クラブを速く振り抜くスイングのイラスト

「速く振る練習」で飛距離は伸びる? 〜最先端スピードトレーニングの科学(第1回・理論編)〜

「若い頃より、明らかにボールが飛ばなくなった」 「力いっぱい振っているのに、なぜか飛距離は伸びない」 そんなお悩みはありませんか。 実は近年、プロやトップアマの世界で当たり前になりつつある、飛距離アップの新しい考え方があります。それが 「スピードトレーニング」 ——ひとことで言えば、「速く振れる体」を、体そのものから作り替えていくトレーニングです。 この記事は、最先端のスピードトレーニングをやさしく解説する 全3回シリーズの第1回(理論編)。「そもそも、なぜ速く振る練習で飛ぶようになるのか?」という、いちばん大事なところをお話しします。 この記事のポイント ✅ 飛距離を決めるのは「力の強さ」より 「ヘッドスピード(クラブの速さ)」 ✅ 軽い道具などで“いつもより速く”振ると、脳と筋肉の 「速さの上限」 が引き上げられます(オーバースピードトレーニング) ✅ 効果は大きい一方で、準備運動なしの全力振りはケガのもと。始める前の“土台”がとても大切です 飛距離を決めているのは「力」より「速さ」 あなた 飛ばすには、やっぱり筋力をつけて「強く」振るのがいちばんですよね? Torapon それが、実はちょっと違うんです。ボールの飛びを決めるのは「力の強さ」そのものより、クラブヘッドが動く速さ(ヘッドスピード)。同じ人でも、速く振れるほど飛ぶんですよ。 ボールがどれだけ飛ぶかは、インパクトの瞬間の 「ヘッドスピード」、つまりクラブの先が動く速さで、大きく決まります。 もちろん筋力も大切です。ただ、筋肉モリモリの人がいちばん飛ぶとは限らないのが、ゴルフの面白いところ。細身のプロが軽々と飛ばすのは、力任せではなく、体をムチのようにしならせて、クラブを“速く”走らせているからです。 だからこそ、飛距離を伸ばすなら、「もっと強く振る」より 「もっと速く振れる体になる」 ほうが、近道になります。 「速く振れる体」は、後からつくれる あなた でも、スイングの速さって生まれつきで、もう変えられないのでは……? Torapon そう思われがちですが、速さは後からでも育てられるんです。カギをにぎるのが「オーバースピードトレーニング」という考え方ですよ。 ここで登場するのが、「オーバースピードトレーニング」 という方法です。 私たちの体には、「これ以上は速く振れない」という “速さの上限” のようなものがあります。おもしろいことに、この上限は筋肉だけで決まっているのではなく、**脳と神経が「安全のためにブレーキをかけている」**部分も大きいのです。 そこで、いつものクラブより軽い道具を使って、自分の限界より速く振る練習をします。すると体は「これくらいの速さでも大丈夫なんだ」と学習し、脳のブレーキが少しずつゆるんでいきます。これがオーバースピードトレーニングの正体——いわば 「速さの天井」を、神経のレベルから引き上げていくトレーニングです。 代表的な道具に、重さの違う3本の棒を振り分ける 「SuperSpeed(スーパースピード)」 や、重さを細かく変えられる 「The Stack(スタック)」 といった器具があります。いずれも「軽いものを全力で速く振る」という考え方は共通しています。 どれくらい効果があるの? あなた 実際のところ、どのくらい飛ぶようになるものなんですか? Torapon 研究や実践の報告では、**ヘッドスピードが時速でおよそ7〜10マイル(約11〜16km)**上がった例もあります。これは飛距離にすると、最大で30ヤードほどにもなる計算なんですよ。 各メーカーや研究の報告では、こうした器具を使った練習で、ヘッドスピードが上がったという結果が示されています。目安として ヘッドスピード+7〜10mph(マイル毎時)、飛距離にすると 最大で30ヤードほどの上乗せが期待できる、とされています。 やり方の目安も、思ったより手軽です。 1回あたり10〜15分ほど 週に3回くらい 5〜6週間続けると、変化を感じ始める人が多い もちろん、効果には個人差があります。年齢や体の状態によっても変わります。ただ、**「短い時間・少ない回数でも、続ければ速さは育てられる」**という点は、忙しい方やシニア世代にとっても、うれしいポイントです。 いちばん大切なのは「始める前の準備」 ここまで読んで、「さっそく軽い棒を全力で振ってみよう!」と思われたかもしれません。 でも、ちょっと待ってください。 ここが、理学療法士としていちばんお伝えしたいところです。 スピードトレーニングは、体にとってかなり強い運動です。準備運動もなしに、いきなり全力で速く振ると、腰・肩・ひじ・手首などを痛める原因になりかねません。せっかく飛距離を伸ばそうとして、ケガでクラブが握れなくなっては本末転倒です。 だからこそ、**「速く振れる体」の前に、「速く振ってもこわれない体」**を整えておくことが欠かせません。 しっかりウォームアップをしてから行う(冷えた体でいきなり全力はNG) 今、痛みのある方は、まずそのケアを優先する 腰・肩・ひじなどに不安のある方は、無理をしない すでに痛みがある方は、まずこちらのセルフケアから。 👉 ゴルフで腰が痛くなる人へ(股関節ストレッチ) 👉 ゴルフで肘が痛い人へ(ゴルフ肘のセルフケア) ...

July 3, 2026 · 1 分
クラブを速く振り抜く素振りドリルのイラスト

今日からできる「速振り」ドリル3つ 〜最先端スピードトレーニングの科学(第2回・実践編)〜

「理屈はわかった。で、具体的に何をすればいいの?」 前回の第1回・理論編 では、飛距離のカギは「力」より「ヘッドスピード」であること、そして「いつもより速く振る」練習で、脳と筋肉の“速さの上限”を引き上げられること(オーバースピードトレーニング)をお話ししました。 今回はいよいよ 実践編。特別な器具がなくても、手持ちのクラブ1本で今日から始められる「速振りドリル」を3つ、ご紹介します。 この記事のポイント ✅ 器具なしでもOK。クラブを「逆さに持つ」だけで、オーバースピード練習になります ✅ 目安は「1回10〜15分・週3回」。毎日やらないことも、大事なメニューのうち ✅ 始める前のウォームアップと、「痛みが出たら中止」のルールは必ず守ってください 始める前に:3つの約束 あなた 待ってました! さっそく全力で振ればいいんですね? Torapon その意気やよし、なんですが——その前に約束を3つだけ。スピード練習は体への負担が大きいので、準備なしの全力振りがいちばん危ないんです。 ドリルに入る前に、次の3つだけ約束してください。 必ずウォームアップをしてから行う(軽い素振り・肩と股関節を回すなど、5分でOK) 痛みが出たら、その場で中止する(我慢して続けない) 最初の2週間は「全力の8割」までにとどめる(体を慣らす期間です) 体の回し方に不安がある方は、先にこちらで準備を。 👉 回旋可動域チェックと改善ストレッチ 👉 ゴルフで腰が痛くなる人へ(股関節ストレッチ) ドリル1:クラブ逆さ持ち素振り(基本の速振り) クラブを、ヘッド側を両手で握って逆さに持って素振りします。たったこれだけで、振る側が軽くなり、いつもより明らかに速く振れる——立派なオーバースピード練習になります。 使うクラブは ドライバーがおすすめです。いちばん長くて軽いので、逆さに持ったときにしっかり速さが出て、風切り音もわかりやすくなります(ドライバーがなければ、お手持ちのいちばん長いクラブでかまいません)。 ドライバーのヘッドの首元あたりを、いつものグリップと同じように両手で握る グリップ側(細い方)を体の外に向けて構える いつものスイングの形で、「ビュンッ」という風切り音を鳴らすつもりで振り抜く 音が鳴る位置が、体の正面より左側(飛球線側)で鳴るのが理想です あなた 本当だ、軽い! でも、こんなに軽いもので練習になるんですか? Torapon なるんです。軽いものを全力で振ると、脳が「この速さでも大丈夫」と学習して、速さのブレーキが少しずつゆるむんですよ。まさに第1回でお話しした理屈そのものです。 回数の目安:5回×2セット(セット間は1分ほど、息が整うまでしっかり休みます。速さの練習は、疲れる前にやめるのがコツです) ドリル2:反対向き素振り(左右バランス) 次は、いつもと反対向き(右打ちの方は左打ちの構え)で、同じく逆さ持ちのまま素振りします。 「え、反対向き?」と思われるかもしれませんが、これは本場のスピードトレーニングでも定番のメニュー。いつも同じ方向ばかりひねっている体のバランスを整え、速く振るための土台を左右両方から作ってくれます。最初はぎこちなくて当たり前。フォームの美しさは気にしなくて大丈夫です。 回数の目安:5回×1〜2セット(無理のない速さから。セット間は同じく1分ほど休みます) ドリル3:ステップ素振り(下半身の勢いを使う) 仕上げは、歩くように足を踏み込みながら振るドリルです。 両足をそろえて構える バックスイングしながら、左足(右打ちの場合)を一歩、目標方向へ踏み出す 踏み込んだ勢いをそのまま使って、振り抜く 野球の打者が足を上げて打つのと同じで、下半身の勢いを腕とクラブに乗せる感覚が身につきます。「手だけで振らず、体全体で速く振る」——ケガをしにくい速振りのコツでもあります。 回数の目安:5回×2セット(こちらもセット間は1分ほど休みます) 1回のメニューにまとめると あなた 3つ全部やると、どのくらいの時間になりますか? Torapon ウォームアップ込みで 15分ほどです。そして意外に大事なのが、毎日やらないこと。速振りの後の体には回復の時間が必要なので、週3回・1日おきくらいがちょうどいいんですよ。 ウォームアップ(5分) ドリル1:逆さ持ち素振り 5回×2セット ドリル2:反対向き素振り 5回×1〜2セット ドリル3:ステップ素振り 5回×2セット これを 週3回・5〜6週間。前回もお話しした通り、短い時間でも続けることで「速さの天井」は少しずつ上がっていきます。 本格的にやるなら:専用器具という選択肢 クラブの逆さ持ちでも十分始められますが、「どうせやるなら本格的に」という方には、第1回でも触れた専用器具があります。代表格の「SuperSpeed(スーパースピード)」は、重さの違う3本の棒を軽い順に振り分けることで、段階的に速さを引き出す設計。ツアープロも多く採用している定番です。 PR SuperSpeed Golf トレーニングシステム(メンズ3本セット) ...

July 4, 2026 · 1 分
速振りの前にウォームアップをするゴルファーのイラスト

速振りをケガなく続ける体づくり 〜最先端スピードトレーニングの科学(第3回・体づくり編)〜

「スピードトレーニング、始めてみたら意外と楽しい。でも、翌日ちょっと体が張るような……」 そんな方にこそ読んでいただきたい、シリーズ最終回です。 第1回・理論編 では「なぜ速く振る練習で飛ぶのか」を、第2回・実践編 では「クラブ1本でできる速振りドリル3つ」をお話ししました。 最終回のテーマは 体づくり編。第1回から繰り返しお伝えしてきたのが「準備なしの全力振りはケガのもと」でした。では、どんな準備をすれば、ケガをせずに速振りを続けられるのか——その具体的な方法を、体の専門家である理学療法士の視点からお話しします。 この記事のポイント ✅ 速振りの前は「止まって伸ばす」より 「動きながら温める」 ウォームアップが向いています ✅ 振り終わった後の 2〜3分のクールダウン が、翌日の張りと故障の予防につながります ✅ 痛みは体からの大事なサイン。「どこかが痛いまま速振り」は禁物です なぜ速振りには「体づくり」がセットなの? あなた ドリル自体は15分だし、素振りだけなら体への負担も軽いのでは? Torapon それが、そうでもないんです。速振りは 自分の限界に近い速さ で体をひねる運動。ボールを打たなくても、腰・肩・ひじにかかる負担は、普通の素振りよりずっと大きいんですよ。 スピードトレーニングは、いわば 短距離走のような全力運動 です。ジョギングの感覚のまま全力ダッシュをすると足を痛めやすいのと同じで、いつもの素振りの感覚のまま全力の速振りをすると、体のあちこちに思わぬ負担がかかります。 だからこそ、この3つをセットにしてほしいのです。 直前:動きながら体を温めるウォームアップ(5分) 直後:興奮した体を落ち着けるクールダウン(2〜3分) ふだん:速く振っても崩れない体を育てる、週単位の体づくり 順番に見ていきましょう。 速振り前の「5分ウォームアップ」 速振りの前のウォームアップは、「動きながら温める」 のがポイントです。じっと止まって伸ばすストレッチは、実は全力運動の直前にはあまり向いていません。体を軽く動かし続けて、筋肉の温度と心拍を少しずつ上げていきます。 おすすめは、この3つ(各1分ほど・合計5分)。 その場足踏み+腕振り:軽く息がはずむくらいまで、リズミカルに(1〜2分) 大きく腕回し:前回し・後ろ回しを各10回ずつ。肩甲骨から大きく動かします ひねり素振り:クラブを持たず、両腕を胸の前で組んで、小さく→だんだん大きく体をひねる。最後にクラブを持って、ゆっくり→7割の速さ の素振りを数回 あなた ラウンド前にやっている股関節ストレッチとは、別物なんですか? Torapon 似ていますが、目的が少し違います。ラウンド前のストレッチ は「かたい所をほぐす」のが主役。速振り前はそれに加えて、体を温めてエンジンをかける ことが大事なんです。だから「動きながら」なんですよ。 5分たって、体がポカポカして軽く息がはずんでいれば準備完了。ここから第2回のドリルに入ると、最初の1振り目から体がスムーズに回ってくれます。 速振り後の「2〜3分クールダウン」 意外と忘れられがちなのが、振り終わった後 です。全力運動の直後の体は、車でいえばエンジン全開のまま。ここで急に止めず、ゆるやかに落ち着けてあげると、翌日の張りや疲れの残り方が変わってきます。 やることはシンプルです。 ゆっくり素振りを5回ほど:全力の3割くらいの速さで、呼吸を整えながら 前腕を伸ばす:腕を前に伸ばし、手のひらを上に向けて、反対の手で指先をやさしく手前に(左右各20秒) 体側を伸ばす:両手を上げて、体をゆっくり左右に倒す(左右各20秒) 運動後は、こちらは「止まって伸ばす」ストレッチでOK。速振りでがんばった前腕・肩・体側を、痛気持ちいい手前でやさしく伸ばします。 背中や胸まわりのこわばりが気になる方は、フォームローラー(ストレッチ用ポール)に乗るのもおすすめです。 PR ストレッチ用ポール(フォームローラー) あおむけに寝て乗るだけで、背中や胸まわりをやさしくゆるめられる定番アイテム。速振り後のクールダウンにも、ラウンド後のケアにも使えます。長さ・かたさは自分に合うものを選びましょう。 Amazonで見る 楽天で見る なお、ラウンド翌日 の疲れの取り方は、こちらで詳しくご紹介しています。 👉 ラウンド翌日に疲れを残さない、やさしいクールダウン習慣 ふだんの体づくり:速く振っても崩れない体へ あなた 直前と直後はわかりました。「ふだんの体づくり」は、何か新しい運動を覚えるんですか? ...

July 5, 2026 · 1 分
地面を踏み込んでスイングするゴルファーのイラスト

飛ばす人は“地面”を使っている? 〜地面反力で飛距離アップの科学(第1回・理論編)〜

「細身のあのプロが、なぜあんなに飛ぶんだろう」 「筋トレをしているのに、飛距離が伸びない」 そんな疑問への答えのひとつが、実はあなたの足の下——「地面」 にあります。 近年、プロのレッスンや計測の世界でさかんに聞かれるようになった 「地面反力(じめんはんりょく)」 という言葉。今回から全3回で、この地面反力をやさしく解説する新シリーズをお届けします。第1回は 理論編——「地面の力で飛ばす」とはどういうことか、いちばん大事な仕組みからお話しします。 この記事のポイント ✅ スイングの力の源は、腕だけではなく 「地面を押した力の押し返し(地面反力)」 ✅ プロは切り返しのあたりで 体重の1.5〜2倍ほど の力で地面を押している、と言われています ✅ 大事なのは力の大きさより 「押すタイミング」。やみくもに踏ん張るのは逆効果です 地面反力ってなに? あなた 「地面反力」って、最近レッスン動画でもよく聞きますが……正直、ピンときていません。 Torapon 実は、みなさん毎日使っている力なんですよ。歩くのもジャンプも、地面を押して、押し返してもらう ことで体は動いています。それが地面反力です。 壁を強く押すと、自分の体がうしろによろけますよね。押した分だけ、同じ強さで押し返される——理科で習った 「作用・反作用」 です。地面との間でも同じことが起きていて、足で地面を強く押すほど、地面は同じ大きさの力で体を押し返してくれます。これが地面反力です。 じつはこの力、私の本業であるリハビリの世界では 「床反力(ゆかはんりょく)」 と呼ばれ、歩き方の分析などで毎日のように登場する、おなじみの存在です。そしてゴルフの世界でも、力を測る板(フォースプレート)を使った計測機器の普及で、プロがスイング中にどう地面を使っているのか が細かく分かるようになってきた、と言われています。 なぜ「地面を押す」と飛ぶの? あなた でも、地面を押す力とヘッドスピードに、そんなに関係があるものですか? Torapon 計測の報告では、地面を上手に押せる人ほどヘッドスピードが高い傾向 があるとされています。ただし「押せば必ず飛ぶ」ではなく、押し方とタイミング がカギなんです。 イメージしやすいのは ジャンプ です。高く跳ぼうとするとき、私たちは一度軽くしゃがんで、地面をグッと押しますよね。あの「押した力の押し返し」が、体を宙に持ち上げてくれています。 スイングも同じです。切り返しからダウンスイングにかけて 地面を強く押すと、その押し返しが体の回転を加速させ、最終的にクラブヘッドの速さ(ヘッドスピード)につながっていく——そんな流れだと言われています。 プロの計測例では、切り返しのあたりで 体重の1.5〜2倍ほど の力で地面を押している、という報告もあるそうです。腕の力だけではとても生み出せない大きな力を、プロは足元から借りているわけです。 大事なのは「量」より「タイミング」 あなた なるほど……。じゃあ、とにかく思いっきり踏ん張ればいいんですね? Torapon そこが落とし穴なんです。踏ん張りっぱなしは、むしろブレーキ になることも。バネのように 「沈む→押して伸びる」 の順番とタイミングが大事なんですよ。 プロとアマチュアの差は、力の大きさそのものより、力を出すタイミング にあると言われています。上手な人は、切り返しからダウンスイングの前半にかけて力のピークをつくり、インパクトの前にはスッと力を抜いて、その勢いをクラブに受け渡している——「地面から借りた力を、最後はクラブに集める」イメージです。 逆に、インパクトの瞬間に力もうとすると、タイミングが間に合わず、スピードは頭打ちに。「ずっと踏ん張る」のではなく「一瞬押して、あとはクラブに任せる」——この感覚のつかみ方は、次回の実践編でじっくりご紹介します。 なお、誤解されやすいのですが、地面反力は 「ジャンプしながら打つ」ことではありません。実際に跳んでしまうと、かえってスイングは不安定になり、膝や腰を痛めるもとにもなります。 筋力に自信がなくても大丈夫な理由 地面反力の考え方のうれしいところは、腕力に頼らない ことです。地面の押し返しという「外の力」を借りるので、筋力が落ちてきた世代でも、体の使い方しだいで飛距離の伸びしろが残されている、というわけです。 ただし、地面を押す動きには 膝や腰にも負担 がかかります。いま痛みや不安のある方は、先にこちらのケアから始めてください。 👉 ゴルフで腰が痛くなる人へ(股関節ストレッチ) シリーズの見どころ(第2回・第3回の予告) この「地面反力」シリーズは、全3回でお届けします。 ...

July 8, 2026 · 1 分
ドライバーのフェースの芯でボールをとらえる瞬間のイラスト

「速く振る」より先にやること 〜ミート率を上げる科学(第1回・理論編)〜

「速く振る練習もした。地面の使い方も覚えた。それでも、思ったほど飛距離が伸びない」 そんな方に、まだ手つかずで残っている伸びしろがあります。それは 「当たりの質」——専門的には ミート率 と呼ばれる数字です。 当ブログではこれまで、スピードトレーニング3部作 と地面反力3部作 で「速く振る」お話をしてきました。今回から全3回でお届けするのは、その 続編 にあたる「効率よく当てる」お話です。第1回は 理論編——なぜ速さより先に当たりを見直したほうが得なのか、実際の計測データからお話しします。 この記事のポイント ✅ ミート率= ボール初速 ÷ ヘッドスピード。「振った速さが、どれだけボールに伝わったか」を表す数字です ✅ ツアープロの平均は 1.49、平均的なアマチュアは 1.44。ヘッドスピードが同じでも、計算上10ヤード前後 の差になります ✅ ロボットによる試験では、ヘッドスピードを上げて+2ヤード に対し、打点を芯に直して+8ヤード。速さより打点のほうが大きく効きました ミート率ってなに? あなた 練習場の計測機で「ミート率」って出るんですが、正直、何の数字なのか分かっていません……。 Torapon とてもシンプルな数字なんですよ。ボールの初速 ÷ ヘッドスピード。つまり「振った速さのうち、どれだけがボールに乗ったか」という 燃費のような数字 です。 たとえばヘッドスピードが 40m/s の人が、ボールの初速 57.6m/s で打てたとすると、57.6 ÷ 40 = 1.44。これがミート率です。 ここで大事なのは、ミート率には上限がある ということ。ドライバーの場合、その上限は おおよそ1.5。ルールでフェースの反発の強さ(反発係数)に上限が決められているため、これ以上は道具でどうにかできる範囲を超えてしまうのです。 あなた 上限が1.5ということは……1.44の私は、けっこう良いほうなんでしょうか? Torapon そう思いたくなりますよね。でも小数点第2位の差が、飛距離では意外に大きな差 になるんです。次で数字にしてみましょう。 数字で見ると、こんなに違う 計測機メーカー(Trackman)が公表している、腕前ごとのドライバーのミート率の平均値がこちらです。 腕前 ミート率の平均 ツアープロ 1.49 スクラッチ(ハンデ0前後) 1.49 ハンデ10 1.45 平均的なアマチュア(ハンデ14.5) 1.44 ボギーゴルファー 1.43 差はわずか 0.05〜0.06。ですが、ヘッドスピード 40m/s(約89mph)で計算してみると—— ミート率 1.44 → ボール初速 57.6m/s ミート率 1.49 → ボール初速 59.6m/s 初速の差は 2m/s。ボール初速が上がるとその分だけ飛距離も伸びるため、計算上、10ヤード前後の差 になります。 ...

July 26, 2026 · 1 分
力強くクラブを振り抜くシニアゴルファーのイラスト

落ちたのは「力」ではなく「速さ」だった 〜飛距離を生む「速筋」の科学〜

前回の「可動域と筋力 」3部作の最後に、こう書きました。 飛距離を生んでいたのは、柔らかさではなく「素早く力を出す能力」のほうでした。 書きながら、これは宿題を残したな、と思っていました。じゃあその「素早く力を出す能力」とは、体の中の何なのか。どうすれば取り戻せるのか。今回はそこを、まっすぐ書きます。 先に結論をお伝えします。年齢とともに飛ばなくなるのは、力が落ちたからではありません。速さが落ちたからです。 そして落ちた速さは、重いものを持ち上げる練習では戻りません。 この記事のポイント ✅ 筋肉には「速い係」と「遅い係」があり、年齢で減るのは、ほぼ速い係だけ です。20歳から80歳までに、遅い係が1〜25%の減少なのに対し、速い係は20〜50% 減ります ✅ ダウンスイングは およそ0.2〜0.3秒。ところが人が最大の力を出しきるには0.3秒以上かかります。つまりゴルフのスイングは、「いちばん強い力」が間に合わない動き です ✅ 速い係のスイッチが入るかどうかは、重さではなく「速く動かそうとする気持ち」 で決まります。だから軽い負荷でも、速筋は鍛えられます 「力はあるのに、飛ばない」の正体 こんな経験はないでしょうか。 昔と比べて、特に力が弱くなった感じはしない。買い物袋も持てるし、階段も上がれる。なのに、ドライバーだけが明らかに飛ばなくなった。 これは気のせいでも、技術の衰えでもありません。体の中で、実際にそういうことが起きています。 筋肉は一種類ではなく、大きく2つの係に分かれています。 遅筋(ちきん/タイプI線維)=「持久の係」 ゆっくり、長く働き続けるのが得意。歩く、立っている、姿勢を保つ、といった仕事を担当します。 速筋(そっきん/タイプII線維)=「瞬発の係」 一瞬で大きな力を出すのが得意。跳ぶ、投げる、ダッシュする、そしてクラブを振る。こちらの担当です。 買い物袋を持つのも階段を上がるのも、実は「持久の係」の仕事です。だから日常生活では衰えに気づきにくい。ところがスイングは、ほぼ全部が「瞬発の係」の仕事 です。 あなた 言われてみれば……。日常で困っていることは何もないんです。ゴルフだけなんですよ、落ちたのを感じるのは。 Torapon それが自然なんです。ゴルフは、日常生活でいちばん使わない側の筋肉を全力で使うスポーツ ですから。逆に言うと、ゴルフは体の衰えにいちばん早く気づける場所でもあります。 年齢で減るのは、速い係「だけ」 ここが今日いちばん知っていただきたいところです。 加齢による筋肉の衰えは、全体が均等に細るのではありません。 太ももの筋肉(外側広筋)を20歳から80歳まで比べた古典的な研究では、筋肉全体の断面積が約40% 小さくなっていました。ところがその中身を線維の種類ごとに見ると、減り方がまったく違いました。 複数の研究をまとめると—— 遅筋(持久の係)の細り方 … 1〜25% 速筋(瞬発の係)の細り方 … 20〜50% つまり、歳を重ねて失われるのは、ほぼ「速さ」の部分 ということです。 もうひとつ、印象的な数字があります。研究では、筋力の落ち方は、筋肉の量の落ち方より2〜5倍も速い と報告されています。鏡を見て「そんなに細くなっていないけどな」と思っても、出せる力はそれよりずっと速く落ちている、ということです。 そして、力よりもさらに先に落ちるのがパワー です。パワーとは、力の大きさに、動きの速さを掛け合わせたもの をいいます。 同じ重さを持ち上げられる2人でも、サッと軽々と持ち上げる人と、うんうん言いながらゆっくり上げる人がいます。この差がパワー です。 そして研究では、このパワーが低い人ほど、その後に歩く力が落ちたり、入院したりしやすい ことが分かっています。筋肉の太さや握力よりも、パワーのほうが、その人のこの先をよく言い当てていました。 あなた 細くなっていないのに力は落ちていて、その力よりさらに速さが先に落ちている……。順番があるんですね。 Torapon 順番があります。「速さ」→「力」→「太さ」の順に失われていく と考えてください。だから飛距離は、体つきが変わる前に落ち始めるんです。裏を返せば、いちばん先に手を打つべきは「速さ」 ということでもあります。 ゴルフのスイングは「最大の力」が間に合わない ここからが、ゴルフならではの話です。 トップから切り返して、ボールに当たるまで。このダウンスイングにかかる時間は、研究でおよそ0.2〜0.3秒 と測られています。まばたきよりも短い時間です。 一方で、人間の体が最大の力を出しきるまでには、0.3秒以上かかる と言われています。 ...

August 16, 2026 · 2 分
同じティーグラウンドに立つ男性ゴルファーと女性ゴルファーのイラスト

体はやわらかいのに、なぜ飛ばないのか 〜男女29人を測って見えた、本当の差〜

「私、体はやわらかいほうなんです。なのに飛ばないんです」 女性のアマチュアゴルファーから、こんな相談を受けたことがあります。 たしかに、一般に女性のほうが体はやわらかい。前屈もできる。開脚もできる。それなのに、同じくらいの腕前の男性より飛ばない。 やわらかさが足りないのではなく、やわらかさの向きが違った。2026年に出た研究を読んで、私はそう考えるようになりました。 この記事のポイント ✅ 同じ腕前の男女29人を細かく測ったところ、女性が柔らかかったのは13の検査のうち3つだけ。しかもゴルフにいちばん効く「ねじる方向」は、男女で差がありませんでした ✅ 差がついていたのは、地面を「素早く」押す力と、ダウンスイングで骨盤と体を加速させる力でした ✅ プロの世界では、女子のコースは男子の約90%の長さ。でも女子の飛距離は男子の約86%。つまり女性のほうが、相対的に長いコースを戦っています 「回す」ための体づくりについては、3部作にまとめています。今回はその続きにあたる話です。 👉 回すのは腰ではなかった(可動域と筋力・第1回) 目次 同じハンデの男女29人を、まるごと測った 女性が柔らかかったのは、13のうち3つだけ そして「効く方向」の柔らかさは、同じだった 差がついたのは「速さ」だった 正直に書いておきたい、この研究の弱いところ プロの世界では、コースのほうに問題があった 現場で見てきたこと では、何をすればいいのか おわりに 参考にした情報 同じハンデの男女29人を、まるごと測った ニューヨークのスポーツ医学研究所(NISMAT)が行った研究です。 集めたのは、腕前の高い男性13人と女性16人。ここが大事なところで、両者のハンディキャップに差はありませんでした。年齢にも差はありません。 つまり「同じくらい上手な男女」を比べています。 そのうえで、次のものを全部測りました。 柔軟性……13種類の検査(前後の方向4つ、横の方向4つ、ねじる方向5つ) 筋力……肩6項目、股関節5項目 スイングの動き……骨盤と体の角度・速さ・加速 足が地面を押す力……床に埋めた測定板で、左右別々に 結果……レーダー式の計測器で、ヘッドスピード・ボール初速・飛距離 結果、ヘッドスピードもボール初速も飛距離も、男性が上でした。 ハンディキャップは同じなのに、です。 あなた 同じ腕前なのに、飛距離だけ違うんですか? Torapon そこがこの研究の面白いところなんです。飛ばないぶんを、別のところで取り返して同じスコアになっているわけですね。 あとで出てきますが、女性は方向性でお返ししています。プロの数字を見ると、それがはっきり出ています。 女性が柔らかかったのは、13のうち3つだけ さて、柔軟性です。 「女性のほうが柔らかい」。これは半分あたっていて、半分は違いました。 柔軟性の検査 どんな動きか 結果 前後の方向(4種類) 前屈や後屈のように、体を前後に曲げ伸ばしする動き 1つだけ女性が柔らかい 横の方向(4種類) 開脚や体を横に倒すように、左右に広げる動き 2つ女性が柔らかい ねじる方向(5種類) 股関節や肩、体を軸まわりにひねる動き すべて男女差なし ※どの検査をどう行ったかまでは、論文が有料のため確認できませんでした。ここでは「どの方向の動きか」だけをご紹介しています。 13の検査のうち、女性が上回ったのは3つだけでした。 そして、いちばん大事なところ。ねじる方向は、5つすべてで差がありませんでした。 そして「効く方向」の柔らかさは、同じだった なぜ、ねじる方向が大事なのか。 同じ研究グループが、2022年にこんな結果を出しています。 ゴルフの上手さと関係していたのは、ねじる方向の柔らかさだけでした。前後の柔らかさも、横の柔らかさも、上手さとは関係がありませんでした。 さらに、股関節のねじる方向の柔らかさだけで、ボール初速のばらつきの48%、飛距離のばらつきの45%を説明できたと報告しています。 ここを、今回の結果と重ねてみてください。 女性が余分に持っていた柔らかさ=前後と横=ゴルフの上手さとは関係が薄い方向 ゴルフに効く柔らかさ=ねじる方向=男女で差がなかった あなた じゃあ、開脚が得意でも意味がないということですか……。 Torapon ゴルフの飛距離という一点では、そうかもしれません。 ただ、開脚や前屈が無駄という話ではないんです。腰やひざを守るうえでは、どちらも大切です。 ...

September 7, 2026 · 2 分
夕方の練習場で、ドライバーのシャフトを大きくしならせながら振り下ろすゴルファー

しなり戻りは、飛距離を生んでいなかった 〜シャフト選びの科学(第1回・飛距離編)〜

「シャフトがしなって、戻る。あのムチのような動きが、ヘッドを加速させて飛距離を生む」 ゴルフを始めてから、何度この説明を聞いたか分かりません。私も、そう信じていました。柔らかいシャフトはよくしなるから走る、硬いシャフトはしならないから走らない。だからヘッドスピードに合わせてフレックスを選ぶのだ、と。 ところが、この「しなり戻りが飛距離を生む」という話を実際に測った研究を読んでいくと、思っていたのとは違う景色 が見えてきます。 しなり戻りの速さと、ヘッドスピードは、ほとんど関係がありませんでした。 今回から2回にわたって、シャフトの話を研究データから書きます。第1回は飛距離編 です。 この記事のポイント ✅ 重さも振り心地もそろえたうえで、柔らかいシャフトと硬いシャフトを打ち比べた研究では、しなり戻りの速さには明確な違いが出たのに、ヘッドスピードには違いが出ませんでした ✅ ヘッドスピードと強く結びついていたのは、シャフトの性質ではなく 打ち手が手元を回すスピード のほうでした ✅ ただし、33人それぞれが2本で打った球の平均を比べると、17人は、どちらか一方のシャフトのほうがはっきり速くなっていました。合うシャフトは人によって違う、ということです。フィッティングの意味は、ここにあります この記事に出てくる統計の言葉 (説明はここだけにまとめます) ・相関 = 2つの数字が、どれくらい一緒に動くかを −1 から +1 までの数字で表したもの。0に近いほど「おたがいに関係がない」、+1に近いほど「片方が大きいと、もう片方も大きい」という関係が強くなります ・統計的に有意でない = 測った数字にいくらか開きはあっても、その程度の開きは偶然でも起こりうる、という意味です。「差がゼロだと証明された」ではなく、差があるとは言えなかった ということですね ・盲検 (もうけん)= どちらのシャフトを使っているかを、打つ人に知らせずに試すやり方です。打つ人にも計測する人にも知らせない場合は、二重盲検 と呼びます。「今日は硬いほうだ」という思い込みが結果に混ざるのを防ぎます どちらのシャフトか、打つ本人にも分からないようにして打ってもらった 中心になるのは、カナダのマッケンジーとブーシェが2017年に Journal of Sports Sciences に発表した研究です。 参加したのは右打ちの男性ゴルファー33名 で、ハンディキャップの平均は12.1でした。上級者ばかりでもなく、初心者ばかりでもない、いわゆる中級者の集まりです。 この研究のすぐれているところは、シャフトの硬さ以外の条件を、徹底してそろえた ところにあります。 用意したのは、Rフレックスとよばれる柔らかいシャフト と、Xフレックスとよばれる硬いシャフト の2本。この2本は、 重さや慣性モーメント(=回しにくさの度合いのこと)など、振ったときの感じにかかわる性質を、ほぼ同じにしてある つまり、違うのは、しなりやすさだけ という状態です。そのうえで、1人が各シャフトで14球ずつ打ち、途中でシャフトが替わったことは、打つ人に知らせませんでした。終わったあとで、参加者は全員、途中で替わったことに気づかなかった と答えています。 ここまでやるのには理由があります。ふつうにシャフトを打ち比べると、たいてい重さも振り心地も違いますし、何より、「柔らかいほうを持っている」と分かった瞬間に、人は振り方を変えてしまう からです。それを全部止めたうえで、シャフトそのものの効果だけを取り出したわけですね。 あなた そこまでする必要があるんですか。打てば分かりそうなものですが……。 Torapon それが、分からないんです。私たちは「柔らかいと聞かされた」だけで、実際に振り方を変えてしまいます。試打で「このシャフト、走りますね」と感じたとき、走っているのがシャフトなのか自分なのかを、感覚では区別できません。だから、知らせずに打ってもらうんですね。 しなり戻りは、たしかに速かった。でもヘッドスピードは変わらなかった 結果を、順番に見ていきます。 まず、しなり戻りの速さ です。研究ではキック速度 と呼ばれています。シャフトが後ろにたわんでから前に戻ってくる、その戻りの速さのことです。 しなり戻りの速さ R(柔らかいほう) 1.7 m/s X(硬いほう) 1.2 m/s 柔らかいRのほうが、硬いXより0.5 m/s 速く戻っていました。これは統計的にもはっきりした違いです。つまり「柔らかいシャフトのほうがよく走る」こと自体は、事実でした。 ...

September 15, 2026 · 2 分
秋のフェアウェイを、キャディバッグを担いだキャディと並んで歩くゴルファーのイラスト

歩いて回ると、飛ばなくなるのか 〜カートと歩きを同じ人で比べた研究〜

「歩いて回ると、後半ヘトヘトになって飛ばなくなるから」 私も、なんとなくそう思っていました。 では、実際はどうなのでしょうか。2025年12月、イギリスとポルトガルの研究チームが、同じゴルファーに「歩いて1ラウンド」「カートで1ラウンド」の両方を回ってもらい、体とスイングを細かく比べた研究を発表しました。 この記事のポイント ✅ 歩いた日は、カートの日より 約1万700歩多く歩き、動いた分のカロリーは 約420kcal多く使っていました ✅ それでも、ヘッドスピードとボールの初速は変わりませんでした。落ちていたのは、スイングではなく脚のバネ(ジャンプ力)でした ✅ ただし参加者は 21歳の上級者です。同じ18ホールでも、年齢を重ねるほど「しっかりした運動」になります。そこも合わせてお話しします 疲れとスイングの関係は、前回こちらでも取り上げました。今回は「歩くこと」の疲れの話です。 👉 後半に崩れるのは、気のせいじゃなかった 目次 同じ人が、歩きとカートで1回ずつ回った 身体の数字は、はっきり違った それでも、ヘッドスピードは落ちなかった 落ちていたのは「脚のバネ」だった 正直に書いておきたい、この研究の条件 年齢を重ねると、同じ18ホールがもっと「運動」になる カートの日でも、歩数は稼げる こんなときは無理をしないで おわりに 参考にした情報 同じ人が、歩きとカートで1回ずつ回った 研究をしたのは、イギリスのリバプール・ジョン・ムーア大学などのグループです。『European Journal of Sport Science』というスポーツ科学の専門誌に載りました。 参加したのは、ポルトガルのゴルフ専門の学校に通う(または通っていた)男性16人。平均21歳、ハンディキャップは平均2.3という、かなりの上級者です。 この16人に、2日続けて、同じコース(18ホール・約6,600メートル)を回ってもらいました。 ある日は 歩いて回る(バッグはキャディが担ぐので、本人は手ぶら) もう1日は カートに乗って回る(キャディが運転。フェアウェイにも乗り入れでき、グリーンの近くまで行ける) どちらを先にするかは、くじ引きで決めています。同じ人どうしで比べるので、体力や腕前の差が結果に混ざりにくいやり方です。 測ったものは、歩数、動いた分のカロリー、心拍数、そしてのみこむタイプの小さな体温計で測った体の内側の温度。さらに1・6・12・18番のティーで、ヘッドスピード、ボールの初速、キャリー、ジャンプの高さを測りました。 身体の数字は、はっきり違った まず、身体のほうの結果です。 歩き カート 歩数 17,007歩 6,274歩 動いた分のカロリー 880kcal 456kcal 平均の心拍数 109拍/分 94拍/分 飲んだ水の量 1.6リットル 1.2リットル ラウンド後の「きつさ」(0〜100) 41 25 ラウンドにかかった時間 5時間6分 5時間5分 歩いた日は、約1万700歩多く歩き、約420kcal多く使っていました。体の内側の温度も、6番・12番・18番の時点で、歩いた日のほうが0.3℃ほど高くなっていました。 研究チームは、歩いた日は「ほどほどの強さの運動」、カートの日は「軽い運動」 にあたると書いています。 あなた 880kcalって、ご飯何杯分ですか? Torapon そう聞きたくなりますよね。ただ、人は寝ているだけでも、息をしたり体温を保ったりするためにカロリーを使っています。この880kcalは、その分を除いて、歩いたりクラブを振ったりして「余分に」使った分だけの数字です。しかも、バッグはキャディが担いでいます。その日1日に使ったカロリーの合計は、これよりずっと多くなるので、食べる量とそのまま比べるのはやめておきましょう。 ...

September 26, 2026 · 2 分
体の横のドアに固定したチューブを胸の前でまっすぐ押し出し、体がひねられないよう耐えている中年ゴルファー

ひねらない筋トレで、胸が速く回るようになった 〜「止める力」とスイングの研究〜

飛ばしたいなら、体をひねる練習をする。 これは、ゴルフをしている人なら誰でも考えることだと思います。ひねり素振り、回旋のストレッチ、腹筋をねじる運動。私もずいぶん勧めてきました。 ところが2026年、中国の研究チームから、少し意外な報告が出ました。体を「ひねらずに耐える」筋トレをしたグループだけ、スイング中に胸が回るスピードが上がった、というのです。 この記事のポイント ✅ ふつうの体幹トレーニングでも、「ひねらずに耐える」トレーニングでも、ヘッドスピードは上がりました ✅ ただ、胸が回る速さと、切り返しで上半身と下半身のねじれが戻っていく速さが上がったのは、「ひねらずに耐える」ほうだけでした ✅ カギは「ねじる力」の強さではなく、トップまではわき腹の筋肉に力を入れて体を支え、切り返したらその力をさっと抜く、この切り替えでした。自宅でできる、同じ考え方の運動を3つご紹介します 体幹の「持久力」の話は、こちらで取り上げました。今回は「切り替えの速さ」の話です。 👉 後半に崩れるのは、気のせいじゃなかった 目次 「ひねらずに耐える」筋トレとは 3つのグループに分けて、8週間 ヘッドスピードは、どちらでも上がった 胸の回る速さが変わったのは、片方だけ わき腹の筋肉が「力を入れて、抜く」ようになっていた 正直に書いておきたい、この研究の弱いところ 60代でも、筋トレでヘッドスピードは上がる 自宅でできる「ひねらずに耐える」運動3つ こんなときは専門家に相談を おわりに 参考にした情報 「ひねらずに耐える」筋トレとは まず言葉の説明からします。 ふつうの腹筋運動は、体を動かして鍛えます。起き上がる、ねじる、横に曲げる。 これに対して、外から「ひねられそうになる力」がかかったときに、ひねらずに耐えるのが、今回のトレーニングです。英語では「アンチムーブメント(動きに逆らう)」とか「アンチローテーション(回されることに逆らう)」と呼ばれます。 代表的なのが、パロフプレスという運動です。柱に結んだチューブを、体の横から引っぱられた状態で、胸の前にまっすぐ押し出す。チューブは体を横へ回そうとしますが、回されないように耐える。見た目はとても地味な運動です。 あなた スイングは体を回す動きなのに、回さない練習で意味があるんですか? Torapon そう思いますよね。私も最初はそうでした。ただ、車にたとえると分かりやすいです。ブレーキがしっかり効く車だと、安心してアクセルを踏めますよね。体も同じで、「止める力」があるからこそ、思い切って速く回せる、という考え方なんです。 3つのグループに分けて、8週間 研究をしたのは、北京の首都体育学院などのグループです。2026年8月、『Sports Biomechanics』というスポーツの動きの専門誌に発表されました。 アマチュアゴルファーを、くじ引きで3つのグループに分けています。 グループ 内容 A ひねらずに耐える体幹トレーニング B ふつうの体幹トレーニング C トレーニングなし(比べるためのグループ) AとBは、週3回、8週間、指導者のもとでトレーニングをしました。その前後で、スイング中のお腹の横の筋肉(外腹斜筋=がいふくしゃきん。わき腹の表面にある筋肉です)の働きと、体の動きを3Dで細かく測っています。 ヘッドスピードは、どちらでも上がった まず、ヘッドスピードです。 AのグループもBのグループも、ヘッドスピードが上がりました。 ここは大事なところなので、はっきり書いておきます。「ひねらない筋トレのほうが、ヘッドスピードが上がった」わけではありません。ふつうの体幹トレーニングでも、ちゃんと上がっています。 体幹を鍛えるとヘッドスピードが上がることは、以前から知られていました。たとえばイギリスの研究では、体幹だけの8週間のトレーニングで、ヘッドスピードが約3.6%上がっています(2013年・クラブレベルのゴルファー36人)。 では、AとBで何が違ったのでしょうか。 胸の回る速さが変わったのは、片方だけ 違いが出たのは、スイングの中身でした。 ひねらずに耐えるトレーニングをしたAのグループだけ、次の2つが上がっていました。 胸が回る速さ 切り返しで、上半身と下半身のねじれが戻っていく速さ どちらも、スイングの中でいちばん速くなった瞬間の速さを比べています。 いっぽう、骨盤が回る速さは変わっていませんでした。 2つ目は少しむずかしいので、説明します。 スイングを真上から見ると、肩のラインと骨盤のラインが、ずれて交差します。この「ずれ」=上半身と下半身のねじれの差を、ゴルフの研究では「Xファクター」と呼びます。2本の線がXの字に見えるからです。 今回上がったのは、このねじれの「大きさ」ではなく、ねじれが変わっていく「速さ」 のほうです。 順番に見てみましょう。 トップ … 肩は大きく回り、骨盤はあまり回っていません。この差が「ねじれ」です 切り返し … まず骨盤が戻りはじめ、肩(胸)があとから追いかけるように一気に回ります インパクトに向けて … 肩が骨盤に追いつき、ためていたねじれが戻っていきます この「ためたねじれが戻っていくスピード」が、ひねらずに耐えるトレーニングをしたグループだけ速くなっていた、ということです。 ...

September 30, 2026 · 2 分