の上や首の前面は避けて、筋肉のふくらみにやさしく当てるのが正しい使い方です。

ラウンド翌日のケアは、こちらにまとめています。 👉 ラウンド翌日の疲れをやわらげるクールダウン


こんなときは無理をしないで

歩いて回るのは、よい運動です。ただ、次のような方は、カートを上手に使うほうが安全です。

  • 暑い日(今回の研究は17℃前後の涼しい日でした)
  • 心臓や血圧、糖尿病などで通院中の方。歩いて回ってよいか、一度主治医に確認してください
  • ひざや股関節に痛みがある方。ひざの痛みがある方の歩きとカートの比較は、こちらの記事で紹介しています → 股関節は、もう限界まで使われている
  • ラウンド中に胸の痛み、息苦しさ、めまいが出たとき。すぐにプレーを止めて、同伴者に伝えてください

おわりに

「歩くと疲れて飛ばなくなる」

少なくとも、涼しい日の1ラウンドでは、そうはなりませんでした。脚は疲れても、スイングの速さは保たれていた。これは、歩くのが好きなゴルファーには、うれしい結果だと思います。

そしてもう一つ。同じ18ホールでも、年齢を重ねるほど、それは立派な運動になります。歩いて回れる日は、ぜひ歩いてみてください。暑い日や体調のよくない日は、必ずカートに頼ってくださいね。安全運転で!

体と相談しながら、「今日は歩ける日かな」と選べるのが、いちばんだと思います。


参考にした情報

  • O’Donnell A, Murray A, Jones A ほか「Riding a Golf Cart Versus Walking: A Study on the Physiological and Performance Differences in Tournament Golf」European Journal of Sport Science 2026年;26(1):e70099(2025年12月オンライン公開、DOI: 10.1002/ejsc.70099)
  • Broman G, Johnsson L, Kaijser L「Golf: a high intensity interval activity for elderly men」Aging Clinical and Experimental Research 2004年;16:375-381
  • Parkkari J ほか「A controlled trial of the health benefits of regular walking on a golf course」The American Journal of Medicine 2000年;109:102-108
  • 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」

※この記事は、公表されている研究をもとに、ゴルファー向けにやさしく言い換えたものです。持病のある方や、痛み・不調があるときは、自己判断せず医療機関にご相談ください。