飛ばしたいなら、体をひねる練習をする。
これは、ゴルフをしている人なら誰でも考えることだと思います。ひねり素振り、回旋のストレッチ、腹筋をねじる運動。私もずいぶん勧めてきました。
ところが2026年、中国の研究チームから、少し意外な報告が出ました。体を「ひねらずに耐える」筋トレをしたグループだけ、スイング中に胸が回るスピードが上がった、というのです。
この記事のポイント
✅ ふつうの体幹トレーニングでも、「ひねらずに耐える」トレーニングでも、ヘッドスピードは上がりました
✅ ただ、胸が回る速さと、切り返しで上半身と下半身のねじれが戻っていく速さが上がったのは、「ひねらずに耐える」ほうだけでした
✅ カギは「ねじる力」の強さではなく、トップまではわき腹の筋肉に力を入れて体を支え、切り返したらその力をさっと抜く、この切り替えでした。自宅でできる、同じ考え方の運動を3つご紹介します
体幹の「持久力」の話は、こちらで取り上げました。今回は「切り替えの速さ」の話です。 👉 後半に崩れるのは、気のせいじゃなかった
目次
- 「ひねらずに耐える」筋トレとは
- 3つのグループに分けて、8週間
- ヘッドスピードは、どちらでも上がった
- 胸の回る速さが変わったのは、片方だけ
- わき腹の筋肉が「力を入れて、抜く」ようになっていた
- 正直に書いておきたい、この研究の弱いところ
- 60代でも、筋トレでヘッドスピードは上がる
- 自宅でできる「ひねらずに耐える」運動3つ
- こんなときは専門家に相談を
- おわりに
- 参考にした情報
「ひねらずに耐える」筋トレとは
まず言葉の説明からします。
ふつうの腹筋運動は、体を動かして鍛えます。起き上がる、ねじる、横に曲げる。
これに対して、外から「ひねられそうになる力」がかかったときに、ひねらずに耐えるのが、今回のトレーニングです。英語では「アンチムーブメント(動きに逆らう)」とか「アンチローテーション(回されることに逆らう)」と呼ばれます。
代表的なのが、パロフプレスという運動です。柱に結んだチューブを、体の横から引っぱられた状態で、胸の前にまっすぐ押し出す。チューブは体を横へ回そうとしますが、回されないように耐える。見た目はとても地味な運動です。
スイングは体を回す動きなのに、回さない練習で意味があるんですか?
そう思いますよね。私も最初はそうでした。ただ、車にたとえると分かりやすいです。ブレーキがしっかり効く車だと、安心してアクセルを踏めますよね。体も同じで、「止める力」があるからこそ、思い切って速く回せる、という考え方なんです。
3つのグループに分けて、8週間
研究をしたのは、北京の首都体育学院などのグループです。2026年8月、『Sports Biomechanics』というスポーツの動きの専門誌に発表されました。
アマチュアゴルファーを、くじ引きで3つのグループに分けています。
| グループ | 内容 |
|---|---|
| A | ひねらずに耐える体幹トレーニング |
| B | ふつうの体幹トレーニング |
| C | トレーニングなし(比べるためのグループ) |
AとBは、週3回、8週間、指導者のもとでトレーニングをしました。その前後で、スイング中のお腹の横の筋肉(外腹斜筋=がいふくしゃきん。わき腹の表面にある筋肉です)の働きと、体の動きを3Dで細かく測っています。
ヘッドスピードは、どちらでも上がった
まず、ヘッドスピードです。
AのグループもBのグループも、ヘッドスピードが上がりました。
ここは大事なところなので、はっきり書いておきます。「ひねらない筋トレのほうが、ヘッドスピードが上がった」わけではありません。ふつうの体幹トレーニングでも、ちゃんと上がっています。
体幹を鍛えるとヘッドスピードが上がることは、以前から知られていました。たとえばイギリスの研究では、体幹だけの8週間のトレーニングで、ヘッドスピードが約3.6%上がっています(2013年・クラブレベルのゴルファー36人)。
では、AとBで何が違ったのでしょうか。
胸の回る速さが変わったのは、片方だけ
違いが出たのは、スイングの中身でした。
ひねらずに耐えるトレーニングをしたAのグループだけ、次の2つが上がっていました。
- 胸が回る速さ
- 切り返しで、上半身と下半身のねじれが戻っていく速さ
どちらも、スイングの中でいちばん速くなった瞬間の速さを比べています。
いっぽう、骨盤が回る速さは変わっていませんでした。

2つ目は少しむずかしいので、説明します。
スイングを真上から見ると、肩のラインと骨盤のラインが、ずれて交差します。この「ずれ」=上半身と下半身のねじれの差を、ゴルフの研究では「Xファクター」と呼びます。2本の線がXの字に見えるからです。
今回上がったのは、このねじれの「大きさ」ではなく、ねじれが変わっていく「速さ」 のほうです。
順番に見てみましょう。
- トップ … 肩は大きく回り、骨盤はあまり回っていません。この差が「ねじれ」です
- 切り返し … まず骨盤が戻りはじめ、肩(胸)があとから追いかけるように一気に回ります
- インパクトに向けて … 肩が骨盤に追いつき、ためていたねじれが戻っていきます
この「ためたねじれが戻っていくスピード」が、ひねらずに耐えるトレーニングをしたグループだけ速くなっていた、ということです。
ねじれが大きいほうが、飛ぶんじゃないんですか?
よく言われることですが、じつは研究によって結論が分かれています。100人のゴルファーを調べた研究では、ねじれとボールの速さに関係が見られました。いっぽう、上級者18人を調べた研究では、ねじれの指標とヘッドスピードに、はっきりした関係は見られませんでした。
以前の記事で、体の柔らかさとヘッドスピードは関係しなかった、という研究もご紹介しました(回すのは腰ではなかった )。大きくねじることより、トップでためたねじれを、切り返しで一気に戻せるか。最近は、そちらが注目されています。
わき腹の筋肉が「力を入れて、抜く」ようになっていた
この研究でいちばんおもしろいのは、ここです。
研究チームは、わき腹の筋肉(外腹斜筋)が、スイングのどの場面でどれくらい働いているかを調べました。すると、ひねらずに耐えるトレーニングをしたグループでは、
- テークバックからトップまで … わき腹の筋肉にしっかり力が入り、体を支えている
- 切り返しの直後 … その力がさっと抜ける
という切り替えが、はっきり見られるようになっていました。ふつうの体幹トレーニングのグループとは、違う変化です。
私はこれを、「ためて、放す」タイミングがうまくなったのだと受け取っています。トップまではお腹で体をしっかり支えて、ねじれをためる。切り返したら、ブレーキをぱっと外して、胸を回す。
ねじる力を強くしたのではなく、止めて、放す切り替えが速くなった。ひねらない筋トレで胸が速く回るようになった理由を、私はそう読んでいます(研究チームは「関連していた」という言い方にとどめています)。
正直に書いておきたい、この研究の弱いところ
- 読めたのは要旨だけで、人数・年齢・研究で行った運動の種類は分かりません。後で紹介する運動も、研究と同じメニューではありません
- 飛距離と腰痛は調べていません
- 8週間・中国の1つのグループの研究で、ほかの研究での確認はまだです
60代でも、筋トレでヘッドスピードは上がる
「でも、若い人の話でしょう?」
そう思われた方に、別の研究をご紹介します。アメリカで、55〜79歳(平均65歳)の男性ゴルファー31人を、くじ引きで2つに分けた研究です(2004年)。
片方のグループが、8週間の筋トレと柔軟体操を続けたところ、ヘッドスピードが秒速38.0m → 38.9mに上がりました。トレーニングをしなかったグループとは、はっきりした差がありました。
60代でも、8週間の運動で、ヘッドスピードは上げられる。今回の「ひねらない筋トレ」とは別の研究ですが、年齢を理由にあきらめなくていい、という根拠のひとつです。
秒速1mほどって、飛距離にするとどれくらいですか?
クラブや当たり方で変わるので、この研究からは言えません。ただ、同じ年代の方が、8週間でヘッドスピードを数%上げられた。私はそこに意味があると思っています。数字より、「まだ伸びる」と知っていただけたらうれしいです。
自宅でできる「ひねらずに耐える」運動3つ
ここからは、理学療法士として、中高年の方にも安全に始めていただける運動をご紹介します。研究と同じメニューではなく、同じ考え方の運動です。
共通のルール
・息を止めない。止める運動は血圧が上がりやすいので、声に出して「いち、に、さん」と数えます ・痛みが出たらすぐ中止 ・週2〜3回から。回数は目安です。きつければ減らしてください
① パロフプレス(チューブを押し出して、回されない)
- チューブを、胸の高さの柱やドアにしっかり固定します
- 固定した場所に対して横向きに、両ひざ立ちになります(ひざの下にはマットを)
- 両手でチューブを胸の前に持ち、まっすぐ前に押し出して、チューブにテンションをかけて3秒止めます
- チューブに体を回されないように耐えながら、ゆっくりチューブをゆるめます
- 左右それぞれ5〜10回。反対向きも同じように

慣れてきたら、立って行います。まずは足を腰幅に開いて、まっすぐ立った形から始めます。さらに慣れたら、足を肩幅に開き、ひざを軽く曲げて少し前かがみになると、アドレスに近い形で練習できます。別の研究では、両ひざ立ちがいちばんやさしく、立つと難しくなることが確かめられています(2025年)。
ポイントは、腰を反らさないことです。肋骨を少しおへそに近づけるつもりで構えると、お腹で支えやすくなります。
⚠ チューブは使う前に傷がないか確かめ、固定が外れて顔に当たらないようにしてください。ドアに挟む場合は、自分のほうに開かないドアを使います。
② デッドバグ(あおむけで、反らない)
- あおむけに寝て、両腕を天井に向けて伸ばします。脚は、太ももが床と垂直、すねが床と平行になるように持ち上げます(股関節とひざが、どちらも90度)
- 腰を床に軽く押しつけたまま、右腕を頭の上へ、左脚を前へ、ゆっくり伸ばします
- 戻して、反対の組み合わせも
- 左右交互に5回ずつ

手足を動かしても、腰が床から浮かないことが大切です。浮いてしまうなら、伸ばす距離を短くしてください。
③ 片手で荷物を持って歩く(横に倒れない)
- 片手だけに、軽い荷物を持ちます(水の入った2リットルのペットボトル1本、買い物袋など)
- 体を荷物の側に傾けず、まっすぐ立ったまま、10〜20歩ほど歩きます
- 持ちかえて、反対の手でも

ふだんの買い物帰りに、わざと片手で持って、まっすぐ歩く。これだけでも、体を横に倒されないように耐える練習になります。
前の記事のプランクやバードドッグとは、何が違うんですか?
あちらは、同じ姿勢を長く保つ「持久力」 が目的でした。今回は、外から回されそうになる力に、すばやく耐えることが目的です。どちらも大切なので、両方を組み合わせていただくのがおすすめです。持久力の運動は、こちらの記事 にまとめています。
🧰 用意しておくと便利なもの
パロフプレスには、柱やドアに固定できるチューブが必要です。ドアに挟んで使う固定具(ドアアンカー)が付いたものなら、家の中ですぐ始められます。
トレーニングチューブ(ドアアンカー付き)
ドアに挟む固定具が付いたタイプなら、パロフプレスが家ですぐにできます。持ち手つきで、強さの違うチューブがセットになったものを選ぶと、慣れに合わせて強さを上げられます。最初はいちばん弱いものから。体が回されてしまうなら、強すぎます。
ひざ立ちの運動や、あおむけの運動には、厚めのマットがあると続けやすくなります。
GronG(グロング) ヨガマット 厚さ10mm
厚さ10mm。両ひざ立ちのパロフプレスでも、ひざが痛くなりにくい厚みです。あおむけのデッドバグも、背中が床に当たらず楽にできます。使わないときは丸めて部屋の隅に立てておけます。
こんなときは専門家に相談を
次のような方は、始める前に主治医や担当の理学療法士にご相談ください。
- 腰やお尻に痛みやしびれがある
- 骨粗しょう症と言われている、または背骨の手術を受けたことがある
- 血圧が高く、治療中である
- 運動をすると、そのたびに痛みが強くなる
おわりに
「飛ばしたいなら、ひねる練習」
そう思っていた私にとって、この研究は発想をひっくり返すものでした。回さない練習で、回る速さが上がった。そのカギは、ねじる力ではなく、止めて、放す切り替えにありました。
もちろん、要旨しか読めていない小さな研究で、分からないことはまだたくさんあります。ただ、パロフプレスは、チューブ1本と数分があればできる運動です。60代でもヘッドスピードは上げられる、という研究もあります。
「最近、体が回らなくなった」と感じている方こそ、一度「回さない」練習を試してみてください。
参考にした情報
- Wu S, Zhang G, Shi Y ほか「Anti-movement core training modulates abdominal antagonist co-activation and enhances trunk rotational kinematics in amateur golfers」Sports Biomechanics 2026年8月オンライン公開(DOI: 10.1080/14763141.2026.2712637)※本文は有料のため、公開されている要旨をもとにしています
- Weston M, Coleman NJ, Spears IR「The effect of isolated core training on selected measures of golf swing performance」Medicine & Science in Sports & Exercise 2013年;45(12):2292-2297
- Thompson CJ, Osness WH「Effects of an 8-week multimodal exercise program on strength, flexibility, and golf performance in 55- to 79-year-old men」Journal of Aging and Physical Activity 2004年;12(2):144-156
- Myers J ほか Journal of Sports Sciences 2008年;26(2):181-188(ゴルファー100人の体の回転とボールの速さ)
- Kwon YH ほか Sports Biomechanics 2013年;12(3):231-246(Xファクターとヘッドスピード)
- Juan-Recio C ほか Medicina (Kaunas) 2025年;61(2):312(パロフプレスの姿勢による難しさの違い)
※この記事は、公表されている研究をもとに、ゴルファー向けにやさしく言い換えたものです。痛みや不調があるときは、自己判断せず医療機関にご相談ください。