壁に手を添えて片脚立ちのバランス練習をするゴルファーのイラスト

毎回同じ場所で当てる体づくり 〜ミート率を上げる科学(第3回・体づくり編)〜

「いい当たりも出るけれど、次の球はまた根元。これがそろわない」 打点の練習をしていると、必ずこの壁にぶつかります。当てられないのではなく、毎回同じようにできない。この「再現性」が、ミート率の最後の関門です。 第1回・理論編 では当たりの効率が飛距離を左右すること、第2回・実践編 では自分の打点を見える化して直すドリルをお話ししました。シリーズ最終回は 体づくり編。 そして、ここが私がいちばんお話ししたかったところです。打点の再現性を決めているのは、筋力ではありません。「バランスを支える3つの感覚」 です。リハビリの現場で毎日向き合っている話が、そのままゴルフの打点につながります。 この記事のポイント ✅ 上級者ほど スイング中の重心のブレが小さい という報告があります。打点の安定は体の安定から ✅ バランスは 目・耳の奥(前庭)・足の裏 の3つの感覚が支えています。どれも練習で育ちます ✅ 3つのトレーニングは合計 10分ほど。必ず壁や手すりのそば で、手を添えられる状態で行ってください なぜ「体づくり」が打点に関係するの? あなた 打点って、腕や手の使い方の問題ではないんですか? Torapon 手先だけで直そうとすると、いちばん苦労するところなんです。土台が1cm動けば、その先のクラブヘッドはもっと動く。だから体の安定を先につくったほうが、じつは近道なんですよ。 スイングの計測研究では、上級者ほど「腕がもっとも速くなる瞬間」の体の重心のズレが小さい という報告があります。また、ゴルフの腕前によって、姿勢を保つ能力(バランス)そのものに差がある ことを調べた研究もあります。 つまり上手な人は、速く振っているのに土台が静か。土台が静かだから、クラブが毎回ほぼ同じ場所を通り、打点がそろう——という順番です。 第2回でお話しした「頭の位置が変わると、クラブの最下点も一緒にずれる」というのは、まさにこれです。打点がばらつくのは腕のせいではなく、土台がわずかに動いているサイン かもしれません。 バランスを支えている「3つの感覚」 私たちが立っていられるのは、体が 3つの感覚 から情報を集めて、絶えず微調整しているからです。 ① 目(視覚)——景色との位置関係から、自分の傾きを知ります ② 耳の奥(前庭)——頭の傾きや動きを感じるセンサーが、耳の奥にあります ③ 足の裏(体の感覚)——足の裏にかかる圧の変化から、重心の位置を知ります リハビリの現場では、この3つのどれが弱っているかを見きわめて、弱いところを鍛えます。3つのうち1つが苦手でも、他の2つが補ってくれる ——だから練習で必ず伸びる、というのが専門家として一番お伝えしたいところです。 あなた ゴルフだと、どれがいちばん大事なんでしょう? Torapon ゴルフはちょっと特殊なんです。目でボールを見続けたまま、体を大きく回す。つまり 目からの情報が使いにくい状態で、バランスを取らないといけない。だからこそ、残りの2つ——前庭と足の裏 を育てておくと効くんですよ。 ここからのトレーニングは、この3つに1つずつ対応しています。 トレ1:足裏の感覚を起こす(③足の裏) 靴の中でずっと過ごしていると、足の裏の感覚は少しずつ鈍くなります。まずはここを起こしましょう。座ったままできる、いちばん優しいトレーニング です。 タオルギャザー 椅子に座り、床にタオルを広げて、その上に 裸足 で片足をのせます 足の指だけを使って、タオルを手前に少しずつたぐり寄せます かかとは床につけたまま。10回ほどたぐったら、反対の足も 足指じゃんけん 座ったまま、足の指で「グー」(全部曲げる)→「パー」(全部広げる) ゆっくり10往復。うまく開かなくても大丈夫 です。開こうとすること自体が練習になります 裸足で立つ 平らな床に裸足で立ち、目を開けたまま 30秒 「親指の付け根・小指の付け根・かかと」の3点に、均等に体重が乗っている感覚を探します あなた これがゴルフの打点に効くんですか……? ...

July 30, 2026 · 2 分
背中を大きくひねってバックスイングするゴルファーのイラスト

回すのは腰ではなかった 〜ゴルフに必要な可動域と筋力(第1回・体幹編)〜

「もっと腰を回して」 練習場でも、レッスン動画でも、たぶん一度は聞いたことのある言葉だと思います。ところが体のつくりを調べていくと、この言葉は最初からかなり無理を言っている ことが分かります。 腰は、そもそもほとんど回らない関節だからです。 今回から3回にわたって、ゴルフに必要な「関節の動く範囲(可動域)」と「筋力」 を、体の場所ごとに見ていきます。第1回は体幹——首・背中・腰の3つです。 この記事のポイント ✅ 体を45度ひねっても、腰の骨の関節ひとつあたりは1〜2度しか回っていません。回っているのは背中(胸椎)と股関節です ✅ 意外なことに、体の柔らかさとヘッドスピードには関係が見つかっていません(20の研究をまとめた解析)。可動域は飛距離のためではなく、腰を守るため に必要なものです ✅ 年齢とともに落ちるのは「ひねり」ではなく 「反る動き」。だから中高年の方には、胸を反らせる運動から始めるのが理にかなっています 腰が痛い人は、こんなに多い まず現実から。男性ゴルファー1,170名(平均55歳)に「この1週間で不調のある場所」を聞いた調査では、腰が37.3% と断トツの1位でした。2位の左ひざ13.3%の、およそ3倍です。 さらに、アマチュアゴルファー910名を5か月間追いかけた調査では、腰まわりのケガは 1年に1人あたり1.26回 の割合で起きていました。そして、そのせいでゴルフを休むことになった日数も、体のほかのどの場所より長く なっていました。腰は、いちばん痛めやすくて、いちばん長くコースから遠ざかる場所ということです。 あなた やっぱり腰なんですね……。私も、ラウンドの翌日はいつも腰が重いです。 Torapon ゴルファーの体でいちばん弱点になりやすいのが腰です。ただ、腰そのものを鍛えても、あまり解決しない んですよ。理由は、この次にお話しします。 腰は「回らない」のが正解 ここが今日のいちばんお伝えしたいところです。 MRIを使って、体を45度ひねったときに背骨のどこがどれだけ回っているかを立体的に測った研究があります。結果は——腰の骨(腰椎)の関節ひとつあたり、たったの1.2〜1.7度 でした。 古典的なレントゲン研究でも、腰椎の関節ひとつのひねりは約2度。腰椎全体を足し合わせても、片側でせいぜい 7〜13度 しかありません。 一方で、スイングでは体を大きくひねります。その差はどこから来ているのか。答えは 背中(胸椎)と股関節 です。 あなた では「腰を回して」と言われて、腰を回そうとしていたのは……。 Torapon できないことをやろうとしていた、ということになります。腰は回すところではなく、支えるところ。回す仕事は背中と股関節の担当です。ここが入れ替わってしまうと、腰に無理がかかります。 背中が硬いと、腰が肩代わりする これは実際に測られています。 プロゴルファー30名を「股関節が20度未満しか内側に回らない人」と「30度以上回る人」に分けて比べたところ、回らない人のほうが、スイング中に腰を曲げる量・ひねる量・横に倒す量が有意に大きく なっていました(米国スポーツ医学誌, 2015年)。回るはずの場所が回らないと、腰が代わりに動いてしまうわけです。 背中側でも同じことが観察されています。腰痛のあるプロと、ないプロのスイングを比べた研究では、腰痛のあるプロは、ふだん使える体のひねりの量が少なく、その結果スイングでは「限界を超えたひねり」を強いられていた という報告があります(英国スポーツ科学誌, 2002年)。ただしこちらは各グループ6名だけの小さな研究なので、参考程度に受け取ってください。 つまり—— 背中と股関節が回る → 腰は支えるだけで済む 背中と股関節が硬い → 足りない分を腰が肩代わりする → 痛める ですから、ゴルフの腰痛でいちばん大事なのは、痛む腰そのものではなく、その上下——背中と股関節をやわらかくすること です。腰をいくらもんでも、回るべき場所が硬いままなら、次のラウンドでまた同じことが起こります。痛いところと、原因のあるところが違う。 これはリハビリの現場でも、毎日のように出会う話です。 首については、正直まだ分かっていません ここは誠実にお伝えします。 ゴルフでは、ボールを見続けながら体を回すので、首はかなり特殊な使われ方をします。首の不調を訴えるゴルファーは8.7%(前出の1,170名調査)。決して少なくありません。 ただ、スイング中に首が何度回っているかをきちんと計測した研究は、調べた範囲では見つかりませんでした。ネットでよく見かける「ゴルファーの首は70度以上回るべき」といった数字も、指導団体が現場で使っている目安であって、研究で検証されたものではないようです。 あなた そういうのって、はっきり書いてもらえると逆に安心します。 Torapon 分かっていないことを「分かっている」ように書くのは、いちばんやってはいけないことだと思っています。首が回りにくい方は、無理に基準を目指すより「痛みなく振り向けるか」を目安に してください。振り向くと痛い・しびれる、という方は運動より先に受診をおすすめします。 ...

August 8, 2026 · 2 分
下半身の踏み込みを強調したダウンスイングのゴルファーのイラスト

股関節は、もう限界まで使われている 〜ゴルフに必要な可動域と筋力(第2回・下肢編)〜

第1回・体幹編 では、「腰はほとんど回らない。回っているのは背中と股関節」というお話をしました。 今回はその 股関節 と、その下のひざ・足首を見ていきます。そして、いきなり衝撃的なデータから始めます。 スイング中、左の股関節は「持っている可動域を100%以上」使い切っています。 この記事のポイント ✅ ダウンスイングで、リード側(右打ちの左)の股関節は 使える可動域の84〜131% を使っています。余力がゼロの状態です ✅ ひざへの負担を左右していたのは、体の柔らかさではなく 足の幅と、切り返しで肩が流れるかどうか でした。つまり 構え方を変えるだけで、今日から負担を減らせます ✅ ヘッドスピードといちばん関係が強いのは ジャンプの力の出し方。重い重量より「素早く床を押す」ほうがゴルフ向きです 中高年ゴルファーの、ひざと股関節の実情 まず現状から。男性ゴルファー1,170名(平均55歳)の調査で、この1週間に不調のあった場所は—— 腰 37.3% 左ひざ 13.3%/右ひざ 11.0% 右股関節 9.7%/左股関節 8.5% 腰に次いで多いのが、ひざと股関節です。しかも 左ひざが右ひざより多い 。ここに、ゴルフという競技の特徴がはっきり出ています。 股関節は、左右でまったく違う仕事をしている 女子大学ゴルファー15名のスイングを、可動域の実測値と照らし合わせて分析した研究があります(米国の理学療法専門誌, 2010年)。「その人が持っている可動域のうち、スイング中に何%を使っているか」を計算したものです。 結果はこうでした(右打ちの場合)。 バックスイング ダウンスイング 右(トレイル側)の股関節 内側にひねる力の20〜25%だけ使用 外側にひねる力の34〜37%だけ使用 左(リード側)の股関節 外側にひねる力の50〜75%を使用 内側にひねる力の84〜131%を使用 右の股関節はまだ余裕たっぷり。ところが 左の股関節は、持っているものを使い切って、さらに超えている のです。 あなた 100%を超えるって、どういうことですか? Torapon 落ち着いて寝た状態で測った可動域より、スイングという勢いのある動きのなかでは、もっと深く回っている ということです。つまり、左の股関節には余力がない。ここが硬い人は、足りない分をどこかで補うしかありません。その「どこか」が、たいてい腰なんです。 腰が痛い人は、左の股関節が約10度回らない これも実際に測られています。 アマチュアゴルファー64名を、腰痛の経験がある28名 と ない36名 に分け、年齢・身長・ゴルフ歴・ラウンド数までそろえて比較した研究です(英国の理学療法スポーツ誌, 2009年)。 左(リード側)の股関節を内側にひねる可動域 腰痛のある人:21.1度 腰痛のない人:31.1度 その差、およそ10度。 右側の股関節や、外へひねる動きには差がありませんでした。 ここで大事なことを付け加えます。この研究の著者自身が「因果関係は示せていない」とはっきり書いています。 さらに、ケガのないエリートゴルファー41名を6か月追いかけた別の研究では、股関節の左右差から腰痛の発生を予測することはできませんでした(南アフリカの理学療法誌, 2023年)。 あなた つまり、股関節が硬いから腰が痛くなる、とは言い切れないんですね。 ...

August 9, 2026 · 2 分
フォロースルーで左肩と左手首に負担がかかる様子を描いたゴルファーのイラスト

傷むのは、いつも「左」だった 〜ゴルフに必要な可動域と筋力(第3回・上肢編)〜

ヨーロピアンツアーの選手128名に、手首の障害について聞いた調査があります(英国スポーツ医学誌, 2013年)。30%が手首を痛めていました。 そして、その内訳がこうでした。 小指側の障害の87%、親指側の障害の100%が、リード側(右打ちなら左)の手首。 シリーズ最終回は上肢編。肩・ひじ・手首を見ていきます。テーマは 「なぜ左ばかり傷むのか」 、そして 「体を変えずに助かる方法はあるのか」 です。 この記事のポイント ✅ ゴルフのケガは リード側(右打ちなら左)に集中 します。肩の痛みの66%、手首の障害の大半が左側です ✅ ネットでよく見る「ゴルファーの肩は内側に回りにくくなる」という説は、実測では確認されませんでした ✅ グリップやシャフトを替えるだけで、前腕の筋肉の働きが下がる という研究があります。体を変えなくても、負担は減らせます リード側に、ケガが集まる 第1回 で腰、第2回 で股関節とひざを見てきました。そこでも「左が多い」という話が出てきましたが、上半身ではそれがもっとはっきりします。 理由はシンプルで、右打ちのスイングでは、左腕がクラブを引っぱり、インパクトの衝撃を最初に受け止める側 だからです。右腕は押す側、左腕は支える側。役割がまったく違います。 肩:左肩はスイング中、126度もひねられている 男性アマチュアゴルファーの肩の動きを立体的に測った研究があります(米国整形外科スポーツ理学療法誌, 2003年)。 バックスイングのトップ で、左肩が体の前を横切る角度(水平内転)は、最大で126度 に達していました。腕を胸の前で組む動きの、はるかに深いところまで持っていかれているということです。 トップで左腕が胸を横切る、あの形です。左肩が、可動域のぎりぎりまで引き伸ばされる瞬間 がここにあります。 同じ研究に、中高年の方にとって大事なデータがあります。18〜24歳のグループと、50〜86歳のグループの比較 です。 高齢グループは、肩を上げる動きを 約15%少なく しか使っていない 肩を外へひねる動きを 約30%少なく しか使っていない トップでの右肩の外ひねりは、シニアのほうが38度も少ない あなた 38度って、かなり大きい差ですね。トップが浅くなるのは、そのせいですか。 Torapon かなり関係していると思います。ただ これは横断研究——若い人と年配の人を「比べた」だけ で、同じ人を追いかけたわけではありません。「年をとると必ずこうなる」とまでは言えません。それに第1回でお話ししたとおり、トップが浅いこと自体は、飛距離とは直結していません 。がっかりしなくて大丈夫です。 ネットでよく見る「肩の内旋制限」は、見つかりませんでした 野球のピッチャーには、投げる側の肩が内側に回りにくくなる現象(GIRD)が知られています。これをゴルフに当てはめた記事をよく見かけますが—— エリート男性ゴルファー24名の肩を実際に測った研究では、左肩と右肩で、外ひねり・内ひねり・合計のどれにも差がありませんでした(米国の理学療法専門誌, 2008年)。 左肩 右肩 外へひねる 90.3度 91.0度 内へひねる 51.8度 50.1度 合計 142.1度 141.2度 きれいなくらい、差がありません。著者は「24名の予備的な研究であり、年齢などの要因が影響を隠している可能性もある」と慎重に書いていますが、少なくとも「ゴルファーの肩は野球の投手と同じように変形する」という話には、根拠が乏しい ということです。 練習しすぎると、左肩の腱板が傷む 一方で、中高年アマチュアにとって見過ごせないデータもあります。 ...

August 10, 2026 · 2 分
力強くクラブを振り抜くシニアゴルファーのイラスト

落ちたのは「力」ではなく「速さ」だった 〜飛距離を生む「速筋」の科学〜

前回の「可動域と筋力 」3部作の最後に、こう書きました。 飛距離を生んでいたのは、柔らかさではなく「素早く力を出す能力」のほうでした。 書きながら、これは宿題を残したな、と思っていました。じゃあその「素早く力を出す能力」とは、体の中の何なのか。どうすれば取り戻せるのか。今回はそこを、まっすぐ書きます。 先に結論をお伝えします。年齢とともに飛ばなくなるのは、力が落ちたからではありません。速さが落ちたからです。 そして落ちた速さは、重いものを持ち上げる練習では戻りません。 この記事のポイント ✅ 筋肉には「速い係」と「遅い係」があり、年齢で減るのは、ほぼ速い係だけ です。20歳から80歳までに、遅い係が1〜25%の減少なのに対し、速い係は20〜50% 減ります ✅ ダウンスイングは およそ0.2〜0.3秒。ところが人が最大の力を出しきるには0.3秒以上かかります。つまりゴルフのスイングは、「いちばん強い力」が間に合わない動き です ✅ 速い係のスイッチが入るかどうかは、重さではなく「速く動かそうとする気持ち」 で決まります。だから軽い負荷でも、速筋は鍛えられます 「力はあるのに、飛ばない」の正体 こんな経験はないでしょうか。 昔と比べて、特に力が弱くなった感じはしない。買い物袋も持てるし、階段も上がれる。なのに、ドライバーだけが明らかに飛ばなくなった。 これは気のせいでも、技術の衰えでもありません。体の中で、実際にそういうことが起きています。 筋肉は一種類ではなく、大きく2つの係に分かれています。 遅筋(ちきん/タイプI線維)=「持久の係」 ゆっくり、長く働き続けるのが得意。歩く、立っている、姿勢を保つ、といった仕事を担当します。 速筋(そっきん/タイプII線維)=「瞬発の係」 一瞬で大きな力を出すのが得意。跳ぶ、投げる、ダッシュする、そしてクラブを振る。こちらの担当です。 買い物袋を持つのも階段を上がるのも、実は「持久の係」の仕事です。だから日常生活では衰えに気づきにくい。ところがスイングは、ほぼ全部が「瞬発の係」の仕事 です。 あなた 言われてみれば……。日常で困っていることは何もないんです。ゴルフだけなんですよ、落ちたのを感じるのは。 Torapon それが自然なんです。ゴルフは、日常生活でいちばん使わない側の筋肉を全力で使うスポーツ ですから。逆に言うと、ゴルフは体の衰えにいちばん早く気づける場所でもあります。 年齢で減るのは、速い係「だけ」 ここが今日いちばん知っていただきたいところです。 加齢による筋肉の衰えは、全体が均等に細るのではありません。 太ももの筋肉(外側広筋)を20歳から80歳まで比べた古典的な研究では、筋肉全体の断面積が約40% 小さくなっていました。ところがその中身を線維の種類ごとに見ると、減り方がまったく違いました。 複数の研究をまとめると—— 遅筋(持久の係)の細り方 … 1〜25% 速筋(瞬発の係)の細り方 … 20〜50% つまり、歳を重ねて失われるのは、ほぼ「速さ」の部分 ということです。 もうひとつ、印象的な数字があります。研究では、筋力の落ち方は、筋肉の量の落ち方より2〜5倍も速い と報告されています。鏡を見て「そんなに細くなっていないけどな」と思っても、出せる力はそれよりずっと速く落ちている、ということです。 そして、力よりもさらに先に落ちるのがパワー です。パワーとは、力の大きさに、動きの速さを掛け合わせたもの をいいます。 同じ重さを持ち上げられる2人でも、サッと軽々と持ち上げる人と、うんうん言いながらゆっくり上げる人がいます。この差がパワー です。 そして研究では、このパワーが低い人ほど、その後に歩く力が落ちたり、入院したりしやすい ことが分かっています。筋肉の太さや握力よりも、パワーのほうが、その人のこの先をよく言い当てていました。 あなた 細くなっていないのに力は落ちていて、その力よりさらに速さが先に落ちている……。順番があるんですね。 Torapon 順番があります。「速さ」→「力」→「太さ」の順に失われていく と考えてください。だから飛距離は、体つきが変わる前に落ち始めるんです。裏を返せば、いちばん先に手を打つべきは「速さ」 ということでもあります。 ゴルフのスイングは「最大の力」が間に合わない ここからが、ゴルフならではの話です。 トップから切り返して、ボールに当たるまで。このダウンスイングにかかる時間は、研究でおよそ0.2〜0.3秒 と測られています。まばたきよりも短い時間です。 一方で、人間の体が最大の力を出しきるまでには、0.3秒以上かかる と言われています。 ...

August 16, 2026 · 2 分
グリーン上でパッティングのラインを読む女子ゴルファーのイラスト

飛距離は20位。それでもメジャーで勝てた 〜桑木志帆選手の体づくり(後編・数字とパット)〜

前編では、桑木志帆選手が 1年で15キロやせた こと、その狙いが飛距離ではなく 膝と腰を守ること だったことをご紹介しました。 👉 前編をまだの方はこちらから 15キロやせて、メジャーで勝った 今回は後編です。彼女の 2025年シーズンの成績表 を、そのまま見てみましょう。 ひとつだけ、先に言わせてください。この表を見たとき、私は思わず声が出ました。メジャーチャンピオンの飛距離が、20位だったから です。 この記事のポイント ✅ ドライビングディスタンスは 20位。でもパーオン率は 4位 でした ✅ 飛ばす人が勝つのではなく、狙った場所に運べる人 が勝っていました ✅ パットの練習は、道具がなくてもできます。左手だけの片手打ち、3メートル から 目次 2025年シーズンの成績表 飛距離20位が意味すること いちばん凄いのはパーオン率4位 パットは「左手」で決まる フェースの向きを、目で見る 頭が動いていないか、確かめる 私たちが真似できること おわりに 2025年シーズンの成績表 まずは数字を並べます。日本女子ツアーでの、2025年シーズンの成績です。 項目 数値 順位 パーオン率 73.4% 4位 平均バーディ数 3.71 5位 パーブレーク率 20.7% 5位 平均ストローク 70.7 6位 パーセーブ率 87.4% 8位 平均パット数 1.79 11位 リカバリー率 65.5% 11位 フェアウェイキープ率 72.9% 14位 ドライビングディスタンス 246ヤード 20位 サンドセーブ率 40.6% 54位 賞金ランキング10位、メルセデスランキング9位、トップ10入り15回。 ...

August 19, 2026 · 2 分
朝のコースでストレッチをする女性ゴルファーのイラスト

「あと10ヤード」をあきらめたら、メジャーに勝った 〜山下美夢有選手に学ぶ(前編・足さない選択)〜

飛ばしたい。 ゴルフをしている人なら、誰でも一度は思うことだと思います。あと10ヤード出れば、あの池を越えられるのに。あと10ヤード出れば、2打目が7番アイアンで届くのに。 その「あと10ヤード」を本気で取りにいって、やめた選手がいます。 身長150センチ。2026年8月、アメリカのツアーで2位に9打差をつけて優勝した山下美夢有選手です。 この記事のポイント ✅ 米ツアーに移った当初、「あと10ヤードほしい」と考えてトレーニングの強度を上げました。けれど、そこから成績は上がりませんでした ✅ 元のやり方に戻したのが、全英女子オープンの約3週間前。その大会でメジャー初優勝を果たします ✅ 朝の準備の順番が見事です。ほぐす → 確かめる → 軽く入れる。この3段階は、そのまま真似できます 「あと10ヤードほしい」と思った 山下選手は日本ツアーで賞金女王になり、2025年からアメリカを主戦場にしました。 そこで感じたのが、飛距離の差だったようです。「10ヤードくらい足したい」。そう考えて、プレースタイルの見直しを検討し、トレーニングの強度も上げました。 体を大きくして、飛距離を足す。理屈としては、まっとうな判断だと思います。 あなた 私も同じことを考えると思います。それで、どうなったんですか? Torapon 本人の言葉が、そのまま答えになっています。「そこから成績が上がることはなかった」。かなり率直な言い方ですよね。 3週間前に、元に戻した 転機は2025年の夏でした。 全英女子オープンの約3週間前、7月のエビアン選手権の前に、山下選手は日本ツアーで結果を出していた元のやり方に戻します。 お父さん(コーチでもあります)の助言は、こうだったと報じられています。打ち方そのものより、スコアとショットづくりを優先しなさい。 そして迎えた2025年8月のAIG全英女子オープンで、メジャー初優勝。 さらに2026年8月には、カナダで開かれたCPKC女子オープンを、初日から一度も首位を譲らずに制しました。4日間で257ストローク。これはツアーの72ホール最少スコア記録に並ぶ数字です。 数字を見ると、戻して正解だったと分かる 2026年シーズンの公式記録です。 項目 順位 平均飛距離(252.34ヤード) 147位 フェアウェイキープ率(79.31%) 3位 平均ストローク(69.91) 3位 ※フェアウェイキープ率は、ティーショットがフェアウェイに止まった割合のことです。 飛距離は147位。ほとんど下のほうです。それで平均ストロークは3位にいます。 あなた 飛距離147位で、スコアは3位……。どういうことですか? Torapon 飛ばすところ以外が、全部ずば抜けているということです。この中身は面白いので、後編でじっくり見ていきます。ここでは「10ヤード足さなくても勝てた」という事実だけ受け取ってください。 理学療法士として、この話にはうなずくところがあります。体を変えるのは、時間もかかるし、うまくいくとはかぎりません。 それより、いま持っている体で何ができるかを詰めたほうが、近道になることがあるのです。 朝のルーティンが、とてもきれいです 9打差で勝ったあの大会で、LPGA公式が山下選手の朝の準備を紹介しました。順番はこうです。 股関節まわりのストレッチ(下半身) 肩まわりのストレッチ(上半身) 上体をひねって、体幹の状態を確認する チューブ・バンドを使う メディシンボールを軽く投げる 肩まわりのマッサージ 私がいちばん見事だと思ったのは、3番目です。 1・2でほぐして、3で「今日の体はどうか」を確かめて、4・5で軽く力を入れていく。ほぐす → 確かめる → 軽く入れる。この順番になっています。 多くのアマチュアの方は、ここが逆になりがちです。いきなり素振りをして、いきなり打ちはじめる。確かめる工程が抜けていることが多いのですね。 あなた 「確かめる」って、何を確かめればいいんですか? Torapon 正直に言いますと、山下選手が何を見ているのかまでは報道されていません。ですので、ここからは私の考えです。 見るのは「いつもどおりに動かせるか」でいいと思います。立って上体を左右にひねり、回りやすいほうと、回りにくいほうがないか。それだけです。左右で違う日は、無理に大きく振らない。それが分かるだけで、ケガの入り口をひとつ減らせます。 私たちが真似できること そのまま真似するのは大変ですが、順番だけなら今日からできます。 ...

August 28, 2026 · 1 分
グリーン上でパットのラインを読む女性ゴルファーのイラスト

飛距離147位の選手が、賞金3位にいる 〜山下美夢有選手に学ぶ(後編・数字と道具)〜

前編で、こう書きました。 「あと10ヤード」を取りにいって、やめた。そして元のやり方に戻したら、メジャーに勝った。 前編はこちらです。 👉 「あと10ヤード」をあきらめたら、メジャーに勝った では、その「元のやり方」の中身は何なのでしょうか。飛距離147位の選手が、なぜ賞金3位にいるのか。 数字がはっきり答えてくれます。 この記事のポイント ✅ 打数をどこで稼いだかを見ると、ドライバーで得た打数は「0.00」。ティーショットでは1打も得していません ✅ そのかわりパットはツアー1位。しかも、その年のツアー最高値そのものです ✅ 道具にも一貫性があります。シャフトは硬さを抑えた設定。強く振るためではなく、同じところに当てるための組み立てに見えます 打数を、どこで稼いだのか ゴルフには「打数をどこで得したか」を場面ごとに分ける指標があります。平均的な選手と比べて、その場面で何打ぶん得をしたかを表す数字です。 2026年シーズンの山下選手は、こうなっています。 場面 得した打数 順位 ティーショット 0.00 92位 アプローチショット 0.10 71位 グリーン周り 0.24 46位 パット 1.47 1位 ティーショットが 0.00。ドライバーでは、1打も得していないということです。 あなた ゼロって、ずいぶんはっきりした数字ですね……。 Torapon そうなんです。そしてパットの1.47は、その年のツアーで誰よりも高い値でした。1位というだけでなく、トップの数字そのものなんですね。ドライバーで得た分がゼロでも、これだけで押し切れてしまう。 さらに、2026年シーズンで1位が4つ並んでいます。 パットで得た打数 1位 スクランブリング(グリーンを外してもパー以上で上がる力)1位 ボギー回避 1位 アンダーパーのラウンド数(39回)1位 大きく叩かない。外してもパーで上がる。 それを積み重ねた結果が、平均ストローク3位です。 道具にも、同じ考え方が通っています ゴルフダイジェスト公式に載っている2026年のセッティングを見ると、面白いことに気づきます。 ドライバー:スリクソン ZXi(9度)/SPEEDER NX GOLD 40g台・SR アイアン:スリクソン ZXi5(6番)+ZXi7(7番〜PW)/ダイナミックゴールド 80g台・R300 ウェッジ:クリーブランド RTZ(48度・52度・58度) パター:テーラーメイド スパイダー ツアーX クランクネック ボール:スリクソン Z-STAR XV 注目したいのはシャフトです。ドライバーはSR、アイアンのダイナミックゴールドもR300。ツアーで戦う選手としては、硬さをかなり抑えた設定です。 あなた プロなのに、やわらかめなんですね。意外です。 Torapon ここからは私の見立てですが、「強く振るための道具」ではなく「毎回同じところに当てるための道具」を選んでいるように見えます。フェアウェイキープ率はツアー3位でしたよね。数字とセッティングが、ぴたりと合っているんです。 ...

August 30, 2026 · 1 分
同じティーグラウンドに立つ男性ゴルファーと女性ゴルファーのイラスト

体はやわらかいのに、なぜ飛ばないのか 〜男女29人を測って見えた、本当の差〜

「私、体はやわらかいほうなんです。なのに飛ばないんです」 女性のアマチュアゴルファーから、こんな相談を受けたことがあります。 たしかに、一般に女性のほうが体はやわらかい。前屈もできる。開脚もできる。それなのに、同じくらいの腕前の男性より飛ばない。 やわらかさが足りないのではなく、やわらかさの向きが違った。2026年に出た研究を読んで、私はそう考えるようになりました。 この記事のポイント ✅ 同じ腕前の男女29人を細かく測ったところ、女性が柔らかかったのは13の検査のうち3つだけ。しかもゴルフにいちばん効く「ねじる方向」は、男女で差がありませんでした ✅ 差がついていたのは、地面を「素早く」押す力と、ダウンスイングで骨盤と体を加速させる力でした ✅ プロの世界では、女子のコースは男子の約90%の長さ。でも女子の飛距離は男子の約86%。つまり女性のほうが、相対的に長いコースを戦っています 「回す」ための体づくりについては、3部作にまとめています。今回はその続きにあたる話です。 👉 回すのは腰ではなかった(可動域と筋力・第1回) 目次 同じハンデの男女29人を、まるごと測った 女性が柔らかかったのは、13のうち3つだけ そして「効く方向」の柔らかさは、同じだった 差がついたのは「速さ」だった 正直に書いておきたい、この研究の弱いところ プロの世界では、コースのほうに問題があった 現場で見てきたこと では、何をすればいいのか おわりに 参考にした情報 同じハンデの男女29人を、まるごと測った ニューヨークのスポーツ医学研究所(NISMAT)が行った研究です。 集めたのは、腕前の高い男性13人と女性16人。ここが大事なところで、両者のハンディキャップに差はありませんでした。年齢にも差はありません。 つまり「同じくらい上手な男女」を比べています。 そのうえで、次のものを全部測りました。 柔軟性……13種類の検査(前後の方向4つ、横の方向4つ、ねじる方向5つ) 筋力……肩6項目、股関節5項目 スイングの動き……骨盤と体の角度・速さ・加速 足が地面を押す力……床に埋めた測定板で、左右別々に 結果……レーダー式の計測器で、ヘッドスピード・ボール初速・飛距離 結果、ヘッドスピードもボール初速も飛距離も、男性が上でした。 ハンディキャップは同じなのに、です。 あなた 同じ腕前なのに、飛距離だけ違うんですか? Torapon そこがこの研究の面白いところなんです。飛ばないぶんを、別のところで取り返して同じスコアになっているわけですね。 あとで出てきますが、女性は方向性でお返ししています。プロの数字を見ると、それがはっきり出ています。 女性が柔らかかったのは、13のうち3つだけ さて、柔軟性です。 「女性のほうが柔らかい」。これは半分あたっていて、半分は違いました。 柔軟性の検査 どんな動きか 結果 前後の方向(4種類) 前屈や後屈のように、体を前後に曲げ伸ばしする動き 1つだけ女性が柔らかい 横の方向(4種類) 開脚や体を横に倒すように、左右に広げる動き 2つ女性が柔らかい ねじる方向(5種類) 股関節や肩、体を軸まわりにひねる動き すべて男女差なし ※どの検査をどう行ったかまでは、論文が有料のため確認できませんでした。ここでは「どの方向の動きか」だけをご紹介しています。 13の検査のうち、女性が上回ったのは3つだけでした。 そして、いちばん大事なところ。ねじる方向は、5つすべてで差がありませんでした。 そして「効く方向」の柔らかさは、同じだった なぜ、ねじる方向が大事なのか。 同じ研究グループが、2022年にこんな結果を出しています。 ゴルフの上手さと関係していたのは、ねじる方向の柔らかさだけでした。前後の柔らかさも、横の柔らかさも、上手さとは関係がありませんでした。 さらに、股関節のねじる方向の柔らかさだけで、ボール初速のばらつきの48%、飛距離のばらつきの45%を説明できたと報告しています。 ここを、今回の結果と重ねてみてください。 女性が余分に持っていた柔らかさ=前後と横=ゴルフの上手さとは関係が薄い方向 ゴルフに効く柔らかさ=ねじる方向=男女で差がなかった あなた じゃあ、開脚が得意でも意味がないということですか……。 Torapon ゴルフの飛距離という一点では、そうかもしれません。 ただ、開脚や前屈が無駄という話ではないんです。腰やひざを守るうえでは、どちらも大切です。 ...

September 7, 2026 · 2 分
夕方の練習場で、ドライバーのシャフトを大きくしならせながら振り下ろすゴルファー

しなり戻りは、飛距離を生んでいなかった 〜シャフト選びの科学(第1回・飛距離編)〜

「シャフトがしなって、戻る。あのムチのような動きが、ヘッドを加速させて飛距離を生む」 ゴルフを始めてから、何度この説明を聞いたか分かりません。私も、そう信じていました。柔らかいシャフトはよくしなるから走る、硬いシャフトはしならないから走らない。だからヘッドスピードに合わせてフレックスを選ぶのだ、と。 ところが、この「しなり戻りが飛距離を生む」という話を実際に測った研究を読んでいくと、思っていたのとは違う景色 が見えてきます。 しなり戻りの速さと、ヘッドスピードは、ほとんど関係がありませんでした。 今回から2回にわたって、シャフトの話を研究データから書きます。第1回は飛距離編 です。 この記事のポイント ✅ 重さも振り心地もそろえたうえで、柔らかいシャフトと硬いシャフトを打ち比べた研究では、しなり戻りの速さには明確な違いが出たのに、ヘッドスピードには違いが出ませんでした ✅ ヘッドスピードと強く結びついていたのは、シャフトの性質ではなく 打ち手が手元を回すスピード のほうでした ✅ ただし、33人それぞれが2本で打った球の平均を比べると、17人は、どちらか一方のシャフトのほうがはっきり速くなっていました。合うシャフトは人によって違う、ということです。フィッティングの意味は、ここにあります この記事に出てくる統計の言葉 (説明はここだけにまとめます) ・相関 = 2つの数字が、どれくらい一緒に動くかを −1 から +1 までの数字で表したもの。0に近いほど「おたがいに関係がない」、+1に近いほど「片方が大きいと、もう片方も大きい」という関係が強くなります ・統計的に有意でない = 測った数字にいくらか開きはあっても、その程度の開きは偶然でも起こりうる、という意味です。「差がゼロだと証明された」ではなく、差があるとは言えなかった ということですね ・盲検 (もうけん)= どちらのシャフトを使っているかを、打つ人に知らせずに試すやり方です。打つ人にも計測する人にも知らせない場合は、二重盲検 と呼びます。「今日は硬いほうだ」という思い込みが結果に混ざるのを防ぎます どちらのシャフトか、打つ本人にも分からないようにして打ってもらった 中心になるのは、カナダのマッケンジーとブーシェが2017年に Journal of Sports Sciences に発表した研究です。 参加したのは右打ちの男性ゴルファー33名 で、ハンディキャップの平均は12.1でした。上級者ばかりでもなく、初心者ばかりでもない、いわゆる中級者の集まりです。 この研究のすぐれているところは、シャフトの硬さ以外の条件を、徹底してそろえた ところにあります。 用意したのは、Rフレックスとよばれる柔らかいシャフト と、Xフレックスとよばれる硬いシャフト の2本。この2本は、 重さや慣性モーメント(=回しにくさの度合いのこと)など、振ったときの感じにかかわる性質を、ほぼ同じにしてある つまり、違うのは、しなりやすさだけ という状態です。そのうえで、1人が各シャフトで14球ずつ打ち、途中でシャフトが替わったことは、打つ人に知らせませんでした。終わったあとで、参加者は全員、途中で替わったことに気づかなかった と答えています。 ここまでやるのには理由があります。ふつうにシャフトを打ち比べると、たいてい重さも振り心地も違いますし、何より、「柔らかいほうを持っている」と分かった瞬間に、人は振り方を変えてしまう からです。それを全部止めたうえで、シャフトそのものの効果だけを取り出したわけですね。 あなた そこまでする必要があるんですか。打てば分かりそうなものですが……。 Torapon それが、分からないんです。私たちは「柔らかいと聞かされた」だけで、実際に振り方を変えてしまいます。試打で「このシャフト、走りますね」と感じたとき、走っているのがシャフトなのか自分なのかを、感覚では区別できません。だから、知らせずに打ってもらうんですね。 しなり戻りは、たしかに速かった。でもヘッドスピードは変わらなかった 結果を、順番に見ていきます。 まず、しなり戻りの速さ です。研究ではキック速度 と呼ばれています。シャフトが後ろにたわんでから前に戻ってくる、その戻りの速さのことです。 しなり戻りの速さ R(柔らかいほう) 1.7 m/s X(硬いほう) 1.2 m/s 柔らかいRのほうが、硬いXより0.5 m/s 速く戻っていました。これは統計的にもはっきりした違いです。つまり「柔らかいシャフトのほうがよく走る」こと自体は、事実でした。 ...

September 15, 2026 · 2 分